事故の芽つみ取るには? 鉄道工学の重鎮がトラブル多発に警鐘 学生シンポで特別講演(東京都千代田区)
イチオシスト

最近の鉄道業界で少々気になるのがトラブルの多発傾向だ。
鉄道界のご意見番、東京大学の曽根悟名誉教授が2026年2月21日、東京・お茶の水の日本大学駿河台キャンパスで開かれた鉄道技術シンポジウム「NU-Rail2026」で特別講演。「鉄道運行劣化防止に向けての変革提案」と題し、国の運輸安全委員会の機能強化や日本では実質不可能な複線区間での輸送障害時の単線双方向運転を提起した。
曽根教授は鉄道工学の第一人者で、東大で多くの人材を送り出した後、定年退官後の工学院大学では在来線と新幹線の中間に位置する中速鉄道(中速新幹線)を提唱する。さらに、2005~2013年にJR西日本の社外取締役を務めたほか、鉄道趣味誌にもファン目線の解説記事を数多く寄稿してきた。
特別講演は、「最近のトラブル要因の一つが、鉄道システムの進化にあるのでは」が発想の原点。「AI(人工知能)などで鉄道システムの心臓部は〝ブラックボックス化〟、トラブル時発生原因の解明を分かりにくくしている」と警鐘を鳴らした。
講演で提起したのが運輸安全委の機能強化。国の第三者機関の運輸安全委は2001年発足の航空・鉄道事故調査委員会がルーツで、事故調の旧称に象徴されるように主な役割は原因解明に限定され、再発防止機能は十分といえない。
具体策として曽根教授は、運輸安全委が調査するトラブルの範囲を拡大。類似事例にも対象を広げて、再発防止策が業界全体に広がることを理想とした。
続く複線区間の運転方法では、「複線区間は左側通行の原則にしばられ、反対方向へは運転できない」という日本の独自ルールの再考を促した。
複線区間で上下線のどちらかに輸送障害が発生した場合、日本の鉄道は一方向運転を前提に信号システムなどが組まれるため、長時間の運転見合わせを強いられる。
曽根教授は「世界の多くの国は、複線区間でも双方向の単線運転が可能。日本も世界基準の運転方式を採用すれば、長時間の全線運休は避けられるだろう」と持論を展開した。
曽根教授が特別講演したのは「NU-Rail2026」。2008年から継続開催される鉄道工学を学ぶ学生が参加する発表会で、14回目の今回は学生から12件の成果発表があった。
記事:上里夏生
記事提供元:旅とおでかけ 鉄道チャンネル
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