低山トラベラーが選ぶ!冬に歩きたい低山4選【西日本編】
アイキャッチ・記事中画像撮影:筆者 寒い季節の低山ならではの“低い絶景”を楽しむ 東北に生まれ、関東暮らしの長いぼくにとって、西日本の低山は新鮮な気持ちで歩ける山ばかりです。かつての都に近いぶん歴史的な背景や物語がまるで […]
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イチオシスト
アイキャッチ・記事中画像撮影:筆者
寒い季節の低山ならではの“低い絶景”を楽しむ

東北に生まれ、関東暮らしの長いぼくにとって、西日本の低山は新鮮な気持ちで歩ける山ばかりです。かつての都に近いぶん歴史的な背景や物語がまるで異なるし、緯度・経度や気流・海流の違いは山の気候だけでなく文化風習にまで“違い”をもたらしています。その“違い”を知るたびに、日本の魅力の奥深さを再発見できるのが、山旅の面白さだと感じています。
これまで「低山トラベラー」として取り組んできた活動はもとより、それ以前の趣味の時代を振り返ってみても、ずいぶんたくさんの低山を日本各地に訪ねてきました。そこで今回は、冬のうちに歩きたい低山を西日本からセレクト。
西日本在住の低山ファンはもちろん、事情があって雪山に行けないときや、出張や旅行にあわせて地方の低山を歩いてみたいときの低山選びとしても、ちょっとしたヒントにでもなれば嬉しい限りです。
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大和三山(奈良県)
藤原宮をとり囲む歴史ある低山トライアングル -
ひき岩群と岩屋山(和歌山県)
スペクタクルな岩山をダブルヘッダーで -
世田山~笠松山(愛媛県)
瀬戸内海と石鎚山の間にある名低山 -
黒髪山(佐賀県)
西日本最強の呼び声高いオールラウンド低山
■東日本編はこちら
1.大和三山(奈良県)|藤原宮をとり囲む歴史ある低山トライアングル

古都・奈良。四方を山々に囲まれた盆地ですから、低山ファンにとっては旅に加えて山も楽しみたい場所のひとつです。ぼく自身も足しげく通う地域であり、YAMA HACK読者のみなさんにおすすめしたい低山がたくさんあります。
なかでも大和三山は橿原市にあるシンボリックな低山。畝傍山(うねびやま・198m)、天香久山(あまのかぐやま・152m)、耳成山(みみなしやま・140m)と、三座すべてが標高200mに満たない低い山です。トライアングルの形に位置しており、その中心にあるのが藤原宮跡。これらをすべて巡り歩くコースは、奈良の自然と歴史文化を同時に味わうことのできる極上の歩き旅になること請け合い。とくに冬は澄んだ空気が気持ちいい!

スタートは橿原神宮。ここは神武天皇とそのお后さまを祀る神域ですが、境内を奥へと進むと畝傍山の登山口があります。畝傍は「畝火」であり、火がうねることを表していますから、その名の通りかつては火山でした。山頂はほどよい広さでベンチがあり、西側には葛城山の雄姿も。下山したら神武天皇陵にも立ち寄りましょう。
しばらく市街地と農地を歩き、天香久山へ。山頂には國常立命という国土形成の神さまが祀られています。木曽御嶽や鳥海山といった火山でよく見かける神さまです。雨をもたらす龍神・高靇神が祀られているのも注目。東日本編でとり上げた神奈川の大山に祀られている神さまでもあります。山の麓には占いを司る櫛真智命も。こちらは東京の御岳山に鎮座する武蔵御嶽神社の主祭神と同じですね。神さまと神社からつながっていく、日本各地の低山の旅。面白いですねえ。
このあとは広大な藤原宮跡を通り、耳成山でゴール。橿原神宮前駅から大和八木駅まで、およそ13kmとほどよい距離ですよ。
おすすめコース

体力レベル: ★★☆☆☆
日帰り|4時間10分
参考: らくルート
技術的難易度: ★☆☆☆☆
・概ね整備されている
・道迷いの心配が少ない
・歩きやすい靴と動きやすい服装が必要
凡例:グレーディング表
コース概要
橿原神宮前駅(10分)→橿原神宮(35分)→畝傍山(30分)→神武天皇陵(50分)→天岩戸神社(20分)→天香久山(10分)→天香山神社(25分)→藤原宮跡(25分)→耳成山公園(15分)→耳成山(30分)→大和八木駅
2.ひき岩群と岩屋山(和歌山県)|スペクタクルな岩山をダブルヘッダーで

