AKB48向井地美音「他のグループと違うことをやり続けたら、また東京ドームに立てるんじゃないかなって思うんです」【連載 なんで令和にAKB48? Season2】
イチオシスト

AKB48メンバーがパーソナルヒストリーを語る連載「なんで令和にAKB48?」。第8回は4月3日に国立代々木競技場第一体育館での卒業コンサートを控えた向井地美音(むかいち・みおん)。2013年に16歳で15期生としてデビューし、次世代エースとして活躍。2019年よりAKB48グループの3代目総監督に就任。AKB48愛にあふれるリーダーとしてグループをまとめあげた。前編では子役時代やオーディションの話などを聞いたが、後編では今のAKB48について思うことや、卒業後の夢などを語ってもらった。
――憧れていたAKB48に入ってどうでしたか?
向井地 毎日がめちゃくちゃ楽しかったです。人によってダンスを覚えるのがしんどいとか、ステージに立つメンバーに選ばれないとか、悩みはあったと思うんですけど、私はなかったです。
――向井地さんは15期生でセンターでしたね。そうなっていくきっかけはあったんですか?
向井地 さいたまスーパーアリーナでやったコンサートで(大島)優子さんに『ヘビーローテション』のセンターを指名していただけたことですかね。
研究生の頃、大島チームKのアンダーに、たまたま私とこみはる(込山榛香)が出ることになったんです。その日はちょうど卒業直前の優子さんも出演されていて、ユニットの『16人姉妹の歌』のアドリブパートを本番当日に「全部みーおんに任せるわ」と言っていただいて。
――それはすごいムチャブリですよ。
向井地 一生懸命やったら、「何かいいじゃん、あのコ」と私の名前を覚えてくださって、ヘビロテのセンターに指名してくださったり、卒コンの早着替えを手伝うメンバーに、私とこみはるを選んでくれたりとか。
劇場公演の1回が何かに繋がるんだっていうことを学べたし、頑張ってよかったです。
――AKB48の入口は小嶋陽菜さんだったけど、加入してからは大島さんに引っ張ってもらう機会が多かったんですね。
向井地 小嶋さんとはチームも違って、なかなか接する機会がなくて......。最初は恐れ多すぎて、しゃべりかけることもできなくて。
でも選抜メンバーになってからご一緒させていただく機会も増えました。ずっと憧れていたことも知ってくださって、小嶋さんの卒コンではヘビロテを一緒に歌わせていただいたり、素敵な立ち位置を用意してくださったり、可愛がってもらいました。
当時はどういう感情で選んでもらっているかわからなかったですが、自分が卒コンを考える立場になって、そういうところに頑張ってほしい後輩を置きたくなる気持ちがわかりました。もしかしたら小嶋さんもそう思ってくれてたのかなって。
――主役の隣に置くと目立ちますもんね。
向井地 そう考えると私は本当にいろんな先輩方にそういうことをしていただきました。(渡辺)麻友さんも、ゆいゆい(小栗有以)と私と3人でのユニットをことあるごとにやってくれました。
みぃちゃん(峯岸みなみ)の卒コンで、ヘビロテを優子さんとやらせてもらったり、たかみな(高橋みなみ)さんも卒業ソングに駆け出しの15期生を入れてくださったり。そうやって育てていただいた恩を返さないとなって。
――卒業コンサートがどんな演出になるか楽しみにしています。お話を戻しましょう。総監督になったときの話を聞かせてください。
向井地 横山(由依)さんの背中を見ていて、ずっとAKB48のことを考えてる姿が素敵だなって。そこから、自分もなりたいと思うようになり、もし総選挙で選抜に入れたら、スピーチで言いたいと思ったんです。
「センターになりたい」というメンバーはたくさんいたけど「リーダーになりたい、総監督になりたい」という言う人はいなかったので、もしかしたら自分にしか選べない道がここにあるかもしれないと思いました。
――2018年の「AKB48総選挙」で13位となり、「いつかAKB48グループの総監督になりたい」と宣言しました。ちなみにセンターになりたい願望はあったんですか?
向井地 実はセンターになりたい、なるんだっていうのは、あまりしっくりきてなかったです。周りはそう言っているから自分も言っていましたが、実はど真ん中に立つ自信もないし、なんか違う感覚がずっとあって。
センターはすごい個性、魅力を持っていないと、輝けないと思っています。当時の私はその個性がなかったけど、総監督だったら自分の好きなことを生かせるし、自分にしかできないことができそうだなと思ったんです。
――2019年4月より、3代目のAKB48グループ総監督に就任します。
向井地 振り返ると大変でしたね。前例のないことがたくさんありました。コロナ禍が一番大きいかな。劇場公演も握手会もできなくなっちゃったり、シングルも1年半ぐらい出せなかったり、今思うと本当に信じられないような時期でした。
――アイドル業界に収まらない危機でしたもんね。
向井地 総監督になるにあたって、自分はファンとしての目線も忘れないでいたいと思っていました。ファン目線でグループを改善していきたいと思っていたけど、いざスタッフの会議に入ってみたら、いろんな事情にも気づくし、好きという気持ちだけではできないこともあるんだなと。
それに立ち向かえるぐらい、力のある性格だったらよかったですけど、たかみなさんみたいに力強いキャラでもなかったから。自分が総監督じゃない方が良かったのかなと悩んだこともありました。
――向井地さんは平和主義ですもんね。
向井地 その代わりに周りのメンバーが支えてくれました。それまでのAKB48は個人戦の印象でしたが、私の総監督時代あたりから、より団結力が高まって「AKB48をもっと盛り上げよう」みたいな動きがメンバーやファンの方にも増えていったのかなって。
――団結しようとか、箱推しを増やそうという目標は向井地さんが掲げたの?
