中道改革連合新代表・小川淳也の実像。延べ数十時間にも及ぶ〝デスマッチ取材〟を重ねたフリーライター・和田靜香が語る
イチオシスト

2月13日、中道改革連合の新たな代表に選ばれた小川淳也氏
衆院選で議席を3分の1以下に減らした「中道改革連合」。そんなどん底の中、代表に就いた小川淳也とは何者なのか。過去にはドキュメンタリー映画の題材にもなるなど、たびたび注目を集めてきたその人物像や魅力を、数十時間にわたり取材を重ねたライター・和田靜香が語る。
【「和田さんの質問はかわいいね~!」】新党を結成して臨んだ先の衆院選で惨敗を喫した「中道改革連合」。
野田佳彦、斉藤鉄夫の両共同代表の辞任を受け、2月13日の代表選で新たな代表に選出されたのが旧立憲民主党出身の小川淳也(54歳)だ。
辛うじて野党第1党の座を守ったものの、衆院の議席数は167議席から49議席と、3分の1以下に激減。党の存続さえ危ぶむ声がある中での代表就任となったが、そんな彼は〝沈みゆく泥舟の船長〟でしかないのか? それとも、〝復活を導く希望の星〟なのか? 政治家・小川淳也とはどのような人物なのか?
2021年に小川淳也へのインタビューを対談形式でまとめた『時給はいつも最低賃金、これって私のせいですか? 国会議員に聞いてみた。』を出版したライターの和田靜香さんに聞いた!
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――和田さんが21年に小川淳也さんにインタビューをして本を書こうと思われたきっかけは?
和田 私が小川さんに最初に会ったのは20年7月のこと。小川さんを題材にした大島新(あらた)監督のドキュメンタリー映画『なぜ君は総理大臣になれないのか』にまつわるインタビュー取材でした。
インタビューをするに当たって、事前に質問を送ってくださいと言われたんですけど、当時の私は政治のこととかほとんど知らなくて。正直、政治家に何を聞いたらいいかわからなかったので「政治家ってやっぱり威張っているんですか?」とか「友達はいますか?」とか「選挙で東京と地元を行ったり来たりするのは参勤交代みたいなこと?」みたいな素人丸出しの質問を送っちゃったんです(笑)。
そして生まれて初めて議員会館に行って、少し緊張しながら小川さんに会ったら、開口一番「和田さんの質問はかわいいねえ~!」って言われたんです。上から目線でバカにする感じではなく、本気でそう言っている。それに救われたというか、少しホッとしたことを覚えています。
その頃、ちょうど東京都知事選で小池百合子さんが圧勝したあたりで。私は対抗馬の宇都宮健児さんを応援していて、チラシのポスティングまでしていたんですけど、結果はボロ負け。それで一種の諦めを感じていました。
私がその話をしたら、小川さんは「和田さん、それでも諦めちゃダメなんだよ。1票の力を過大に考えても過小に考えてもいけないけれど、誰にも同じように与えられた1票の力を諦めずに信じ続けることが大事なんだ」と何度も熱く語ってくれて。
小川さんが「諦めちゃいけない。絶望しそうになっても、そこからまた頑張ることが大事だ」と鼓舞してくれたことは、当時コロナ禍でおむすび屋さんのバイトをクビになり、明日がまったく見えない、どう生きていけばいいのかわからない......と、人生に絶望しかけていた55歳の私にとって、大きなことだったんです。

フリーライター・和田靜香氏
――その後、和田さんは本を作るためにインタビューを重ねるわけですが、取材を続ける中で小川さんの印象は変わりましたか?
和田 1回目の取材では、私も質問を十分に準備できていなかったし、小川さんも議会運営委員会などで多忙だったようで、正直、熱が入っていない印象でした。
そこで、本気になってもらいたくて、2回目のテーマだった「財政」について事前に本や資料を読み込み、自分なりにまとめた資料を小川さんに送ったんです。
すると熱意が伝わったのか、小川さんも突然スイッチが入り、2回目はいきなり3時間も話してくれたんです。
――多忙な政治家が、支援者でも政治記者でもないライター相手に3時間ってすごいですね!
和田 そこから本当に私と小川さんのバトルが始まりました。小川さんは〝デスマッチ〟って呼んでいましたけど(笑)。
もちろん自分なりに勉強して準備したとはいえ、私は一般会計と特別会計の違いもわからないようなレベルですから、そうやって3時間話されてもわからないことだらけなわけです。
「ひえー」とか「頭ついていかない」とか言いながら茫然とする私を相手に、小川さんは「和田さんにわかってもらうのは至難の業だ~」とか「和田さんはド厚かましいなあ~」と言いながらも、汗だくになって工夫しながらわかりやすく伝えようとしてくれた。
そういうところは、私が漠然と抱いていた政治家のイメージとは違うなと感じました。小川さんはよく「和田さんに伝えられるようにならないと、国民にも伝えられない」って言っていました。
――ちなみに小川さんへのインタビュー取材は合計で何回ぐらいされたんですか?
和田 2、3時間くらいの長い取材は4、5回ですが、細かく10~20分くらい話しに行くことがたくさんありましたね。期間的には20年10月から21年7月頃までです。
――取材で対話を重ねる中で小川さんと意見が対立することもありましたか?
和田 もちろんありました。特に印象に残っているのは日本の住宅政策に関して話したときのことです。
私が「家賃が高くて払えない。なんで日本は家賃補助も、公営住宅も増やさないんだ!」と怒ったんですけど、小川さんは「いや、それは違う」と家賃補助は必要ないという意見で対立しました。
ところが翌週にまた会いに行くと、小川さんは自分で住宅政策を調べ直してきていて、こう言ったんです。
「和田さん、ごめん。僕は日本もちゃんと住宅政策をやっていると思っていたけれど、改めて勉強すると、日本の住宅政策の大半は持ち家を前提とした経済政策で、和田さんが言うように、賃貸で住んでいる人への支援はほとんどなかった。その問題を僕は全然わかってなかった」と。

