駅長らのトークショーに沸く、小田急ロマンスカーミュージアムで多摩線開業50周年記念「多摩鉄道サミット」【コラム】
1974年……。「日本列島改造論」の田中角栄首相が政治スキャンダルで退陣、長嶋茂雄読売ジャイアンツ終身名誉監督が現役引退した、この年の6月1日に開業したのが小田急多摩線です。最初の区間は新百合ケ丘~小田急永山間。半世紀を経過した現在の路線は新百合ヶ丘~唐木田間10.6キロです。
多摩線開業50周年を記念して、2024年12月4日~2025年3月3日に小田原線海老名駅直結のロマンスカーミュージアムで開催中なのが「まちの多摩線50年」。多くの資料や写真で、路線の歩みや鉄道が地域発展に果たした役割を振り返る企画展です。
期間中のイベントの一つ、「多摩鉄道サミット」が2025年1月11日に開かれ、「駅長トークショー」では、多摩センター駅に乗り入れる鉄道各社から小田急新百合ヶ丘駅長、京王相模原管区長、多摩都市モノレール駅務管理所長の3人が顔をそろえてエールを交換しました。
小田急と京王が並走
開業50年を迎えた小田急多摩線は、多摩ニュータウンの東京都心へのアクセス鉄道。東京都稲城、多摩、八王子、町田の4市にまたがるニュータウンは計画人口30~34万人(現在約22万3000人)、東京都心とつなぐ鉄道は2路線が必要とされ、小田急多摩線と京王相模原線が役割を分け合うことになりました。
小田急と京王は、永山(駅名は小田急永山と京王永山)~多摩センター(小田急多摩センターと京王多摩センター)で並走します。多摩モノレールは、北方向から駅に乗り入れます。
開業は京王多摩センターが1974年10月18日、小田急多摩センターが1975年4月23日、(多摩モノレール)多摩センターが2000年1月10日。具体的な動きはありませんが、小田急多摩線を唐木田以西に延伸、JR横浜線相模原経由でJR相模線上溝方面に延ばす構想もあります。
沿線には大学キャンパス
駅長トークショーに参加したのは、小田急の嘉山昌弘町田地区新百合ヶ丘駅長、京王の藤田勲鉄道事業本部鉄道営業部相模原管区長、多摩都市モノレールの梶田宜希運輸部駅務管理所長。鉄道芸人の太田トラベルさんの司会で、トークに花を咲かせました。
最初に各路線のアピールポイント。小田急多摩線はニュータウン鉄道ながら、車窓に自然が広がり開放感に浸れます。
沿線に大学が多いのも特徴で、朝夕は通勤客、昼間は通学客と客層が入れ替わります。駅は大学祭や地域イベントに積極参加、地域にファンを増やします。
小田急で特に子どもたちの一番人気はマスコットキャラクターの「もころん」で、その正体はウサギ。初登場は2023年8月、まだ1歳ちょっとですが、小田急のイベントに欠かせない存在です。
終点に「さがみはらリニアひろば」
京王相模原線は、ニュータウン鉄道から躍進を遂げようとしています。理由はリニア。リニア中央新幹線の神奈川県駅(仮称)は京王橋本駅に隣接します。駅近隣に「さがみはらリニアひろば」があって、工事現場の様子が感じられイベントも開かれます。
沿線スポットは、屋内型テーマパークのサンリオピューロランド(最寄り駅・京王多摩センター)、そして三井アウトレットパーク多摩南大沢(同・南大沢)。京王は相模原線を、観光路線として売り込みます。
路線が「夜景遺産」に
多摩モノレールは全線高架で、「モノレール自体が観光資源」と梶田所長。沿線からは東京スカイツリーも遠望できます。
路線は2023年8月、夜景コンベンション・ピューローから「施設型夜景遺産」に認定。沿線では、「ラーメンスクエア」(立川南)もお勧めだそう。
モノレール運転士は京王も運転できる!?
3駅長・所長は、鉄道ファンの皆さまに興味を持っていただけそうな話題も聞かせてくれました。その中から〝多摩モノレール三題噺〟をピックアップしました。
鉄道とモノレール、スタイルはかなり違いますが、鉄道システムは共通。運転には国家資格の動力車操縦者が必要で、多摩モノレールは京王に運転士養成を委託します。だからいざとなれば、多摩モノレールの運転士は京王電車も運転できる……はずです。
多摩モノレールが沿線PRで力を入れるのがウォークイベントで、鉄道ファン要注目が武蔵村山市の「羽村山口軽便鉄道跡」。軽便鉄道は東京の水がめ・山口貯水池(狭山湖)建設に活躍しましたが、戦局悪化で1944年に廃止。トンネルは21世紀の現代に残り、遊歩道・自転車道に再整備されます。
三題目は多摩モノレール自体の延伸計画。現路線は多摩センター~上北台間16.0キロで、北側は上北台~箱根ケ崎間、南側は多摩センター~町田間の延伸計画があり、本サイトも再々取り上げています。梶田所長は、「路線延伸は東京都主導で進みます。興味ある方は、都のホームページをチェックしてほしい」と呼び掛けました。
勤務時間に釣り!?
トークショーのラストは、相手を指名のクロストーク。多摩モノレールの梶田所長からは小田急の嘉山駅長に、禁断(?)の質問が飛び出しました。
「小田急片瀬江ノ島駅の社員は勤務時間の合間に釣りをして、それを食事のメニューにしていると聞いたことがあるが本当ですか」。もちろん、勤務時間中に釣り糸をたれればコンプライアンス違反。遠い昔はともかく、今そんなことはありません。
嘉山駅長は、「もしも本当なら、これが本当の『ふてほど(不適切にもほどがある!)』」と、2024年新語流行語大賞でフェイント。その上で、こんな名推理を披露しました。
「片瀬江ノ島駅の目と鼻の先には釣り宿があり、かつての大漁時には駅がお裾分けに預かったことも。調理の得意な社員が休憩時間にサカナをさばいていたのに、尾ひれがついて伝わったのでは」。サカナの話を尾ひれで落とす。見事な受け答えに、会場からは大きな拍手が贈られました。
多摩線の50年展では、今後も小学生向けまちづくりワークショップ(2月15日)、学芸員による展示解説(2月15日)などが予定されます。
筆者がミュージアムを訪れたのは、2023年夏以来約1年半ぶり。館内は以前にも増して、子どもたちの歓声でにぎわいあふれていたのが印象に残りました。
記事:上里夏生
記事提供元:鉄道チャンネル
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