日本一水族館に通い詰める研究者が厳選した「死ぬまでに一度行くべき水族館」
イチオシスト

教えてくれた人・泉 貴人氏 (撮影/榊 智朗)
「日本人は水族館の本当のポテンシャルに気づいていない!」そう気炎を上げるのは、海洋生物学者の泉貴人(たかと)氏。
ようやく暖かくなり始め、レジャーの季節がやって来た今、東大落研出身・平成生まれの水族館マニア兼研究者が玄人目線で「行くべき水族館」をべしゃり倒す!
【水族館は〝学術施設〟だ!】皆さんは「水族館」と聞いてどう思うだろうか。子供向けの施設だと思い込んでいないだろうか?
とんでもない! 水族館は貴重な海洋生物を見られる〝開かれた学術施設〟であり、近年は演出や来場者のおもてなしに工夫を凝らしているレジャー施設でもあるのだ。
申し遅れたが、私は海洋生物学者で、およそ160の水族館を巡ってきた水族館マニアでもある。水族館の水槽で新種のイソギンチャクを発見して学術誌に発表したこともあり、最近では「水族館生物学」なる学問分野を立ち上げた。
そんな私が、来たる春休みシーズンに向けて全国のオススメ水族館をお伝えしよう。
まず紹介したいのが、世界的なクラゲの聖地である鶴岡市立加茂水族館(山形県)だ。なんでこんなニッチなところから入るかというと、私はクラゲの専門家でもあるから。
だが、私でもここで展示されているすべてのクラゲの名を言える自信はない。なんせ、今春のリニューアル後はクラゲ100種展示に挑むとかいう、どうかしている(褒め言葉)水族館だからだ。
全展示の4分の3がクラゲで、館内レストランにもクラゲ料理がある。さらに売店のアイスクリームにまでクラゲが入っている徹底ぶり。クラゲの美しい、あるいは楽しい見せ方を熟知しているから、誰が行っても楽しいはずだ。4月1日にリニューアルオープンする予定だから、行くしかない。

紫色の縁取りが美しいパルモ。クラゲが水中を漂うようになる前の段階である「ポリプ」の状態から育てられた

黄色いかさが特徴のパシフィックシーネットル。主に北米の太平洋沿岸に生息し、日本では見られない

クラゲの聖地だけあって、クラゲに特化したガチャまで。売り上げはエサ代など、全額クラゲに還元される

円柱形状の水槽「クラゲチューブ」が数多く並び、クラゲが浮遊する様子を360度、間近から観察できる

およそ1万匹ものミズクラゲが浮遊する直径5mの円形大型水槽「クラゲドリームシアター」は迫力満点!

軽食販売店「御休処 波の華」ではクラゲ入りのクラゲアイスが人気

レストラン「沖海月」のクラゲラーメン。このほか、庄内浜の海の幸を堪能できる料理がたくさん
もし沖縄に行く機会があったら、観光スポットとしても知られる沖縄美(ちゅ)ら海水族館を訪れてほしい。海洋生物に興味がなくても、館内を歩くだけで楽しめる施設だが、巨大ジンベエザメからマイナー深海生物まで、展示も極めて充実している。
自前の無人潜水艇を持っていて、それで生物を採集しているくらいだからね。ちなみに、この水族館でひっそりと飼育されていたリュウグウノゴテンとチュラウミカワリギンチャクが新種のイソギンチャクであることを突き止め、命名したのはほかでもない、この私である。

沖縄美ら海水族館の目玉のひとつである、巨大水槽に展示されるジンベエザメ。魚類の中では最大の種で、成長すると10~12mにもなる

チュラウミカワリギンチャクは、沖縄美ら海水族館で約15年間飼育された後、泉先生によって新種だったことが判明した

こちらも泉先生が2023年に新種として報告したリュウグウノゴテン。色が沖縄の宮殿を連想させることから命名された
さて、外せないのが鳥羽(とば)水族館(三重県)だ。ここは日本一フリーダムな水族館で、充実度もナンバーワン。魚類、哺乳類、鳥類となんでもいる。たくさんの生物を見たいなら最強の水族館だ。
大規模な水族館には普通ある順路指定がなぜかないので、好きな所から見られるのもいい。しかもラッコの「キラ」と「メイ」やスナドリネコみたいに、人気がある動物が多いから、誰でも楽しめる。
そうだ、鳥羽水族館に行ったら、ぜひテンプライソギンチャクを見てほしい。名づけたのは私なのだが、左ページの写真を見れば、なぜこんな名前にしたのか納得してもらえると思う。

ラッコのキラ(左)とメイ(右)。1日3回のお食事タイムは大人気だ(写真提供/鳥羽水族館)

変わった生物を集めた「へんな生きもの研究所」。内装も古い研究所風に仕上げてある(写真提供/鳥羽水族館)

エビの天ぷらそっくりであることから泉先生に名づけられた「テンプライソギンチャク」(写真提供/鳥羽水族館)
魅力的な水族館はまだまだある。例えば〝淡水魚水族館〟である滋賀県立琵琶湖博物館は、固有種の巨大なビワコオオナマズをはじめ、琵琶湖を丸ごと体感できる。博物館なので水生生物以外も展示しているが、水族館として見てもかなり巨大で飽きないぞ。淡水魚好きならぜひ。