2021年の衆院選で当選した際の写真。本の執筆後も、和田さんは小川氏と、秘書(写真右)が止めるまで、たびたび熱い"デスマッチ"を繰り広げることがあるという
――政治家が素直に謝るって新鮮ですね......。
和田 本当にそうで「政治家って謝るんだ」って思いました(笑)。何度も取材したけど、小川さんと「仲良くなった」とか「友達になった」という感じはないです。
あえて言えば、いい取組相手というのかな。私、相撲が好きなんですけど、お互いに尊敬してなければいい相撲は取れないじゃないですか。
もちろん、相撲で言えば、私なんか序二段以下で、小川さんはすでに幕内の上位とか、三役も狙えるレベルだったけど(笑)。そういう相手でも真剣に、敬意を持って付き合える人なんですよね。
【高市首相との相性は?】――今回、小川さんが「中道」の代表になりました。衆院選の惨敗を受けての、文字どおり〝どん底〟からのスタートですが、今回の代表就任を和田さんはどんなふうに見ていますか?
和田 中道はどん底にいると思いますけど、私は、小川さんにとっては逆にいいタイミングじゃないかと思うんです。
小川さんって「どん底が似合う」というのかな(笑)。最初の取材で私に語っていたことにもつながるけれど、選挙で負けたりしても諦めずに這い上がってきた人じゃないですか。
自民党にはキャラの立った高市さんという、新しいことをやってくれそうだと皆が期待を寄せる女性のリーダーがいるわけで。それに対抗するには、野党の側にもキャラの立った決して諦めないリーダーが必要だと思うんですよね。

中道改革連合を訪れた高市早苗首相は、小川淳也氏に「(小川のドキュメンタリー)映画を夫婦で2回も見た」と声をかけた
――高市さんと張り合えるぐらい、小川さんのキャラは立っていますか?
和田 経歴だけを見ると東大卒の元キャリア官僚という典型的なエリートに見えるかもしれないけれど、小川さんって実のところ〝天然ちゃん〟なんじゃないかと思います。
偉い人を前にしても、私のような相手を前にしても、態度が変わらない。良く言えば軸がブレない、悪く言えば自然体でしかいられない人なんです。「俺は俺の道を行く!」と力んでいるわけではなく、むしろ「どうしても俺は俺でしかいられないんだよねぇ......」という感じで。
私はそれって小川さんの強みというか、〝人たらし〟的な部分にもつながっていると思っていて、政治家としては珍しいかもしれないけれど、そういう素のままで対峙してくる相手って意外と怖いじゃないですか(笑)。
――高市さんとの相性はどうなんでしょう?
和田 衆院選に大勝した高市さんが中道に挨拶に行ったとき、高市さんが小川さんのドキュメンタリー映画を「夫婦で2回も見た」って言っていて。だからなんか高市さんも小川さんをリスペクトして見ているような気がします。映画俳優を見るような目線というか(笑)。
小川さんはエモーショナルな面がある一方で、例えば対談で私が怒っていると、「僕は怒るんじゃなくて、問題をどうやって解決するかを考えるのが仕事だから」と言い続ける。自分の中に政治家として考える「この国のグランドデザイン」を持っている人でもある。
確かに、どん底からのスタートかもしれませんが、だからこそ小川さんには合っている。いろいろな意味で高市さんとは「対照的なキャラ」でもあるので、私は面白いんじゃないかと思っています。

1971年生まれ、香川県出身。東京大学法学部卒業後、自治省(現総務省)に入省。2005年に衆院初当選
●和田靜香(わだ・しずか)
フリーライター。1965年生まれ。著書に『時給はいつも最低賃金、これって私のせいですか? 国会議員に聞いてみた。』『選挙活動、ビラ配りからやってみた。「香川1区」密着日記』など
取材・文/川喜田 研 写真/時事通信社
記事提供元:週プレNEWS
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