"変わらない夫"とどう向き合う?離婚に至るケースも…熟年夫婦の関係修復
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イチオシスト:イチオシ編集部 旬ニュース担当
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「夫を嫌いになってしまった…」
長年一緒に過ごしてきた夫に対して、急に感じる「もう無理かも」という気持ち。結婚生活が長くなるほど、マンネリ化や無関心が不満を募らせ、最終的に「もう愛してないかもしれない」と思うことも。夫婦関係が壊れていると感じたら、どうすればいいのでしょうか?
「テレ東プラス」は、夫婦関係カウンセリング「すまいる相談室」の代表カウンセラー・北村貴子さんに、若い夫婦と熟年夫婦それぞれが直面する問題について取材。後編となる今回は、熟年夫婦が関係を改善するための方法を探りました。
※前編はこちら。
【動画】人生をリスタートしたい3人の女性。共通の障壁は「夫」…
画像素材:PIXTA
――長年連れ添った夫婦の場合、若い夫婦とは違った理由で気持ちが冷めてしまうこともあるのでしょうか。
「実は、嫌いになる原因そのものは、若い夫婦も熟年夫婦も大きく変わりません。よく挙げられる理由は、『話を聞いてくれない』『家事をしてくれない』『暴言を吐かれた』など、共通しています。
ただ、若い夫婦の場合、"変わってくれるかもしれない、改善できるかもしれない"と希望を持って葛藤することが多いのですが、熟年夫婦では、長年同じ問題を我慢し続けた末に、"もうこの人は変わらない"と諦めてしまっているケースが多いです。
お子さんが独立したタイミングで、妻側が"やっと自分の人生を取り戻せる"と感じ、離婚を決断するケースも少なくありません。つまり、嫌いになったというより、"限界まで我慢し続けた結果"というニュアンスです。年月が積み重なるほど、関係修復は難しくなってしまうのが現実です」
――若い夫婦と比べて、関係修復のハードルも高くなるのですね。
「年齢的な背景もありますが、一番大事なポイントはタイミングです。夫婦関係の修復は、どちらか一方が努力しても上手くいきません。お互いに“関係を改善したい”という意志がないと、なかなか難しいのです。
だからこそ、気持ちがまだ残っているタイミングを逃さず、行動することが重要です。身体の病気と同じで、こじらせて悪化してからでは手遅れになってしまうことも。逆に言えば、年齢に関係なく、タイミングさえ合えば修復は可能です。
私のカウンセリングルームにも、熟年のご夫婦が一緒に来られることがよくあります。お互いに本気で関係を良くしたいという前向きな気持ちがあると、スムーズに修復しやすいです。
ただ、夫側が"離婚だけは避けたいから来た"という本音を持っているケースもあります。関係を改善したいというより、"離婚は嫌だから、なんとか繋ぎ止めよう"という気持ちです。そうなると、関係の土台は弱っていることが多いので、少しでも"すれ違っているかも"と思った時こそ、一番のタイミングです」
画像素材:PIXTA
――相手を変えるのは難しいのでしょうか?
「正直、相手を変えるのはほぼ無理だと思った方がよいでしょう。しかし、全部を諦めなければならないわけではありません。大事なのは、自分の捉え方を変えることです。よく『私ばかり努力しなきゃいけないんですか?』と言われますが、努力や我慢よりも大切なのは、"この人はこういう考え方の人なんだ"と受け入れること。相手の行動を肯定はしなくても、否定もしない。自分の心を守るために、"戦わない"というスタンスをとるのです。
動かないものを動かそうとし続けると、こちらが消耗してしまいます。例えば、頑張ってご飯を作ったのに何も言ってくれない、という場面もありますよね。そんな時は、"相手の反応は相手の問題"として切り分けて考えてみてください。
相手の態度で自分の価値を揺らしてしまうと、どんどん苦しくなります。だからこそ、"私は自分がしたくてやっている、どう反応するかは相手の自由"と、心の中で折り合いをつけることが大切です。これは努力でも我慢でもなく、自分の心を守るための方法なのです」
――関係を修復しようとして無理にデートしたり外食したりすると、逆にケンカになってしまうことも。2人で外出する時に気をつけることは?
