飛ばし屋・穴井詩はどうして飛距離が衰えない? パワー不足を補うなら「右腕を大きく使うのがマストです」 【優勝者のスイング】
「ヤマハレディースオープン葛城」で、穴井詩がプレーオフを制して2年ぶりに通算6勝目を飾った。今季は開幕戦を15位で終えると、2戦目ではトップ10入りするなど、好調をキープ。その要因について、穴井のコーチを務める石井雄二と親交のあるプロコーチの南秀樹は「意識改革があった」という。
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「飛距離を出すために、以前は曲がりの大きなフックを打たなきゃいけないと思っていたものの、さまざまな計測器でデータ分析した結果、そうでないことに気が付いたそうです。低いフックでランを稼ぐ弾道から、大きなキャリーで飛ばすハイドローに変化。インサイド・アウトの軌道も改善され、左へのミスが減りシンプルに攻めていけるようになったのです」。データと感覚をすり合わせたことが功を奏したわけだ。
スイングでは切り返しが大人しくなっているという。「もともとバックスイングでは、手元が先行するタイプ。トップでコックを入れる際に、クロスっぽくしてクラブを遅らせていました。タイミングが合えば大きな飛距離が得られる一方で、安定感には欠けてしまいます。それが、幾分コックのタイミングが早くなり、トップで手首を捻る動作も抑えられています。また以前はジャンプするようにタテ重視に使っていた地面半力も、ヨコ回転が加わり、クラブがインサイドに抜けています」。スムーズな切り返しでクラブを安定させ、ヨコ回転が加わったことで軌道も修正されたのだ。
スイングに変化は見られるものの、ドライビングディスタンスで常に上位にいる穴井の飛ばしのポイントについて南は、「右腕の使い方の上手さ」を挙げた。「トップで右ワキに空間があり、右を大きく使えるのが飛ばしにつながっています。手元を高く遠くへ上げているので、スイングアークが大きくなるわけです。男子プロのようなパワーがあれば、右ヒジを体につけたままでも飛ばせますが、やはり飛距離を望むなら右手を大きく使うのがマストです」。
右手を大きく使うには、右手1本で打つのが練習になる。「クラブはPW。遠いところへ上げて、体の回転を使いながら前、目標方向に振ってください。クラブで作る円が大きくなるようなイメージです。このとき、ダウンスイングでタメを作ろうとして右ヒジを絞ってしまうと体の回転が止まってしまいます。タメは捻転差で作るもの。右手を遠くへ上げて、体が先行することで生まれるのです」。
右手を大きく使うと「フライングエルボーになるのが心配」という人は、トップでのシャフトの向きに注意してみよう。クロスにならなければ、フライングエルボーっぽくなっても、右手が使えてクラブが綺麗に下りやすくなる。「飛距離を出すには右手の役割は重要。フォローまで振り抜く、またはフォローで叩くイメージを持って力強く振ってみてください」。
■穴井詩
あない・らら/2008年のプロテストに一発合格すると、12年にシード権を獲得。16年の「ゴルフ5レディス」で初優勝。「ヤマハレディースオープン葛城」で通算6勝目を挙げた。豪快なスイングと飛距離が魅力。
■南秀樹
みなみ・ひでき/プロゴルファーである父の影響でゴルフを始め、高校卒業後にティーチングプロ資格を取得。クラブを使うことを主とする指導法が高い評価を得ている。幼少期から鈴木愛を指導するなど、ツアーで活躍する数多くのプロをサポートしている。(株)ボディスプラウト所属。
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