主演の黒木華など実力派俳優が顔を揃えた、心温まる群像劇「アイミタガイ」
中條ていの同名小説を、草野翔吾監督が黒木華主演で映画化した「アイミタガイ」のBlu-ray&DVDが、4月11日にリースされた。この作品は大事な親友を喪って気持ちが前へ進めなくなったヒロインを中心に、誰かを想う人々の心の連鎖が小さな奇跡を生んでいく心温まる群像劇。黒木のほかにも中村蒼、藤間爽子、草笛光子、風吹ジュンなど実力派の俳優たちが、人間の触れ合いが織りなすドラマを見事なアンサンブルで表現している。
大切な親友を事故で喪った女性が、誰かを想う心と縁で結ばれていく
ウエディングプランナーとして働く梓(黒木華)のもとに、仕事でパプア・ニューギニアを訪れていた写真家・叶海(藤間爽子)が事故で亡くなったという知らせが届く。中学時代からの一番の親友・叶海を喪って、梓は長年付き合ってきた澄人(中村蒼)との結婚にも踏み出せず、寂しさから叶海のケータイにメッセージを送り続ける。ある日、叶海の両親(西田尚美、田口トモロヲ)は、児童養護施設から叶海宛のカードを受け取る。彼女は生前、養護施設の子供たちと交流があり、彼らの写真を撮り続けていた。一方、梓は担当した金婚式でピアノを弾く奏者を探していて、ホームヘルパーをしている叔母の紹介で、こみち(草笛光子)という老齢の女性に会いに行く。彼女と話すうちに梓は中学時代、叶海とこみちのピアノ演奏を聴いていたことを思い出した。大事な時、いつも自分の背中を押してくれたのが叶海だった。梓はいろんな人から、叶海が遺した想いのかけらを受け取っていく。
出演者がさりげない日常の中に、心の揺れを見事に表現!
タイトルの「アイミタガイ」とは、劇中の梓の祖母(風吹ジュン)の言葉を借りれば、“世の中は持ちつ持たれつ、お互い様”ということを表す『相身互い』のこと。ここでは梓と叶海との友情を物語の柱に据え、彼女たちを取り巻く人々の不思議なつながりを紡いでいく。叶海役の藤間爽子は出演シーンこそさほど多くはないが、梓や両親の中に愛おしい存在として刻まれた女性を印象的に演じている。その彼女を想い続ける梓役の黒木華の、澄人と会っているときや、部屋で一人過ごしているときにふと見せる、寂しさに襲われた表情が切ない。仕事や恋人との仲が順調でも埋まらない、親友がこの世にいない喪失感。それをさりげない日常描写の中ににじませる、彼女の演技が魅力的だ。
また梓と叶海の出会いと友情の深まりを描いた、彼女たちの中学時代のエピソードも見どころの一つ。母子家庭で育っていじめにあっていた梓をかばった叶海と、彼女の写真の才能を信じて雑誌のコンクールに応募することを勧めた梓。二人が秘密を共有するように、こみちの家の裏でピアノの音色を聴くシーンも含めて、彼女たちの背景を描いた中学時代の場面が効果的。また中学時代の梓を演じた近藤華、叶海に扮した白鳥玉季の瑞々しい好演も見逃せない。
どこか頼りなげで何をするのもタイミングが悪いが、梓を想うまっすぐな気持ちがわかる恋人・澄人を演じた中村蒼。叶海が残したケータイによって会ったことがない梓とメールで結ばれる叶海の母親の西田尚美と、児童養護施設に心づくしの贈り物をしていた叶海の知られざる一面がわかって、娘の優しさを再確認する父親役の田口トモロヲ。梓や叶海との縁によって、一度はやめたピアノと再び向き合う決心をするこみち役の草笛光子。孫の梓に得意の手料理をふるまう優しい祖母役の風吹ジュンなど、それぞれが人生の年輪を感じさせるキャラクターを味わい深く演じている。
バトンをつないだ3人の作り手が、ひとつの映画として実現させる
この映画は2013年に出版された原作小説を読んだ宇田川寧プロデューサーが、「箱入り息子の恋」(13年)や「台風家族」(19年)で知られる市井昌秀監督に依頼して脚本の土台を作り、その脚本を読んだ「半落ち」(04年)や「ツレがうつになりまして」(11年)の佐々部清が監督として名乗りを上げて企画がスタート。しかし佐々部監督は20年3月に急逝し、草野翔吾監督がその後を引き継いで映画を実現させた。作品の舞台を三重県桑名市に設定したのは佐々部監督で、梓と叶海の中学時代のエピソードを脚本に加えたのは草野監督。3人の監督の脚本の連鎖がひとつの作品として結実したことを想うと、これもアイミタガイのなせる業かもしれない。
映画の魅力を伝える、数々の特典映像!