和歌山県田辺市にあるひき岩群は、標高にして80mから150mほどの丘陵地。丘陵地とはいっても、ただの丘陵ではありません。見ての通り、起伏のある険しい岩山です。整備された遊歩道、みかん畑に囲まれた和歌山らしい景観、そしてアスレチック感満載の楽しい山容と、熟練者でも楽しめる低山。田辺の市街地から5kmほどと近く、海を望めるのも嬉しいポイントです。
絶景に見とれていては、冬でも暖かい紀南ならではの“足元の絶景”を見落としてしまいます。岩山なのに谷間には水が流れ、植生はどこか独特。かの博物学者・南方熊楠が愛した山でもあるというのだから、そのポテンシャルたるや推して知るべし。

ひき岩群の西側は岩屋山(いわやさん)と呼ばれる観音霊場。せっかくなのでセットで楽しみたい低山です。こちらは信仰の山らしく、小さいながらも三十三体の石仏を巡るコースがメイン。起伏を越えて山上にあがると、ひき岩群が眼前に広がり、周辺の景観と相まって、かなりスペクタクル。思わぬ絶景に見惚れてしまい、うっかり日が暮れないようにご注意を。
下山後は紀伊田辺駅前にある飲み屋街「味光路」で一杯やるのが田辺の定番。このあたりは熊野古道の中辺路も歩けるし、風光明媚な低山もたくさんあります。もう1泊して、それらに挑戦するのも楽しいですよ。
おすすめコース

体力レベル: ★☆☆☆☆
日帰り|2時間20分
参考: らくルート
技術的難易度: ★★☆☆☆
・急な登下降がある
・案内標識が不十分な箇所が含まれる
・登山装備が必要
・登山経験、地図読み能力があることが望ましい
凡例:グレーディング表
コース概要
ふるさと自然公園センター(25分)→ひき岩群第一展望地(20分)→ひき岩群第二展望地(25分)→岩屋観音(20分)→岩屋山(15分)→岩屋観音(35分)→ふるさと自然公園センター
3.世田山~笠松山(愛媛県)|瀬戸内海と石鎚山の間にある名低山

愛媛県今治市と西条市の市境にまたがる世田山(せたやま・339m)は、尾根伝いに笠松山(かさまつやま)まで歩くコースがとにかく最高です。ここからの眺めを初めて目にしたのは真冬のことで、青い瀬戸内海と白い石鎚連峰のコントラストに感動もひとしお。地図と照らし合わせながら地形や海岸線、そして町の様子を、時を忘れて眺めていました。やはり暮らしたことのない土地の風景は、とても興味深い!
世田山は、山頂に至る手前にある展望スポットがすばらしい。巨岩に乗って見渡すのは真っ白な石鎚連峰の展望で、かなり立派な山容です。むかし石鎚山に登ったなあとか、あっちの山はなんだろうとか、見慣れない風景から山座同定するのが楽しいんですよね。

笠松山は357mの山で、広島県の尾道市との境にある島々の眺めに秀でています。そう、自転車好きにはよく知られた「しまなみ海道」でつながる風光明媚な島々です。さっきあそこを渡って来たなあとか、ふもとの低い山並みはなんだろうとか、これまた見慣れない風景と地図を見比べるのが楽しい。笠松山の山頂には小さな観音堂があるので、隅っこに腰かけさせてもらいながら、ゆっくり過ごしてください。
世田山も笠松山も、かつては山城が築かれていました。地形的に見晴らしがよく、敵襲に備えるのに好立地だったのでしょう。南北朝時代から室町時代にかけて、戦の舞台ともなった低山なのです。山城ファンなら、どう守り、どう攻めるか。そんな視点で歩くのもまた、低山らしい楽しみ方です。
おすすめコース