「運転に文句を言い合ったり、人混みや渋滞でイライラしたり、外出時はケンカになりやすいものです。だからこそ、心に余裕を持つことが大切です。多少カチンときても、軽く流す意識を持ちましょう。
それでもケンカになってしまったら、切り替えを意識して。お互いに不機嫌なままだと雰囲気が悪くなるので、一度流して空気を立て直す努力が必要です。
また、関係を修復したいからといって、いきなり長時間一緒に過ごすのは逆効果になることも。まずは短時間のランチやお茶など、少しだけ一緒にいるところから始めるのがいいでしょう」
――相手と距離を取ることも大切なのでしょうか。
「ずっと一緒にいるとお互いに息が詰まってしまうので、自分だけの時間を持つことはとても大切です。その上で、短くても相手と向き合う時間を作ってほしいです。
例えば、日中はそれぞれ自由に過ごして、夜の10分だけはスマホを置いて目を見て会話する。少し距離を取った分、一緒にいる時に優しくなれることもあります。
また、自分の機嫌は自分でとるという意識も大切です。自分に心に余裕がないと、つい相手の言動にネガティブな感情を重ねてしまいやすくなりますよね。自分の状態を整えることが、いい関係を保つための第一歩になると思います」
――ケンカをしてしまった時、どうやってリカバリーすればいいですか?
「まず大事なのは、クールダウンです。感情が高ぶっている時に話し続けても、お互いを傷つけるだけになってしまうので、一度距離を取って冷静になる時間を持つことが大切です。
また、相手が本音をなかなか言えない場合、無理に聞き出そうとするのは逆効果です。本音はあっても言えないという状態なら、夫婦カウンセリングはとても有効です。カウンセラーなど第三者が間に入ることで、普段なら口にできなかった思いが出てきて、『そんなふうに思ってたの?』と、お互いに驚くような本音が見えてくることもあります。もし会話が途絶えてしまっているなら、外部の力を借りるのも、立て直すための大きな一歩になるかもしれません」
――関係が冷めてしまった場合、そのまま老後を迎えるか、修復するか、はたまた離婚か…どう判断すればいいですか?
「まずは関係を見直して、再構築が難しい場合、離婚という選択肢もありです。
あとは、"卒婚"という選択肢もあります。卒婚とは、婚姻関係を続けながら、お互いに最低限のルールを決めて、自由に生活するスタイルです。一緒に暮らす卒婚もあれば、別居スタイルの卒婚もあります。離婚するほどではないけれど、距離を取りたいという人にはピッタリかもしれません。
卒婚を選ぶ場合、お互いに干渉しすぎないことが重要です。生活の時間帯や使うスペースを分けたり、食事やお金の管理方法を事前に話し合ったりしておくことも大切ですね。家庭内別居とは違って、お互いの自由を尊重しつつも、一定の秩序を保つようなイメージです」
――最後に、悩める夫婦にメッセージをお願いします。
「『もう限界だ!』となってから相談に来る方が多いのですが、そこまで追い込まれる前に、ぜひ専門家に相談してほしいと思います。
自分たちだけで頑張っていると、やり方がズレていたり、気づかないうちに考え方が偏ってしまうこともありますよね。だからこそ、早めに“第三者の視点”を取り入れることが大切です。ひとりで抱え込まずに、少しだけ勇気を出して、一歩踏み出してみてくださいね」

【北村貴子 プロフィール】
「すまいる相談室」代表カウンセラー。夫婦問題・離婚カウンセラー、メンタルケア心理士(メンタルケア学術学会所属・LCM091742)。プラットフォーム型カウンセリングの登録カウンセラーとして離婚相談やDV・モラハラ問題に長年従事し、2019年に独立。現在は横浜市を拠点に、国内外から幅広く相談を受けている。夫婦問題・離婚カウンセリング歴10年以上。精神医療の研究にも取り組んでいる。
長年一緒に過ごしてきた夫に対して、急に感じる「もう無理かも」という気持ち。結婚生活が長くなるほど、マンネリ化や無関心が不満を募らせ、最終的に「もう愛してないかもしれない」と思うことも。夫婦関係が壊れていると感じたら、どうすればいいのでしょうか?
