カエル顔の小さな働き者 「ダイハツ・ミゼットII」今日も元気に出勤中

イチオシスト

1996年にダイハツが発売した「ミゼットII」は、往年の三輪ミゼットと真逆の発想から生まれた軽トラックです。カエルのような丸いヘッドライトと極小ボディは、思わず二度見するほど愛嬌たっぷり。街角に止まるだけで主役級の存在感を放ちます。今回は札幌市・厚別区にある「厚別パークボウル」の協力のもと、ミゼットIIの魅力を紹介します。
厚別パークボウル
https://apb-parkbowl.com
高度経済成長を支えた立役者

初代ミゼットの誕生は、高度経済成長のまっただ中の1957年。時代は「安く・小さく・誰でも扱える」商用車が、町のあちこちで切実に求められていました。個人商店や町工場にとって、小回りが利いて維持費も抑えられる“商売の足”は、まさに生命線でした。

そこでダイハツが着目したのが、三輪の超小型商用車というジャンルです。1950年代前半に登場した三輪トラックの流れを発展させつつ、構造をさらに簡素化し、ボディも徹底的にコンパクト化しました。無駄を削ぎ落とすことで価格を抑え、多くの商店主が手にできる現実的な一台として世に送り出されました。

軽量ボディに小排気量エンジン、当初は1人乗りという割り切り設計(のちに2人乗り化)。必要十分を徹底し、分割払いの普及も追い風となって、ミゼットは日本中の街を駆け巡りました。しかし道路事情が向上し、高速走行や安定性が求められる時代になると性能と安全性で勝る四輪軽トラックへ需要が移りました。1972年にミゼットは時代に飲み込まれるように生産を終えたのでした。
四半世紀ぶりに「ミゼット」が復活!

それから約四半世紀後、その名が復活します。それが「ミゼットII」です。聖飢魔Ⅱと書いて「せいきまつ」と呼びますが、ミゼットIIは、そのまま「みぜっとつー」と呼びます。それまでのダイハツ車は質実剛健ちゅうか、面白みがないちゅうか、なんちゅうか本中華(このギャグの対象年齢55歳以上)、手堅い会社でした。しかしバブル崩壊後、世の中が効率重視へ傾く中で、ダイハツはあえて遊び心を選びました。

全長約2.8m、当初は潔い1人乗り。狭い路地や商店街をスイスイ走ることを想定した尖りまくりの設計です。積載スペース確保のため、スペアタイヤはなんと前期型ではフロントに装着。「そこに付けます?」とツッコミたくなる発想もまた魅力。バックミラーはバイクのよう。ライトもせり出して、全体的にカエルのようでオチャメです。

初代ミゼット同様、発売時は一人乗りオンリーでしたが、「やっぱり2人乗れたほうが便利」という現実的な声を受け、2人乗り仕様も追加。商用だけでなく趣味車やセカンドカーとしても注目されました。ただし、主流の軽トラックほど積めるわけではありません。販売は1996年から2001年頃まで、世に放たれたのは約14,000台。大ヒットとはいきませんでしたが、デザイン性、ノスタルジー、カスタムベースとしての面白さで確実にファンを獲得しました。
雪道はテールスライド!テクニカルな営業車

厚別パークボウルではミゼットIIを営業車として日常的に使用しています。目立ち度は満点。660ccのエンジンは控えめながら、軽い車体のおかげで街中では軽快に走ります。ただし駆動方式はFR(後輪駆動)。北海道の冬は容赦ありません。リアがつるっと滑るため、トラクション確保のためにウエイトを積んでいるそう。

私もFR車に乗ったことがありますが、後輪駆動は雪国に向いていません。坂道ではスリップして登れなかったり、ちょっとしたアクセルワークでテールスライドします。ミゼットIIは営業車ながら、ちょっとした“修行”が必要です。
歴史よりも記憶に残る迷車!?

ミゼットIIは、効率や実用性だけでは語りきれない存在です。小さなボディに愛嬌をまとい、街角に物語を生み出す不思議な力を持っています。真面目なメーカーがほんの少し遊び心をのぞかせたからこそ生まれた一台。初代から受け継がれる“真面目すぎない商用車”という精神こそ、ミゼットという名の本質なのかもしれません。数字では測れない魅力が、今も静かに息づいています。


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