立憲⇒中道の落選議員たちが明かす"惨敗理由"や"小川新代表"への思い「党執行部を責めません。だけど...」
イチオシスト

左から中谷一馬氏(神奈川7区)、石川香織氏(北海道11区)、宗野創氏(神奈川18区)
野党大敗となった先月の総選挙。特にダメージを被ったのが中道改革連合に合流した旧立憲民主党の議員たちで、144議席から21議席へと8割以上が落選の憂き目に遭った。
今回その中から、30代、40代の若手が集合! 新党結成のドタバタに巻き込まれた厳しい選挙戦を振り返るとともに、ボロボロになった中道の近未来についても本音で語り合ってもらった!
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【みんな、いなくなった】――予測を超えた高市早苗首相の解散宣言でした。あまりの唐突さに、野党サイドからは「闇夜にいきなり、背後から金属バットで襲われたようなもの」という恨み節も聞こえてきます。
中谷一馬(以下、中谷) 本来なら、国会を開いて100兆円を超える本予算を審議しなくちゃいけない大切な時期で、普通の為政者なら予算編成を最優先し、解散・総選挙なんてしない。それを高市首相はあっさりやってしまった。びっくりです。
石川香織(以下、石川) 私もまさかと考えていたクチ。あるとしても予算が成立した後、今年4月前後だろうなと予想していました。
ただ、委員として参加していた今年最初の衆院議院運営委員会の席で、木原稔官房長官の発言を聞いて、そのまさかがありうるなと思わされることがあって。
――官房長官はなんと言ったんですか?
石川 1月9日の読売新聞の「首相が衆院解散を検討」という報道を受けて、総務省が翌10日に自治体の選挙管理委員会に選挙事務の準備を急ぐようにと、至急の通達を出したんです。そこで野党側委員が「何を根拠にそんな通達を出したのか?」と、木原官房長官に問いただしたところ、返ってきたのが「読売の報道を受けて出した」という答え。
一メディアの報道で総務省が自治体に「選挙準備を急げ」なんて公文書を出しますか? ありえませんよね。議院運営委員会で政府側から真っ先に提示されるはずの政府予算の説明もなかったし、これは高市首相、本気で不意打ち解散を仕掛けてくるかもしれないと身構えました。

――準備不足の上に高市フィーバーの烈風。野党大敗は当然の帰結だったかもしれません。
中谷 本当にすさまじかった。昨年末から選挙事務所や選挙カーの準備、広報物の作製、さらにはSNS発信など、選挙準備は進めていたんです。活動量では小選挙区で戦う自民候補を上回っているという自負はありました。ただ、それでも勝てなかった。おそらく、もう100万枚ビラを配ったとしても今回は勝てなかったでしょうね。
石川 政策とか人柄とか、これまでの実績とか、そんなものとはまったく関係ないところで選挙戦が進んだって感じでしたよね。「自民の候補者に負けた」というより、「高市首相に負けた」といった感触です。タスキに首相の大きな顔写真を張りつけて遊説する自民の候補もいましたね。
宗野創(以下、宗野) 私は立憲民主党青年局の事務局長代理として、ネットでどんな発信をすれば、若者世代に訴求するか、総点検の真っ最中でした。実際、昨年の参議院選挙に比べると、YouTubeの発信量なども格段に増えていたはずです。
それでも高市首相の人気にはまるでかなわなかった。2024年の衆議院選挙で、立憲は39人が初当選を果たしたのですが、その1回生は、今回の選挙で全員が落選してしまいました。
【新党結成への戸惑い】――それにしても立憲と公明党による新党・中道改革連合(以下、中道)の結成には驚きました。
石川 結党のプロセスについて、今も正式な説明はありません。新党が立ち上がったという結論を聞かされただけです。立憲、公明による選挙協力、統一名簿作りなど、さまざまなチョイスがある中で、新党は最も予想外のことでした。まるで交際期間ゼロで結婚したカップルみたいだな、と思いました。
しかも、公明は選挙区で戦ってきた相手です。その公明と一緒になることをこれまで支援してくれた地方議員や支持者が納得してくれるかどうか、最後まで悩みました。一時は無所属での出馬も検討したほどです。
宗野 私も最初は悩みました。公明との新党結成を提案されたのは1月15日の両院議員総会でのことで、その時点では新党の綱領がなく、判断のしようがなかったんです。それから4日後の19日に、やっと綱領を読むことができて、これなら一緒に国会で活動できると新党合流に同意しました。公示日(1月27日)が迫っていたこともありギリギリの判断でしたね。
ただ支持者の中には、立憲は本来ボトムアップの党なのに、自分たちの知らないところでトップダウンの決定が下ったことに不満な人がいたことも事実です。私は有権者の方たちとLINEグループでも交流していたのですが、新党結成を機に、何も言わず退会していく人もいました。

中谷 私が新党を含む連携の話を聞いたのは1月13日の立憲常任幹事会の席でしたね。そのときは「立憲、公明だけでなく、国民民主を加えた3党連携を視野に入れている」という説明で、この3党がまとまるなら、政権交代もありうるという期待もありました。しかし、国民民主との連携は実現せず、立憲、公明2党による新党スタートとなってしまい、残念ながら信任を得るには未完成でした。
石川 ただ、今回の落選について、新党結成の決定をした執行部の責任にするつもりはありません。責任はあくまでも選挙で勝てなかった私にあると考えています。
【ゼロから自分を見つめ直したい】――316議席を得た高市・自民は国会で盤石の体制。次の衆院選は任期満了となる4年後の30年になるかもしれません。その間、長い浪人生活を強いられますが、どういった活動をする予定ですか?
