太平洋戦争末期 表向きには精神科病院と称された特殊機密施設 「ハオト」公開決定

2005年に下北沢の本多劇場で初上演した同名創作舞台の映画化作「ハオト」が、2025年夏に劇場公開されることが決まった。
「ハオト」は、太平洋戦争末期の東京郊外にある精神科病院を舞台に、病院内との対比で外界の狂気を問う内容を、ユーモア、サスペンス、ファンタジーの要素も織り交ぜで描いた作品。初夏のある日、警察署に90歳を超えた一人の老人が甥(おい)の刑事宛に訪れ、「人を殺した」と告白する。老人は、太平洋戦争末期の特殊施設の話を始める。そこは、原爆開発を手掛ける博士や戦況を100%予知する男がいる特殊機密施設だった。
患者は、弟・正和(石田隼)が原因で突然軍を辞め、戦争や軍を批判し精神病扱いをされた元エリート海軍兵の水越(原田龍二)、原子爆弾開発の間近に解離性同一障害(多重人格)となった荒俣博士(片岡鶴太郎)、虚言症と診断されたが戦況を語るその虚言が100%当たる「閣下」(三浦浩一)、21世紀の未来の男性と交信していると伝書バトを飛ばし続けている藍(村山彩希)。貝瀬婦長(高島礼子)、梶谷医師(植松洋)、真関看護師(倉野尾成美)が患者を担当し、銃恐怖症のため発砲することができない若い兵士「ボン」(清水一光)が、病棟の監視を担当している。
この施設は、陸軍将校の森本(木之元亮)が指揮していたが、指揮権が海軍の将校・蓬(長谷川朝晴)に移行。蓬は、ハワイ生まれの日系人である米国の諜報員・津田(バーンズ勇気)を二重スパイとして雇い、また、ソ連に仲介してもらって和平交渉を進めようと、日系のソ連大使・ロモフ(マイケル富岡)と森本陸軍将校をこの施設に呼ぶ。一方米国は、津田の存在を怪しみ、同じく日系ハワイ人の田中(金城大和)を送り込む。
監督・脚本・製作を務め、刑事役で出演している丈のコメントも公開された。コメントは以下の通り。
【コメント】
■監督・脚本・製作・出演:丈
戦後60周年の2005年に、この作品は演劇作品として産声をあげました。
2001年に多くの犠牲者を出した同時多発テロで、戦時中の悲惨さを知らない自分すら、人が大量に死にゆく戦時下を想起させられました。
本作は、自分の中では、「戦争」と向き合った初めての作品で、戦争に関連した膨大な書物を読み漁りました。
上演の際に「この作品を映画で観てみたい」という感想が多く、自分の中で映画化は目標となり、戦後70周年には、この演劇作品で全国ツアーを展開し、映画化への種を蒔きました。
戦時中の精神病院が舞台で、塀の外と中、どちらが狂気なのか?
この鋭利な刃物のようなテーマでエンターテイメントを目指した、無謀なような挑戦でしたが、生の観客の前で披露し、客席が沸き、物語に引き込まれて行くような空気に勝算を得ました。
『カッコーの巣の上で』というハリウッドの傑作も元々は演劇作品で、張り合うには烏滸がましいですが、20年間掛けて取り組んだこの映画『ハオト』は、胸を張れる作品だと自負しております。
【作品情報】
ハオト
2025年8月8日(金)~池袋シネマ・ロサほかにて全国順次公開
配給:渋谷プロダクション
@ JOE Company
記事提供元:映画スクエア
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