自分の頭で考える投資を 日体大生が金融・投資の基礎と考慮すべき原則を学ぶ

横浜市の日本体育大健志台キャンパスで6月4、5日の両日、金融、投資の基本的な仕組みを学ぶ学生対象の講義があり、計約500人の2、3年生が、経済活動に不可欠な金融の役割や株式投資の際に考慮すべき原則について理解を深めた。5日の講義で講師を務めたマネックス証券(東京都港区)のアナリスト・岡功佑さんは、株式投資だけで世界有数の大富豪になった米著名投資家ウォーレン・バフェット氏の優れた投資手法を紹介しながら、「自分の頭で考える投資」の大切さを強調した。
岡さんは、投資と投機・ばくちとの違いや、直接金融(株式投資など)と間接金融(銀行融資など)の区別、デフレとインフレの経済現象の特徴など、投資の際に踏まえておくべき金融の基礎を、若者に身近な具体例を挙げながら分かりやすく述べた。また日常的には「危険」の意味で使われるリスクが投資の世界では「不確実性、振れ幅の大きさ」を意味することや、IPO(新規公開株式)やPBR(株価純資産倍率)など金融、投資の世界で使われる専門用語も簡潔に説明した。
株式投資の際にしっかり頭に入れておくべき投資原則の解説には最も多くの時間を費やした。
リスクを最小化するための投資の三大原則「長期・積み立て・分散」の意義をはじめ、理論物理学者アインシュタインが「人類最大の発明」と表現したとされる「複利」の大きな資産形成効果や金利・為替の動向、投資家の期待・思惑などで動く株価形成のメカニズム、株価チャートの変化に着目する「テクニカル投資」と売上高など企業業績に注目する「ファンダメンタル投資」の手法の違い、同じファンダメンタル投資でも企業の成長性(売上高などの伸び)に期待する「グロス株投資」と企業業績に比して株価が不当に低い割安株を狙う「バリュー株投資」の視座の違いがあることなど、投資に必要な重要知識を整理して解説した。
投資家の尊敬を集めているバフェット氏の投資手法の特徴も詳しく述べた。誰でも理解できる分かりやすい企業、競争優位性がありブランド力がある企業を長期保有する点をバフェット氏の投資の特徴に挙げ、「過去70年間、利益を毎年平均20%増やし続けて24兆8千億円の金融資産を築いた」バフェット氏の投資結果を長期投資の成功事例として紹介した。
一方、岡氏は「神様でさえ年平均20%増。世の中にはこれを大幅に上回るうまい話が出回っているが、“バフェット氏でさえ20%”を思い出して、十分気を付けてほしい」と話した。
講義の締めくくりには、バフェット氏が発言したとされている「自分の髪を切る必要があるかを床屋さんに聞いても駄目」という言葉を紹介し、「投資は自分の頭で考えることが必要だ。投資の専門家から聞いたことでもうのみにしてはいけない。そのためには自ら学び続けることが大切」とバフェット氏のような「賢明なる投資家」になるための条件に言及した。
5日の午前中の講義に出席した約125人の学生の自己申告では、投資経験者は数人だった。その1人、スポーツマネジメント学部2年生で金融関係への進路を考えている木村蒼汰さん(20)は「3月に投資を始めたばかりで、今日の講義はとても参考になった。投資の魅力を知るとともに、投資リスクを小さくするための手法も学べた。いまは比較的リスクの小さいインデックス投資(日経平均株価などの指数に連動して価格が変化する投資信託への投資)に取り組んでいるが、30歳か40歳なったら、リスクの許容範囲を少し広げた“攻めの投資”に挑戦したい」と語った。
マネックス証券は、単にお金を増やすだけでない、投資の役割を改めて考える取り組み「大切なものに投資をしよう」の一環で、築50年の日本体育大スキー部女子合宿所のネーミングライツ(命名権)を獲得して、同合宿所改修費を援助した縁で、2023年から毎年、同大の金融講義に自社のアナリストなどを講師として無料で派遣している。
講師の派遣を要請した同大スポーツマネジメント学部の竹腰誠教授は「プロスポーツの世界に進む学生もいるが、学生の6割は一般企業に就職する。プロスポーツ選手になる人は引退後の生活のこと、企業に就職した人は子どもの教育費など将来の人生設計に合わせて必要な資産をどう形成するかを考えるために最低限必要な金融知識を学んでほしいと考え、講師をお願いしている。人生設計に役立つ金融の基礎知識を学生が身に付け、将来に向けて自らの可能性を広げることにつながれば」と話した。
記事提供元:オーヴォ(OvO)
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