石川 中道を掲げる新党が日本の政治シーンにプラスになりうると今も思っています。なので、このまま中道所属の前議員として、北海道11区で政治活動を続けるつもりです。
ただ、中道に合流していない立憲所属の参院議員、地方議員に「こちらに来て一緒にやろう」と呼びかける環境はまだ整っていません。中道で共にがんばろう、というテンションになれるかどうかは、この1年くらいの地元での自分の活動にかかっていると覚悟しています。
宗野 今は"フラット"な状態というのが正直なところ。要は白紙です。どんな逆風でも動じないよう、自分の政策の訴求力をもう一度検証しないとだめだという思いがある。少し冷静になって、自分をグレードアップする時間が必要だなと感じています。
中谷 私もまったくの白紙状態です。18歳で政治家を志し、27歳で神奈川県政史上最年少議員になってから16年間、政治の世界で生きてきました。この16年間の街頭活動時間は延べ7000時間。手前みそですが、地元ではドラえもんとかキティちゃん並みに名前を覚えてもらっていました。
それだけ地域に浸透していても、今回の選挙では信任されなかった。時代に求められなかった政治家が活動を続けるべきか否かを自問自答しています。ふたりの娘もまだ幼いですし、職も探さないといけない。だからこそ、白紙で家族と自分にじっくり向き合いながら、今後の人生の歩み方を考えています。
【高市一強への懸念】――2月18日に召集された特別国会で、高市首相は「2026年度本予算の年度内(3月末)成立を諦めない」と話しました。そのため、自民は例年70~80時間ほどの衆院審議時間を50時間台に短縮し、3月13日までの採決を提案しています。中道など野党は強く反発しましたが、応じる気配は見えません。
中谷 やはり、与野党の議席数のバランスは大事だなと思います。例えば昨年末にガソリン税の暫定税率が廃止されましたが、これも国会がハングパーラメント(どの政党も議会の過半数を獲得できない状態)だったからこそ、実現したこと。与野党拮抗下では野党の協力がないと、与党は法律を通せない。だから高市首相も野党が主張してきたガソリンの暫定税率廃止などの減税案をのんできたんです。
というか、先の衆院選で、自民党はガソリン暫定税率の廃止を、自分たちが実現させたかのように喧伝(けんでん)していましたが、野党7案を廃案に追い込んだのは自民党でしたから。あれはどうかと思いました。
宗野 今の"一強国会"のような状態になると、数の力でおかしな法律が通りかねないんですよね。
例えば、社会保障費削減策として自民が持ち出してきた高額療養費制度の見直しもそのひとつです。ひと月にかかった医療費が一定の限度額を超えると、国や地方自治体がその超過分を支給してくれる、低所得者でも高度な医療が受けられる制度です。それを自民は改悪しようとしてきたけど、国会がハングパーラメントだったからこそ、野党の抵抗で一時凍結になっていた。
ところが、今回の高市自民大勝で、それがまた電子レンジに投げ込まれて解凍されようとしている。そのほかにも介護報酬の改定、現在無料(保険給付)のケアマネジメントの有料化、病院等の窓口負担率の引き上げなど、野党が反対してきた一連の値上げ策が高市政権下で一気に進んでしまう危険性があります。
中谷 ネット投票法案や18歳から立候補できる被選挙権年齢引き下げ法案を立憲でまとめ、衆院に提出したんだけど、これも高市一強国会では黙殺されることになるんだろうな。本当に無念です。
【小川淳也新代表にやってほしいこと】――小川淳也新代表の下、中道は再スタートを切りました。新体制に"アドバイス"をするとしたら?