琵琶湖と、琵琶湖から流出する淀川水系だけに生息するビワコオオナマズ。体長は最大で120㎝にも達する

日本の淡水魚水族館としては最大級の「トンネル水槽」。琵琶湖の魚たちが泳ぐ様子を下から眺められる
オリジナリティならむろと廃校水族館(高知県)が最高だ。なんせ、使われなくなった小学校を丸ごと水族館にしちゃったからね。しかも単に「廃校に水槽を配置しました」というレベルじゃなくて、跳び箱を使って展示をしていたり、懐かしの手洗い場には触れるナマコがいたり、さらに屋外プールをウミガメやサメが泳いでいたりする。
生物の展示以外にも昔懐かしの教科書が置いてあったりと演出も凝っていて、大人こそ楽しめるオンリーワンの水族館だ。

児童たちがかつて泳いだ25mプールを、サメやウミガメが悠々と泳ぐ屋外大水槽。ここでしか見られない光景だ

懐かしの手洗い場を利用したタッチプールにはイセエビやナマコがいて、触れることもできる

廃校をリノベしただけあって、小学校を想起させる演出があちこちに。これは跳び箱を使った水槽
東京都の葛西臨海水族園は、観覧車まである葛西臨海公園内にあってアクセスは抜群。だから親子連れやデートのカップルも多いんだが、魚類やタコ・イカなどの無脊椎動物が充実していて、実は通好みの水族館でもある。
また、世界の7つの海(南太平洋・北太平洋・南大西洋・北大西洋・南氷洋・北氷洋・インド洋)の生物をコンプリートしている水族館は、日本ではここだけだ。
高級すしネタとして有名なクロマグロも目玉のひとつだが、飼育しているドーナツ形水槽は日本3番目のデカさだし、そもそも飼育難易度が高いクロマグロを展示している時点ですごい。クロマグロって水質変化にも刺激にも弱いから、実は繊細なんだよね。

目玉のひとつであるクロマグロが群れで泳ぐ様子を観察できる、2200tのドーナツ形水槽「アクアシアター」

「海鳥の生態」コーナーにいるエトピリカは飛ぶだけではなく、水中を泳ぐこともできる

「北極・南極の海」コーナーのマナニア・アトランティカ。浮遊せず、岩などにくっついて暮らす珍しいクラゲだ

ホンマグロとも呼ばれるクロマグロ。豊洲市場の今年の初競りでは5億円以上の価格で落札された高級魚だ
オーシャンビューの美しさなら、新潟県の上越市立水族博物館 うみがたりは外せない。日本海を背景に大水槽を眺められる「日本海テラス」はSNS映えすること間違いなし。館内では日本海側の水族館としては唯一の海中トンネル「うみがたりチューブ」を楽しめたりと、見どころも多い。
そうそう、クラゲの展示が美しいのもこの水族館のいいところだ。クラゲって、ライティングによっては宝石みたいに見えるのよ。

日本海に面する大水槽「日本海テラス」。水槽の上部が海面と一体になって見える

1階にある「マゼランペンギンミュージアム」には、100羽を超えるペンギンたちがいる。飼育数は日本一だ

海中トンネル「うみがたりチューブ」では360度アクリルガラスの中から日本海の魚を眺めることができる
個性的なところとしては、室蘭民報みんなの水族館(北海道)がある。ここは、ややこぢんまりとしてはいるんだが、なんと、多くの展示板に職員による「食リポ」が書かれている。
もちろん展示されている生物の食リポだ。北の海にはおいしい生物が多いので、食欲をそそられる水族館だな。展示している生き物の味を語るってどうなの?と思う向きもありそうだが、おいしそうに見えるということは管理状態が良いことを意味しているので、実は水族館にとっては最高の褒め言葉なのよ。

北海道最古の水族館。両側に設置型の水槽が隙間なく並び、北海道になじみのある水生生物が拝める

展示板には生物の解説だけではなく、飼育員による詳細な食リポまでが記されているのもこの水族館の特徴だ
どうですか、水族館に行きたくなってきたでしょ? 私としては、まずは葛西臨海水族園や沖縄美ら海水族館といったメジャーで大きめなところを勧めたい。初心者でもマニアでも楽しめるからだ。
普通の趣味だと、マニアほどメジャーどころを嫌う傾向がある気がするけど、水族館には当てはまらない。大規模であるほど生物の数が多く、それだけ面白いヤツも潜んでいるからだ。
メジャーで大きな水族館に行き、自分だけのお気に入り生物を楽しむのが、真の水族館マニアだとも言える。もちろん、日本に山ほどある小規模水族館も、それぞれ個性があって楽しいぞ。
うーむ、しかし改めて、水族館を語るのは楽しいな。紹介したいところはまだまだあるからあと200ページくらい欲しいんだけど、ダメですか?
【鶴岡市立加茂水族館】山形県鶴岡市今泉字大久保657-1
《電話番号》0235-33-3036
《アクセス》JR羽越本線「鶴岡」からバスで約40分
《営業時間》9:00~17:00(16:00入館締め切り)
《休館日》なし(3月31日まで臨時休館中)
《入館料金》一般1500円、小中学生500円、幼児無料