今回発売となるBlu-ray&DVDには、メイキング映像、舞台挨拶などのイベント映像、予告編集が特典映像をして収録されている。40分を超えるメイキング映像では、2023年4月のクランクインから撮影現場に密着。撮影の前半は桑名市を中心に行われ、佐々部監督が『川を渡る電車』として脚本に何度も書き込んでいた、桑名市と名古屋市をつなぐ近鉄名古屋線の電車内でも車両を借り切って撮影している。また冒頭の喫茶店のシーンには、原作者の中條ていさんがエキストラ出演していることが明かされる。撮影の合間に主要キャストが語るインタビュー映像が興味深く、草笛光子がこみちを“これは二枚目の役”と言っているのが面白い。イベント映像には、2024年9月の『完成披露試写会』と11月の『公開記念舞台挨拶』の模様を収録。黒木、中村、藤間、監督に加え、中学時代を演じた近藤、白鳥も参加した『完成披露試写会』では、エンディングに流れる『夜明けのマイウェイ』を歌った黒木のエピソードが印象的。元々この歌は桃井かおり主演のドラマ『ちょっとマイウェイ』(79~80年)の主題歌だったが、最初に市井昌秀が脚本を書いていた頃からプロデューサーの念頭にあった曲だとか。黒木はそれを、「悲しみをいくつか、乗り越えてきました~」という歌詞に梓の気持ちをリンクさせて歌ったという。『公開記念舞台挨拶』には黒木、中村、藤間、監督、そして風吹ジュンが参加。彼らの草笛光子に対するコメントに、大女優をリスペクトする気持ちが表れている。特報と本予告を収録した予告編集も合わせて、心地よい感動を呼ぶ映画の世界を満喫できる特典映像になっている。
文=金澤誠 制作=キネマ旬報社
「アイミタガイ」
●4月11日(金)Blu-ray&DVD発売(レンタルDVD同時リリース)
Blu-ray&DVDの詳細情報はこちら
●Blu-ray豪華版 2枚組 価格:7,480円(税込)
【ディスク】<2枚>※本編+特典映像
★特典映像★
・making of アイミタガイ
・完成披露試写会
・公開記念舞台挨拶
・予告編集
★封入特典★
・ブックレット
●DVD豪華版 2枚組 価格:6,380円(税込)
【ディスク】<2枚>※本編+特典映像
★特典映像★
・making of アイミタガイ
・完成披露試写会
・公開記念舞台挨拶
・予告編集
★封入特典★
・ブックレット
●2024年/日本/本編105分+特典映像83分
●原作:中條てい『アイミタガイ』(幻冬舎文庫)
●監督:草野翔吾
●脚本:市井昌秀、佐々部清、草野翔吾
●音楽:富貴晴美
●出演:黒木華
中村蒼 藤間爽子
安藤玉恵 近藤華 白鳥玉季 吉岡睦雄 / 松本利夫(EXILE) 升毅 / 西田尚美 田口トモロヲ
風吹ジュン/草笛光子
●発売・販売元:TCエンタテインメント
© 2024「アイミタガイ」製作委員会
記事提供元:キネマ旬報WEB
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