宗野 まずは情報発信の戦略について抜本的に見直すべきです。2月の総選挙で改めて痛感しましたが、地道な辻立ちやポスター張りだけではやはり、今の選挙は勝てません。いかにスマホを通して、有権者の方に浸透するかが問われているんだと思います。SNSなどを通して広範に、上手にアピールしなければ。
中谷 同時にウソも100回繰り返せば、真実かのように世論形成されてしまうのがネットの世界です。事実として正しいことよりも、刺激的で陰謀論めいた言説のほうがずっと拡散しやすい。そんなフェイクにも的確に対処しないといけない。ネット選挙にどう向き合うか、対策を急ぐべきですね。

石川 有能な人材を使い切れていないもどかしさもありました。人事ももっと冒険してよかった。
中谷 確かに、人事では旧民主党時代の、いわゆる「昔見た顔」ばかりが登用される傾向があったことは否めません。執行部の5人が「5爺」なんてネットで揶揄(やゆ)されました。私は、立憲から吉田はるみさん、公明から岡本三成(みつなり)さんといった若々しい男女のコンビを登用して挑むべきだと提案しましたが、実現することはありませんでした。
宗野 そう考えると、新代表に小川淳也さんが選出されたことは悪くないですよね。54歳と若いし、何よりもあの熱量は与党の政治家を圧倒できると思う。
そもそも、中道だけで政権交代を目指す必要なんてないんです。幅広い他党と組んで政権を担うと頭を切り替え、その枠組みにふさわしい政策を考えるようになれば、間違いなく訴求力が生まれ、支持率も上がってくると思います。
石川 これだけ大敗した直後に代表を引き受けるんだから、そのプレッシャーは並大抵ではないはず。でも、どうせ崖っぷちなんだから、失敗したらどうしようなんて恐れる必要はないんですよ。
宗野 小川さんは「話が長すぎる」ってよく批判されるけど、それも熱量の高さからきていることです。だったら、変に改めようとせず、批判を逆手にとってもっともっと長く話せばいい。例えば、「6時間耐久演説会」とかぶち上げて、ネットで発信してもよいのでは(笑)。
中谷 淳也さんの側近中の側近だった私としては、周囲に遠慮しないで、自身のビジョンをしっかり打ち出してほしいと思います。ベンチャー政党として突き抜けたことをやってほしいですね。
●石川香織 Kaori ISHIKAWA
北海道11区/当選回数 3回
1984年生まれ、神奈川県出身。日本BS放送(BS11)のアナウンサーを経て、2011年10月に当時、新党大地所属だった石川知裕衆議院議員(25年死去)と結婚。同議員の選挙区であった北海道11区内の帯広市へ移住する。政治資金規正法違反で有罪判決を受け13年に議員辞職した夫の地盤を引き継ぎ、17年の衆議院選挙において民進党から北海道11区に立候補、初当選を果たす。立憲民主党が与党とは異なる選択肢を提示し、政権担当能力をアピールすることなどを目的に設立した「次の内閣」において、野田佳彦内閣のネクスト地方創生・消費者・沖縄北方担当大臣に就任した経歴を持つ、若手女性議員のホープである
●宗野創 Hajime SOHNO
神奈川18区/当選回数 1回
1993年生まれ、神奈川県出身。大学を卒業後、三井住友銀行に入行。中小企業融資や個人資産の相談業務、中小企業融資営業の経験をする中で日本人の家計の安定を目指し政治家を志すようになる。2020年に松下政経塾に入塾(第41期生)。24年、立憲民主党から神奈川18区総支部長に公認され、同年10月の衆議院選挙で初当選。厚生労働委員、党政調会長補佐などを務めた
●中谷一馬 Kazuma NAKATANI
神奈川7区/当選回数 3回
1983年生まれ、神奈川県出身。不良少年グループのリーダーだったが、一念発起して通信制の高校に21歳で卒業。モバイルオンラインゲーム会社「gumi」の創業メンバーになった後、2011年の統一地方選神奈川県議会議員選挙に立候補し、県政史上最年少の27歳で当選。17年の衆議院選挙に神奈川7区から立憲民主党公認で立候補し、初当選(比例復活)。野党随一のデジタル識者として知られ、18年にはブロックチェーン政策に関する国際会議に日本の国会議員代表として出席。21年には、立憲民主と国民民主が共同提出したインターネット投票推進法案の筆頭提出者になった
撮影/榊 智朗
記事提供元:週プレNEWS
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