「テレ東プラス」は、夫婦関係カウンセリング「すまいる相談室」の代表カウンセラー・北村貴子さんに、若い夫婦と熟年夫婦それぞれが直面する問題について取材。後編となる今回は、熟年夫婦が関係を改善するための方法を探りました。
※前編はこちら。
【動画】人生をリスタートしたい3人の女性。共通の障壁は「夫」…
「どうせこの人は変わらない」我慢が限界に達する前にするべきこと

――長年連れ添った夫婦の場合、若い夫婦とは違った理由で気持ちが冷めてしまうこともあるのでしょうか。
「実は、嫌いになる原因そのものは、若い夫婦も熟年夫婦も大きく変わりません。よく挙げられる理由は、『話を聞いてくれない』『家事をしてくれない』『暴言を吐かれた』など、共通しています。
ただ、若い夫婦の場合、"変わってくれるかもしれない、改善できるかもしれない"と希望を持って葛藤することが多いのですが、熟年夫婦では、長年同じ問題を我慢し続けた末に、"もうこの人は変わらない"と諦めてしまっているケースが多いです。
お子さんが独立したタイミングで、妻側が"やっと自分の人生を取り戻せる"と感じ、離婚を決断するケースも少なくありません。つまり、嫌いになったというより、"限界まで我慢し続けた結果"というニュアンスです。年月が積み重なるほど、関係修復は難しくなってしまうのが現実です」
――若い夫婦と比べて、関係修復のハードルも高くなるのですね。
「年齢的な背景もありますが、一番大事なポイントはタイミングです。夫婦関係の修復は、どちらか一方が努力しても上手くいきません。お互いに“関係を改善したい”という意志がないと、なかなか難しいのです。
だからこそ、気持ちがまだ残っているタイミングを逃さず、行動することが重要です。身体の病気と同じで、こじらせて悪化してからでは手遅れになってしまうことも。逆に言えば、年齢に関係なく、タイミングさえ合えば修復は可能です。
私のカウンセリングルームにも、熟年のご夫婦が一緒に来られることがよくあります。お互いに本気で関係を良くしたいという前向きな気持ちがあると、スムーズに修復しやすいです。
ただ、夫側が"離婚だけは避けたいから来た"という本音を持っているケースもあります。関係を改善したいというより、"離婚は嫌だから、なんとか繋ぎ止めよう"という気持ちです。そうなると、関係の土台は弱っていることが多いので、少しでも"すれ違っているかも"と思った時こそ、一番のタイミングです」

"相手を変える"のではなく、"自分を守る"
――相手を変えるのは難しいのでしょうか?
「正直、相手を変えるのはほぼ無理だと思った方がよいでしょう。しかし、全部を諦めなければならないわけではありません。大事なのは、自分の捉え方を変えることです。よく『私ばかり努力しなきゃいけないんですか?』と言われますが、努力や我慢よりも大切なのは、"この人はこういう考え方の人なんだ"と受け入れること。相手の行動を肯定はしなくても、否定もしない。自分の心を守るために、"戦わない"というスタンスをとるのです。
動かないものを動かそうとし続けると、こちらが消耗してしまいます。例えば、頑張ってご飯を作ったのに何も言ってくれない、という場面もありますよね。そんな時は、"相手の反応は相手の問題"として切り分けて考えてみてください。
相手の態度で自分の価値を揺らしてしまうと、どんどん苦しくなります。だからこそ、"私は自分がしたくてやっている、どう反応するかは相手の自由"と、心の中で折り合いをつけることが大切です。これは努力でも我慢でもなく、自分の心を守るための方法なのです」
――関係を修復しようとして無理にデートしたり外食したりすると、逆にケンカになってしまうことも。2人で外出する時に気をつけることは?
