話題のカワサキ4気筒エンジンの3モデルを徹底レビュー! ヴェルシス1100SE ニンジャ1100SX Z900SE【走行インプレッション編】

イチオシスト

近年の人気カテゴリーであるアドベンチャー、ツアラー、ストリートファイター。
カワサキはこのカテゴリーすべてに4気筒エンジン搭載モデルをラインナップしている世界唯一のメーカーである。共通エンジンを採用する車種もあるなか、キャラクターに合わせてパワー特性を変更し、車体重量ライポジも最適化している。
すでに公開中の前半パートでは、ヴェルシス1100SE、ニンジャ1100SX、Z900SEの3台の取りまわし、ポジション、足つき性、積載性といった「使い勝手」を中心にチェックした。
後半パートとなる本記事では、高速度域、低速度域におけるパワー特性や操作性をチェックし、3台の「走り」を中心に解説していくぞ。

3機種3様のエンジン特性



| モデル | ヴェルシス1100SE | ニンジャ1100SX | Z900SE |
|---|---|---|---|
| 総排気量(cc) | 1,098 | 1,098 | 948 |
| ボア×ストローク(mm) | 77 × 59 | 77 × 59 | 73.4 × 56.0 |
| 最高出力(kW[PS]/rpm) | 99[135]/ 9,000 | 100[136]/ 9,000 | 91[124]/ 9,500 |
| 最大トルク(N・m[kgf・m]/rpm) | 112[11.4]/ 7,600 | 113[11.5]/ 7,600 | 98[10.0]/ 7,700 |
| 燃料消費率(km/L) WMTCモード値 |
18.6 | 18.6 | 20.5 |
| タンク容量(L) /航続距離(km) |
21 / 390.6 | 19 / 353.4 | 17 / 348.5 |
【パワー】
スペックを見てわかるとおり、ヴェルシスとニンジャは共通のエンジンを搭載している。モデルチェンジ前はともに1,043ccで、2台の最大出力に大きな開きがあったが、現行の1,098ccになってからパワー差はわずか1psとなっている。もともと、ヴェルシスは4気筒エンジンが苦手とする低回転域をカバーし、ニンジャは4気筒エンジンが得意な高回転域をさらに上乗せするチューニングが加えられていたが、現行モデルでその違いはほぼなくなった。そのため、今回のインプレッションではこの2台のパワー差を明確に感じることがかなり難しくなっていた。
ボア・ストローク比を見てみよう。排気量が1,043→1,098ccになったことでヴェルシス1100SE&ニンジャ1100SXはボアはそのままにストロークアップを3mmアップ。つまりロングストローク化による低回転域のトルクアップを図っている。両車のボア・ストローク比は1.305だ。
対してZは1.311。この数字が大きいほど高回転エンジン(ショートストロークエンジン)になるため、Z900SEがもっとも「回して楽しい」エンジンという見方ができる。
【ヴェルシス1100SE】 ボア77mm ÷ ストローク59mm=1.305
【ニンジャ1100SX】 ボア77mm ÷ ストローク59mm=1.305
【Z900SE】 ボア73.4mm ÷ ストローク56mm=1.311
【トルク】
古い四輪の世界ではトルク(kgf・m)×100の数値が排気量を超えれば高効率エンジンである…とするセオリーがあった(NAエンジンに限る)。それが現代の二輪エンジンにそっくり当てはまるわけではないが、今回の3車種はいずれもその値を軽く超えている。とくにヴェルシス1100SXはモデルチェンジによってトルクを10%近く上昇させている(10.4→11.4kgf・m)点に注目したい。
【ヴェルシス1100SE】 11.4kgf・m×100=1140 >1,098cc
【ニンジャ1100SX】 11.5kgf・m×100=1150 >1,098cc
【Z900SE】 10.0kgf・m×100=1000 >948cc
余談だが、10年以上前の4気筒エンジンでこの値を超えているバイクは、SSやメガツアラーを除けば意外と少ないのだ。気になるライダーは、過去のモデルと比較してみると今回の3台がいかにトルクフルであるかが分かるだろう。
【燃費】
気筒数が多い4気筒エンジンは、部品点数の多さなどの理由から、燃費面で不利とされる。そのなかで、ヴェルシス1100SE&ニンジャ1100SXの燃費は18.6km/L。平均的に見えるが、先代(1,043cc/18.2km/L)から排気量を拡大しながら燃費を向上させている点は大きく評価したい。
そして注目すべきはZ900SE(20.5km/L)が20km/Lを越えているところ。4気筒エンジン搭載車では、かなり好燃費の部類に入る。
なお、3台とも燃料はハイオク仕様だ。
実走インプレッションは…?