体力レベル: ★☆☆☆☆
日帰り|2時間50分
参考: らくルート
技術的難易度: ★★☆☆☆
・急な登下降がある
・案内標識が不十分な箇所が含まれる
・登山装備が必要
・登山経験、地図読み能力があることが望ましい
凡例:グレーディング表
コース概要
世田薬師バス停(10分)→世田薬師(60分)→世田山(30分)→笠松山(30分)→世田山(35分)→世田薬師(5分)→世田薬師バス停
4.黒髪山(佐賀県)|西日本最強の呼び声高いオールラウンド低山

国土の七割近くが山地である日本ですから、実態としては把握しきれないほど無数の低山が存在します。そんななかでも印象深い低山はいくつかあります。たとえば佐賀の黒髪山(くろかみやま)は、その筆頭候補から外れません。
佐賀県武雄市と有田町にまたがる黒髪山は、標高516mの低山です。肥前耶馬渓とも称される特異ないで立ちの山であり、その険しさは修験道の行場だったことをいまに伝えています。そこかしこにある岩場と鎖場はダイナミックで、全身を駆使して登るタイプの低山の楽しさに目覚める人も、きっと多いはず。

コースはいくつもあり、山中には岩屋があったり、滝があったり、巨岩に登ったりと、見どころ満載。しかも山頂からの大展望は一見する価値ありです。とくに冬はすっきりした大展望が期待できるとともに、九州の低山らしく早春の空気を先取りして味わえるのも嬉しいポイント。
植物もまた面白い。黒髪山カネコシダは、明治37年(1904年)にこの地で発見されたもので、のちに植物学者・牧野富太郎が発見者の金子保平から名をとって命名。国指定の天然記念物です。
ところで、珍しい山名の由来をひも解くと、諸説あるようです。イザナギノミコトが黄泉国から逃げ帰るときに投げた黒髪がここにきた神話説、神(カミ)の宿る座(クラ)が転訛してクロカミとなった信仰説など、さまざま。いずれにしても、自然美あり、植物あり、歴史あり、信仰あり、そして絶景ありのオールラウンドな低山。楽しくないわけがありません。
おすすめコース

体力レベル: ★☆☆☆☆
日帰り|2時間45分
参考: らくルート
技術的難易度: ★★★☆☆
・ハシゴ、くさり場、雪渓、渡渉箇所のいずれかがある
・転んだ場合に転落・滑落事故につながる箇所がある
・ハシゴ、くさり場を通過できる身体能力が必要
・地図読み能力が必要
凡例:グレーディング表
コース概要
竜門峡キャンプ場(60分)→見返峠(5分)→雌岩(35分)→黒髪山(5分)→蛇焼山(15分)→後の平(45分)→竜門峡キャンプ場
関連記事:黒髪山|最強の低山!?鎖場連続スリル満点、初心者でも大丈夫?
冬の低山で夏山に備える!

のんびり歩きたい冬の低山ですが、この季節の間に工夫して歩いておくことで、来たる夏山に向けた課題の洗い出しや効能を期待できます。たとえば、こんな具合に。
少し長めのコースで山行計画を立ててみる。長い距離を歩く習慣をつけることで、自分に合った休憩のとり方を把握でき、山歩きのペース配分を定着させることができます。持続的に運動をし続ける筋力と心拍のトレーニングにもなり、いいことだらけ。
少し重めの荷物を背負って歩いてみる。とくにテント泊縦走に向けたトレーニングには最適です。ぼくは大型のザックに20kg程度の荷物を詰め込んで、いわゆる郷土アルプスと呼ばれる低山の連なりを歩いたりします。足腰も強くなるし、加重を分散するパッキング術や、すみやかな荷物の出し入れの訓練にもなるし、いいことだらけ。
少し遠くの低山に出掛けてみる。まだ見ぬ風景と見知らぬ風土を求めて歩き旅をすることは、シンプルに楽しいものです。山頂にはこだわらず、ふもとの町や街道を歩くこともまた、めちゃめちゃ楽しい。旅心が磨かれて、教養も身に付き、いいことだらけ。
そんなわけで、低い山とはいっても得られるものはとても大きく、楽しみ方は自分次第です。より高いところを目指す垂直志向な登山者もいれば、より遠いところを求める水平志向のハイカーもいます。山の楽しみ方は、人それぞれ。自分は自分の山を歩く、それが一番ですね。
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記事提供元:YAMA HACK
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