向井地 総選挙での姉妹グループの団結力ってすごくて。ファンの方々が「名古屋代表でこのコを押し出そう」とか、「SKE48のために私は頑張る」とか、そういうのがうらやましかったんですよね。
AKB48はそういうのがあまりなくて個々の戦いだったので、もっと「AKB48が好き」と言ってもらえるようになったらいいなと思っていました。
結果的には、コロナ禍でAKB48が単独で活動するようになって、大変な時期をファンの方と乗り越えたことで、箱推しの方は増えたし、AKB48全体を拡散してくれる方も増えたのが嬉しいです。
――総監督として目指していたことが当時の状況も相まって実現したんですね。
向井地 あとは、ひとつひとつのライブやコンサートの満足度を上げたいということをずっと思っていました。「ライブやコンサートをできることが当たり前」みたいな雰囲気があって。覚えることも多すぎて、気づいたら次のコンサートが迫ってくるのが日常で。
――悪い意味でルーティーンになっていたんですね。
向井地 曲も「これを披露しておけば大丈夫」じゃなくて、たくさん素敵な曲があるんだから、もっといろんな曲を使った方が良いし、メンバーやポジションもいつも一緒じゃなくて、みんながコンサートに出ている意味を感じるセットリストにしたいなと、こだわっていましたね。
――AKB48に詳しい向井地さんだからこその考えですよね。
向井地 以前は目立てる選抜の16人が完全に決まっていて、それ以外はあまり出番がない感じもあったけど、なるべく出る曲数が平等になるようにしました。それは今のAKB48にも引き継がれてるなって。昨年のツアーも全員にユニットがあったり、メドレーを全員で繋いだり。
――メンバーもファンも嬉しいですよね。
向井地 ファン目線を持った総監督でいたいと思って始めたけど、終わってみれば、メンバーがどう思うかみたいなのをすごい気にしていたかもしれないです。
――でも、メンバーは皆さん向井地さんで良かったと。
向井地 そう言ってもらえてよかったです。本当にみんなに支えられました。
――そして昨年末に卒業を発表しました。2年前に総監督を倉野尾成美さんに引き継いだときから、卒業は意識していたと思います。
向井地 総監督を降りるのと同時に卒業する選択もありかなと思い、たかみなさんに相談もしていました。でも、20周年を現役メンバーとして迎えたいというのが心の底にありました。
ソロコンで20周年までいたいと宣言したこともあったし、「そこまでやり切った方が悔いなくAKBという青春を終わらせられるんじゃない?」と、たかみなさんや事務所の方が言ってくれたんです。
たしかに総監督のままだったら「AKB48ってすごい大変だったな」という思い出のまま終わっちゃいそうなのはあって......。なので、アイドルとして楽しく2年ぐらい過ごす時間があってよかったなって、今は思います。
――確かに総監督を譲ってからのほうが楽しそうだなって。
向井地 よく言われます(笑)。
――今のAKB48って、向井地さんから見てどうですか?
向井地 20年もやっているけど、また新たな魅力を持った時代な気がしますよね。まず顔がめっちゃ可愛い。それは本当にすごいことじゃないですか。
――昔はクラスで5番目ぐらいとか言われていましたね。
向井地 今は「ダントツで可愛いじゃん」って。いともも(伊藤百花)とか、あず(八木愛月)とか、しゃべらなくてもいいぐらいなのに、親近感もあるっていうのがいいんです。パフォーマンスも絶対に手を抜かないし、そういうAKB48らしい魂もみんなが持っていて、本当に素敵だなと思います。
昨年、OGの方と共演した中で、今は個性が足りないという話があったと思うんですけど、個性はめっちゃあるんですよ。出し方をまだ見つけてないだけだと思っています。
あと、今は若いコをどんどん入れ替えて押し出していく印象があるんですけど、もうちょっとゆっくりでもいいんじゃないかなって。アイドルを5年ぐらいやらないと、自由に振る舞うのって難しいんですよね。私もそれぐらいでやっと素を出せるようになったので。
もちろん早く目立つコがいてもいいんですけど、5年経ってから、新しく選抜を目指せる道筋があってもいいと思うし、目立てるチャンスがあってもいいなと。
例えば選抜がテレビに出たときに、大盛真歩に田口愛佳に鈴木くるみとか、しゃべるメンバーがいたら面白いじゃないですか。あの頃に負けないぐらい、何が起こるかわからないMCができると思うんです。
若いコに全部任せるんじゃなくて、長くやった先輩だからこその面白さも融合させながら、その背中を見て、若いコたちが5年後に面白くなっていく、みたいな。そんなAKB48になってほしいなっていうのは、今すごく思います。
――どんどん変化していくAKB48ですが、残してほしいことはありますか?