「運転に文句を言い合ったり、人混みや渋滞でイライラしたり、外出時はケンカになりやすいものです。だからこそ、心に余裕を持つことが大切です。多少カチンときても、軽く流す意識を持ちましょう。
それでもケンカになってしまったら、切り替えを意識して。お互いに不機嫌なままだと雰囲気が悪くなるので、一度流して空気を立て直す努力が必要です。
また、関係を修復したいからといって、いきなり長時間一緒に過ごすのは逆効果になることも。まずは短時間のランチやお茶など、少しだけ一緒にいるところから始めるのがいいでしょう」
――相手と距離を取ることも大切なのでしょうか。
「ずっと一緒にいるとお互いに息が詰まってしまうので、自分だけの時間を持つことはとても大切です。その上で、短くても相手と向き合う時間を作ってほしいです。
例えば、日中はそれぞれ自由に過ごして、夜の10分だけはスマホを置いて目を見て会話する。少し距離を取った分、一緒にいる時に優しくなれることもあります。
また、自分の機嫌は自分でとるという意識も大切です。自分に心に余裕がないと、つい相手の言動にネガティブな感情を重ねてしまいやすくなりますよね。自分の状態を整えることが、いい関係を保つための第一歩になると思います」
――ケンカをしてしまった時、どうやってリカバリーすればいいですか?
「まず大事なのは、クールダウンです。感情が高ぶっている時に話し続けても、お互いを傷つけるだけになってしまうので、一度距離を取って冷静になる時間を持つことが大切です。
また、相手が本音をなかなか言えない場合、無理に聞き出そうとするのは逆効果です。本音はあっても言えないという状態なら、夫婦カウンセリングはとても有効です。カウンセラーなど第三者が間に入ることで、普段なら口にできなかった思いが出てきて、『そんなふうに思ってたの?』と、お互いに驚くような本音が見えてくることもあります。もし会話が途絶えてしまっているなら、外部の力を借りるのも、立て直すための大きな一歩になるかもしれません」
――関係が冷めてしまった場合、そのまま老後を迎えるか、修復するか、はたまた離婚か…どう判断すればいいですか?
「まずは関係を見直して、再構築が難しい場合、離婚という選択肢もありです。
あとは、"卒婚"という選択肢もあります。卒婚とは、婚姻関係を続けながら、お互いに最低限のルールを決めて、自由に生活するスタイルです。一緒に暮らす卒婚もあれば、別居スタイルの卒婚もあります。離婚するほどではないけれど、距離を取りたいという人にはピッタリかもしれません。
卒婚を選ぶ場合、お互いに干渉しすぎないことが重要です。生活の時間帯や使うスペースを分けたり、食事やお金の管理方法を事前に話し合ったりしておくことも大切ですね。家庭内別居とは違って、お互いの自由を尊重しつつも、一定の秩序を保つようなイメージです」
――最後に、悩める夫婦にメッセージをお願いします。
「『もう限界だ!』となってから相談に来る方が多いのですが、そこまで追い込まれる前に、ぜひ専門家に相談してほしいと思います。
自分たちだけで頑張っていると、やり方がズレていたり、気づかないうちに考え方が偏ってしまうこともありますよね。だからこそ、早めに“第三者の視点”を取り入れることが大切です。ひとりで抱え込まずに、少しだけ勇気を出して、一歩踏み出してみてくださいね」

【北村貴子 プロフィール】
「すまいる相談室」代表カウンセラー。夫婦問題・離婚カウンセラー、メンタルケア心理士(メンタルケア学術学会所属・LCM091742)。プラットフォーム型カウンセリングの登録カウンセラーとして離婚相談やDV・モラハラ問題に長年従事し、2019年に独立。現在は横浜市を拠点に、国内外から幅広く相談を受けている。夫婦問題・離婚カウンセリング歴10年以上。精神医療の研究にも取り組んでいる。
記事提供元:テレ東プラス
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