カテゴリーによる特性の差がハッキリ出る形となった。
◆アドベンチャー:長いサスペンションストロークのおかげでどんな路面にも対応
◆ツアラー:ロングツーリングで快適に走れるエンジン特性&ポジション
◆ストリートファイター:軽快な走りでワインディングでのポテンシャルの高さが持ち味

(アドベンチャー)

(ツアラー)

(ストリートファイター)
共通エンジンを搭載するヴェルシス1100SEとニンジャ1100SXは、ともに高速巡航適正が非常に高かった。ただし、ライポジや重心の違いによって印象がガラリと変わる。
そしてZ900SEはエンジン・ハンドリングともにスポーティで街乗りでの評価は高かったが、他2台と比べると高速巡航性能、長距離移動において不利な面が目立った。ここからは、モデルごとの特性&装備、そして走りのフィールドにおける走行性能をインプレッションしていく。
ヴェルシス1100SE

エンジン・クラッチ・ギヤのフィーリング
エンジンは、穏やかにスピードを乗せられるタイプ。トルクに余裕があり、コーナーの立ち上がりで多少回転数が足りなくても自然に速度が伸び、ストレスを感じにくい。ラフにスロットルを開ければ、リッターバイクらしい力強い加速を見せるが、唐突で怖さを覚えるほどではなく、安心感を保ったまま走りを楽しめる。クラッチ、ギヤは自然なフィーリングで、とくに違和感なく操作できた。
装備





(※フォグランプはオプション装備)

ニンジャ1100SX

エンジン・クラッチ・ギヤのフィーリング
エンジンはなめらかで力強く、中速以上でとくに余裕を感じられる。リッタークラスだけに、ラフなアクセル操作をすれば鋭い加速をするが、怖さを感じるほどではない。
クラッチ、ギヤは、ヴェルシス1100SX同様に自然なフィーリングで違和感なく操作できた。ただ、ニンジャ1100SEは速度が乗るほどスムーズになる印象で、逆に低速で雑に扱うとラフな挙動を起こすこともあった。
装備






Z900SE

エンジン・クラッチ・ギヤのフィーリング
アクセルレスポンスが非常に鋭く、クイックな反応はさすがストリートファイターといったところ。車体が軽いおかげでダイレクトな挙動が楽しめ、3台の中で最も鋭い加速を味わえる。
そのレスポンスのよさとショートなギヤ比の関係から、ギヤチェンジは少し忙しくなる傾向にあるが、総じて軽快な加速フィールを楽しめた。
装備






走行ステージ別インプレッション

街乗り

【ヴェルシス1100SE】
トルクフルなエンジンで扱いやすく、2速発進も容易。コーナー出口で回転数が低くても力強く加速できるため、頻繁なギヤチェンジを強いられずストレスがない。よく動くサスペンション、高いクッション性のシートにより、抜群の乗り心地を誇るが、大柄な車格と車重による足つきや重心の影響から、街乗りの停止時や極低速域では疲れを感じやすい場面もあった。
【ニンジャ1100SX】
街乗りだと重量は感じるが走行安定性は高く、トルクフルなエンジン特性による扱いやすさ、ギヤチェンジのしやすさはヴェルシス1100SXとほぼ同等。ライポジが前傾すぎないため低速走行もラクにこなせるのでフルカウル初心者にも安心できる。サスは少し固めか? と感じる場面もあったが、路面の凹凸をしっかり吸収してくれて、跳ねるような挙動はなかった。
【Z900SE】
軽い車体のおかげで低速域での扱いがラク。ブレーキの効きも絶妙で、街中のストップ&ゴーを軽快に楽しめるストリートファイターらしい乗り味だ。クイックなアクセルレスポンスゆえにギヤチェンジは忙しくなりがちだが、街乗りではそれが加速・減速を繰り返す面白さにつながる。サスペンションは固めで路面の凹凸をダイレクトに伝えるが、挙動が安定し、荒れた路面のカーブでも恐怖感はない。
幹線道路・高速道路

【ヴェルシス1100SE】
とにかく疲れにくく、大型スクリーンのおかげで60km/h以上でほとんど風を受けないほど。アップライトなポジションと高い視点で快適に走れるが、横風が強い場合は車体が大きい分、条件しだいで振られそうな印象だ。パワフルなエンジンとハイグレードなブレーキのおかげで加減速は非常にスムーズだった。
【ニンジャ1100SX】
自然なポジションで、パワーも余裕があるため快適に距離を延ばせる。後方視認性がいいところも好ポイント(ミラーがカウルにマウントされているため視線の移動が少ない)だ。ただしフルブレーキ時は重心の高さゆえに姿勢変化が起こりやすく、丁寧な扱いが必要と感じる場面もあった。
【Z900SE】
パワーは十分で、とくに中速域における加減速の反応がよく、ハンドリングもクイックに曲がれるので、周りのクルマやバイクの動きに合わせた走りの切り替えがしやすい。幹線道路を走るのであればこのマシンが一番楽しめるだろう。ただ、当然ながらカウルがないので風はモロに受けてしまう。
3台の特性/どんなライダーにオススメ?

4気筒エンジンという共通点をもち、近い排気量でありながら、大きくキャラクターが異なった3台。
まず、ヴェルシス1100SEは、重量はあるものの極低速まで粘るトルクフルなエンジンと、電子制御サスペンションによる抜群の安定感が魅力。長距離ツーリングならこれ一択で、疲れ知らずの旅を求めるライダーに最適だろう。
次に、ニンジャ1100SXは、強力なトルクによる余裕の走りと、アナログながらしなやかな足まわりでツーリングもスポーツもハイレベルにこなす万能型だ。SSのようなシャープなスタイリングでありながら、余裕を持ったスマートな走りも実現。そんな二極性を両立したいライダーに刺さるハズだ。
そしてZ900SEは、電子制御スロットルを得てさらに進化しており、軽快な車体とクイックな反応のおかげでステージを選ばない刺激的な走りがウリ。操る手応えをダイレクトに感じたい、積極的なスポーツライディングを好みたいライダーに向けたマシンとなっている。
もともとスポーツ特性の高い4気筒エンジンに何の要素をプラスするか。「旅特化」か「万能型」か「刺激」か。それによって、この3台の選び方が見えてくるだろう。


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