衛星放送は不要? 新築時に「BSアンテナ」は今でも本当に必要か
家を新築する際、テレビの視聴環境はよく考えるべきポイントのひとつ。地上波の視聴環境そのものは整えたとしても、「衛星放送も必要か」は悩む方も多いのでは?
衛星放送が不要であれば、スカパーやWOWOWなどの視聴は不可(※インターネット接続の上、オンデマンド配信で別途視聴することは可能)となりますが、代わりにNHK BSの受信料も不要となります。『ストリーミングが十分に普及した2025年現在でも、BSアンテナは必要なのか?』という点について、衛星放送とBSアンテナの役割や必要性を改めて考えてみましょう。
新築時にBSアンテナを設置すべきケースと不要なケース

まず「地方在住」で「インターネット接続が不安定」といった場合には、安定した受信が可能な衛星放送は情報収集手段として一定の価値があると言えます。
そして衛星放送の安定的な受信には「アンテナ」は重要です。近年はオンデマンド配信に対応する衛星放送も増加していますが、オンデマンド配信はインターネット接続に依存します。インターネット接続が不安定な地域でも安定的な受信ができる衛星放送の強みをフルに発揮するには、やはりアンテナは重要です。
新築時にBSアンテナを設置すれば、配線や工事の手間が省け、後で追加するよりもコストが抑えられます。
一方、スマートTVやストリーミングデバイスで十分な場合や、地上波だけで満足できる場合、BSアンテナは不要だと言えるでしょう。総じて安定したインターネット接続がすでにあり、ストリーミング環境も整備できているならば「従来の衛星放送の強み」がかなりかすんで見えるはずです。
「BSアンテナ」不要説
BSアンテナは本当に必要なのか、を考える際には
・スマートTVやストリーミングデバイスで十分な視聴者が極めて増加しているのではないか
・00年代頃と比べ、安定したインターネット接続を実現する手段が増加している(例:衛星インターネット)
という点もセットで考える必要があるでしょう。上記のような要因によって、繰り返しではありますが衛星放送の魅力が薄れつつあるのも事実です。
災害時の情報収集手段の多様化
まず衛星放送は地上波よりも、災害時など緊急時における情報収集手段として堅牢という特徴があります。
たとえば2024年1月1日に発生した能登半島地震では、特に被害が大きかった被災地ではインフラの遮断により地上波の放送が見られなくなりました。そのため、NHKではBSの3チャンネルを使い、総合テレビで放送している番組、金沢放送局のローカルニュース、災害情報などを放送していました。
一方で、「災害時など緊急時における情報収集手段」は多様化が進みつつあります。その代表格は、ウクライナ戦争で戦地の情報インフラとして注目された衛星インターネット「スターリンク」です。

スターリンクは、SpaceX社が提供する衛星ブロードバンドインターネットサービスです。従来の衛星インターネットとは異なり、多数の低軌道衛星を使用することで、高速で低遅延なインターネット接続を実現しています。

仕組みとしては、まず、高度約550kmの低軌道を周回する多数の衛星が、地上に設置されたユーザーのアンテナと通信を行います。このアンテナは、自動的に最適な衛星を追跡し、安定した接続を維持します。そして、衛星から送られた信号は、地上局を経由してインターネットのバックボーンネットワークへと接続されます。
ロシアによるウクライナ侵攻ではウクライナの情報インフラとしてスターリンクは重要な役割を果たしており、衛星インターネットは戦地のような過酷な状況下でもインターネット接続を安定的に実現できることを証明しました。
この衛星インターネットは日本国内でも広がりを見せており、スマホと衛星の直接通信も実現しつつあります。たとえばauは2025年4月10日からStarlinkとの通信サービス「au Starlink Direct」を開始。スマホを衛星に接続することができるため、災害時や山間部などでも連絡を取ることができるようになっています。
災害時などの緊急時に「インターネット接続ができなくなる」事象は、衛星インターネットの普及によって減少していくかもしれません。災害時でも安定する情報収集手段として衛星インターネット及びスマホと衛星の直接通信が定着すると、衛星放送は「あってもいいが、なくてもいいもの」まで存在感が薄れる可能性があります。災害時に地上波と衛星放送がどちらも視聴できなかったとしても、衛星インターネットは利用可能と見られるためです。
なお衛星放送も衛星インターネットも利用できないような大災害に備え、手回しラジオなどの用意をしておくことも、強くお勧めします。
NHKの衛星契約が必要になってしまう
BSアンテナを設置すると、NHKの衛星契約が必要となり、地上契約よりも月額料金が高くなります。
地上契約の場合、月額料金は1,100円ですが、衛星放送がセットになった衛星契約の場合は1,950円となります。

BS放送を視聴しない場合や、コストを抑えたい方にとっては、アンテナ設置を見送る理由となるでしょう。
閉局・再編など衛星放送が下火に
近年、衛星放送の一部チャンネルが閉局や再編を迎え、番組数や内容が縮小傾向にあります。たとえば、2025年2月28日には「WOWOW 4K」が終了、6月30日には「BS松竹東急」が終了予定です。
一方、衛星放送も通販番組の割合が多くなっており、必ずしも視聴者が「お金を出してまで見たい」ものでなくなっていることも事実です。この状況は衛星放送番組からのスポンサー離れも影響しています。
衛星放送の強みとは?
それでも衛星放送には、他の視聴方法にはない強みが存在します。まず、BS放送は地上波では視聴できない多彩なジャンルの番組や、4K・8Kといった高精細映像を楽しめる点が魅力です。また、衛星放送は日本全国ほぼ均一に電波が届くため、山間部や離島など地上波の電波が届きにくい難視聴地域でも安定した受信が可能です。
また災害時には地上のインフラが被害を受けても、衛星から直接電波を受信できるため、情報伝達手段としての信頼性も高いと言えます。
衛星インターネットが国内で十分に普及し、多くのスマホが衛星との直接通信を実現するにはまだ当面時間がかかるでしょう。すると、やはり衛星放送には「災害時の安定した情報収集手段」として一定の価値を見出すこともできるでしょう。
このように、BSアンテナの設置は必ずしも「不要」とは言い切れません。視聴したい番組やコスト、住環境、将来的な利用予定などを総合的に考慮し、自分に合った選択をすることが大切です。
※サムネイル画像(Image:「photoAC」より)
記事提供元:スマホライフPLUS
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。