今さら聞けない『PHS』とは? 公衆PHS終了後、代替通信手段はどうなる?
携帯電話よりも安価な通信手段として、90年代~00年代に人気を博した『PHS』。『PHS』には基地局のカバー範囲や電波の強さの面で携帯電話との明確な違いもあり、医療機関などでは独自の需要も確立しました。
もっとも2023年に「公衆PHSサービス」はサービス終了(※構内PHSの利用期限は端末と基地局の規格によって異なる)。PHSとは一体どんな端末だったのか、イメージが付きづらい世代の方もいるのでは?
そこで今回は『PHS』とは何なのかをご紹介しつつ、公衆PHSサービス終了後の代替手段として期待されている通信方式がどのようなものかも解説します。
PHSとは何か?
PHS(Personal Handy-phone System)は、1995年に日本でサービスが開始された移動体通信サービスです。PHSは、低電力の電波を使用するため、基地局の設置が比較的容易で、都市部での高密度なカバーが可能でした。また、音質が良く、データ通信にも対応していたため、ビジネスユースや医療現場での利用が広がりました。

一方、電波の出力が小さいということは、携帯電話に比べて電話が届く範囲が狭いということでもあります。PHSは移動中の通信品質が不安定という課題も抱えており、2000年代以降携帯電話の普及に伴い、PHSの利用者は減少していきました。
PHSと携帯電話、スマホの違いは何?
PHSと携帯電話の最大の違いは通信方式にあります。PHSが「低出力・短距離」通信であるのに対し、携帯電話は「高出力・広範囲」を特長とします。具体的には、PHSの基地局カバー範囲が半径500m程度なのに対し、携帯電話は最大数十Kmまで対応可能。電波出力もPHSが80mW以下と微弱なため、医療現場での使用に適していました。
また料金面での違いもあります。もともとはPHSが初期費用・通話料ともに安価でしたが、携帯電話の料金下落に伴い差が縮小。データ通信速度ではPHSの最大256kbpsに対し、現代のスマートフォンは5Gで最大10~20Gbpsを実現するなど、技術格差が大きくなっています。
公衆PHSサービスの終了とその影響
PHSは低価格で利用できたことから若者の間で流行しましたが、スマホの登場でアプリ間通話が無料になり、一般での需要がどんどん減っていきました。通話エリアが少なかったことも消費者離れの一因です。

公衆PHSサービスは、2023年にサービスを終了しました。具体的にはワイモバイルが2021年1月末で一般的なPHS向け料金プランを終了し、2023年には自動販売機などで使われていたテレメタリング向けプランも終了した形です。
この終了によって、特に影響が大きかったのは「医療・介護施設」でした。そこにはPHSと医療・介護施設の相性の良さがあります。
医療・介護施設への影響

前述の通り、PHSは電波が微弱なため、医療機器に影響を与えにくいという理由で医療・介護施設で積極的に採用されていました。そのため、公衆PHSのサービス終了が医療現場や介護施設に影響を与えてしまった感があります。
具体的には以下のような影響がありました。
・通信品質の低下:公衆PHSの電波を同期信号に使用していた構内PHSで音声の途切れやノイズが増加し、特に地下や複雑な構造の病院で発生
・機器調達の困難化:端末や基地局の製造が縮小し、中古市場で価格が高騰
特に、「通信品質の低下」は大きな問題でした。

医療・介護施設の現場で利用されていたのは、一般的に「構内PHS」です。構内PHSは公衆PHSサービスの終了後も、機器の規格などによっては今日でも継続利用可能です。
一方で通信品質が2025年現在でも十分か、というと疑問が残ります。公衆PHSの電波信号と同期することで音声品質を保つタイプの構内PHSが多かったため、公衆PHSの終了によって通信品質の低下が懸念されるためです。
公衆PHSサービス終了後の代替通信手段
公衆PHSサービス終了後、各業界では以下のような代替通信手段が導入されています。ただしいずれの通信手段も、安価かつ気軽に導入できるPHSに比べると、導入ハードルが高い側面が否めないのも事実です。
クラウドPBX
クラウドPBXはスマートフォンを内線化できる次世代電話システムです。インターネット回線を利用することで、外出先からでも病院内線番号で通話可能。通話録音や不在転送などのビジネス機能を標準装備し、複数拠点間の無料通話サービスもできる場合があります。

たとえばドコモビジネスが提供している「お客様PBXタイプ」は、初期費用が1回線あたり1,100円。そのほか、オフィスリンク設備に関する手数料が2,200円~かかります。月額料金が1回線あたり990円。なお、ドコモ携帯電話の基本使用料が別途必要になります。
sXGP(医療・介護施設向け)
sXGPは、医療機関向けに開発されたプライベートLTE通信です。PHSと同じ1.9GHz帯を使用しつつ、スマートフォンとの連携で通話品質を維持しながら機能拡張を実現しています。特筆すべきはナースコール連動機能で、患者からの呼び出しをスマホ画面に即時表示。位置情報連動による迅速な対応が可能です。

sXGPの導入コストは、病院の規模や設置する機器によって大きく異なっています。基本機器は1台あたり約50~100万円で、大きな病院であれば10台ほど必要になることもあります。
また、通信端末は1台あたり3万~5万円ほど。そのほか、ネットワーク設備代や、基地局設置費用などがかかります。
小規模な施設であれば500万円~、中規模な施設であれば800万円~が目安となります。
総じてPHSはsXGPなどの通信手段と、2025年現在の視点で見ても差別化できている要素が大きい貴重な通信手段です。安価かつ気軽に使えて、なおかつ構内PHSのようなセキュリティ面での安全性も備えた「PHS的な通信手段」には実は二ッチながらまだ新たに登場する余地があるのかもしれません。
※サムネイル画像は(Image:「写真AC」より引用)
記事提供元:スマホライフPLUS
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