向井地 AKB48という文化を愛する気持ちは残してほしいです。
人はどんどん新しくなっていくし、環境や売り出す部分も「今はダンス」「今は○○」とか、どんどん変わっていくけど、AKB48という文化はずっとメンバー自身が愛し続けてほしいんです。
劇場にしかない空気感とか、劇場でしか歌えないよねっていう曲もあるじゃないですか。「テレビじゃ絶対歌わないけど、劇場だからいい」みたいな。
最近はないですけど「じゃんけん大会」「プロレス」とか、突拍子もなくて面白いことができるのもAKB48らしさですし。
そういう繋いできた文化は引き継いでほしいです。全部をマネしていく必要はないけど、頭の片隅にはずっと入れ続けて欲しい。自由な面白さがAKB48の魅力だと思うので。
――昔は自由な企画も多かったですからね。
向井地 先日、公演が終わった後の反省会で(田口)愛佳が、MCの内容がみんな似ちゃったことを「臨機応変に人と違うことを言うように考えていきましょう」と言ってくれたんです。
やっぱり、ああいうところで正解を言ってもあまり意味がなくて、それよりオンリーワンにならなきゃいけないと思うんですよね。
――みんなが正解ばかり言っても面白くないですもんね。
向井地 そうなんです。私がそれをできていたかはわからないですけど、そんな私でさえ、そう思っているので。
――全員に聞いているんですけど、AKB48が再び東京ドームに立つために必要なことは何だと思いますか?
向井地 今話した「人と違うことをやる」ということにも通ずるんですけど、他のアイドルグループと同じことやっていたら多分負けちゃうのかなと。他と違うことをやり続けなきゃいけないんだと思います。
――「何でもありのAKBですぜ」(チームB推し)という歌詞もありました。
向井地 可愛いグループはたくさんいるし、歌がうまい、ダンスがうまいグループもたくさんいるけど、何でもありが売りなのはAKB48だけじゃないかなって。
流行をマネしすぎなくていいのかなと思うし......。あとは「もっと面白くなろう! 全員バラエティー班になろう」っていう感じですかね(笑)。バラエティーが強いアイドルは絶対に強いですし。
――テレビには欠かせないですよね。卒業後の夢はあるんですか?
向井地 はっきりと卒業後に何をするか決めたわけじゃないですけど、総監督時代にセットリストを作ったり、コンサートのことを考えたり、何かを作るのが好きで楽しかったので、表に出つつも"裏との狭間"みたいなお仕事ができたらいいなって。
――向井地美音プロデュースのアイドルですか?
向井地 人の人生は怖くて背負えないので、アイドルはやらないですけど、イベントプロデュースとかはやってみたいです。脱出ゲームとか。でも、私は夢がAKB48だったので。
――卒コンのタイトルが『私の夢は、AKB48』ですもんね。卒業したら燃え尽きてしまうんじゃないかとも......。
向井地 そこは辞めてみないと何もわからないなと。そこで自分が何を思うのか。専業主婦になる可能性もあるかもしれない。けどそれもまた人生なのかなって。
――どうなるか楽しみですね。最後に向井地さんにとってAKB48とは?
向井地 何度聞かれても、私は「青春」と答えます。この歳になっても本気で笑って泣いて、心が震えるような日々はAKB48に入らなかったら絶対過ごせなかったと思うし。
それは私だけじゃなくて、たぶんファンの方も年齢とか関係なく、AKB48を見ているときに、本気で心を動かして応援してくださっていると思うので。AKB48はいくつになっても青春させてくれるところです。
【連載「なんで令和にAKB48?」は木曜日更新。次回は4月9日、永野芹佳が登場!】

●AKB48
2005年(平成17年)12月8日、秋葉原のAKB48劇場で1期生お披露目。
2025年12月4日に21期生がデビュー!
67thシングル『名残り桜』が好評発売中! 国立代々木競技場第一体育館にて、4月3日(金)「向井地美音卒業コンサート~私の夢は、AKB48~」。4日(土)、5日(日)「AKB48 春コンサート2026 『私たちだけじゃダメですか?』」開催! 最新情報は公式ホームページをチェック。
●向井地美音(むかいち・みおん)
1998年1月29日生まれ、埼玉県出身
身長150cm
Nickname=みーおん
公式X【@mionnn_48】
公式Instagram【@___mion.m】
取材・文/関根弘康 撮影/篠田直人
記事提供元:週プレNEWS
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