世界一のクラゲ水族館にはクラゲのアイスまである!【鶴岡市立加茂水族館】
沖縄県国頭郡本部町石川 424
《電話番号》0980-48-3748
《アクセス》那覇空港から高速バスで約2時間30分
《営業時間》8:30~18:30(17:30入館締め切り)
《休館日》なし(台風などによる臨時休館を除く)
《入館料金》一般2180円、高校生1440円、小中学生710円、6歳未満無料
2027年3月31日まで休館の予定なし(台風等による臨時休館を除く)。詳細はHPを参照 【https://churaumi.okinawa/guide/hour/】
(写真提供/国営沖縄記念公園(海洋博公園):沖縄美ら海水族館)

ここで発見された新種のイソギンチャクが2種も!【沖縄美ら海水族館】(撮影/泉 貴人)
三重県鳥羽市鳥羽3-3-6
《電話番号》0599-25-2555
《アクセス》JR参宮線、近鉄鳥羽線・志摩線「鳥羽」から徒歩約10分
《営業時間》9:30~17:00(16:00入館締め切り) *時期により変動あり
《休館日》なし
《入館料金》一般2800円、小中学生1600円、幼児800円、3歳未満無料

魚に哺乳類、爬虫類、鳥類、イソギンチャクまでなんでもいる!【鳥羽水族館】(写真提供/鳥羽水族館)
滋賀県草津市下物町1091
《電話番号》077-568-4811
《アクセス》JR琵琶湖線「草津」からバスで約25分
《営業時間》9:30~17:00(16:00入館締め切り)
《休館日》月曜日(祝日の場合は開館)*臨時休館あり
《入館料金》【常設展示】一般840円、大学生470円、高校生・18歳未満・65歳以上の県内在住者無料
【企画展示】一般340円、大学生270円、小中高校生・18歳未満170円、65歳以上340円
(写真提供/滋賀県立琵琶湖博物館)

琵琶湖をそのまま切り取った淡水魚水族館で大ナマズが待つ【滋賀県立琵琶湖博物館】
高知県室戸市室戸岬町533ー2
《電話番号》0887-22-0815
《アクセス》高知東部交通バス安芸甲浦線
「むろと廃校水族館前」すぐ
《営業時間》9:00~18:00(4~9月)、9:00~17:00(10~3月) 《休館日》なし
《入館料金》一般600円、小中学生300円、幼児無料 *市内在住者割引あり

跳び箱の中で魚が泳ぎプールでサメがのんびり【むろと廃校水族館】
東京都江戸川区臨海町6-2-3
《電話番号》03-3869-5152
《アクセス》JR京葉線「葛西臨海公園」徒歩約5分
《営業時間》9:30~17:00(16:00入館締め切り)
《休館日》水曜日(祝日の場合は翌日が休館)、年末年始(12月29日~1月1日)
《入館料金》一般700円、中学生250円、65歳以上350円、小学生以下、都内在住・在学の中学生無料
(写真提供/(公財)東京動物園協会)

高級魚クロマグロだけじゃないマニアも楽しめる充実した水族館【葛西臨海水族園】
新潟県上越市五智2-15-15
《電話番号》025-543-2449
《アクセス》JR信越本線「直江津」徒歩約15分
《営業時間》10:00~17:00(16:30入館締め切り)*季節によって変動
《休館日》なし*臨時休館あり
《入館料金》一般1800円、高校生1100円、小中学生900円、幼児500円、65歳以上1500円、4歳未満無料 *2026年4月1日以降入館料改定

日本海に臨む美しすぎる大水槽【上越市立水族博物館 うみがたり】
北海道室蘭市祝津町3-3-12
《電話番号》0143-27-1638
《アクセス》道南バス「みたら・水族館前」
《営業時間》9:30~16:30 *GW・お盆は9:30~17:00
《休館日》冬季(例年、4月下旬~10月中旬のみ開館)
《入館料金》一般400円、高校生200円、中学生以下の市内在住者・0歳児無料、1歳~中学生100円
(写真提供/室蘭民報みんなの水族館<市立室蘭水族館>)

北海道最古の水族館は職員による食リポが充実!【室蘭民報 みんなの水族館】
●泉 貴人(いずみ・たかと)
1991年生まれ、千葉県船橋市出身。福山大学生命工学部海洋生物科学科講師、海洋系統分類学研究室主宰。イソギンチャクの新種発見数は日本人歴代トップ(26種)。東京大学落語研究会で磨いた話術を生かして、YouTube チャンネル『水族館マスター・クラゲさんラボ』で精力的にアウトリーチ活動を行なう。著書に『カラー版 水族館のひみつ 海洋生物学者が教える水族館のきらめき』(中公新書ラクレ)などがある
*情報は2月28日時点で、料金はすべて税込。最新の情報はホームページなどで確認してください
取材・文/佐藤 喬
記事提供元:週プレNEWS
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