買い物だけの「チョイ乗り」が一番バイクに悪いって本当? メーカーが定める「シビアコンディション」とは

イチオシスト

近場への移動手段として、バイクを「チョイ乗り」するライダーも少なくないかもしれません。
しかし実はこの行為は、バイクに悪影響を及ぼしかねない「シビアコンディション」に該当する可能性があるようです。
「チョイ乗り」や悪路走行…シビアコンディションに該当する状況

毎日の生活の中で、バイクは非常に便利な移動手段です。
たとえば、近所のコンビニエンスストアへお弁当を買いに行ったり、最寄りの駅まで通勤や通学で移動したりといった場面では、その機動力の高さが遺憾なく発揮されます。
なかには、歩くには少し遠いけれど、車を出すほどでもない距離をバイクで移動する人も少なくないでしょう。
しかし、こうした「チョイ乗り」と呼ばれる使い方は、実はバイクメーカーが定義する「シビアコンディション」という使用環境に該当する可能性が高いようです。
シビアコンディションとは、一般的な通常の使用状況よりも厳しい条件で車両を使用することを指します。
代表例としては、一回の走行が8km以下といった、短距離走行を繰り返すような使い方が挙げられます。
これは前述の「チョイ乗り」のような、近所への買い物や短距離通勤そのものといっても過言ではありません。
さらに、低速走行やアイドリング状態が多い場合も、シビアコンディションとして挙げられます。
これはストップ&ゴーを頻繁に繰り返す状況や、宅配業務などで頻繁に停止と発進をおこなう状況などの、信号待ちや渋滞が多い都市部での走行が該当します。
なお、急な坂道を登る行為はエンジンや駆動系に大きな負荷をかけるため、シビアコンディションには地形や環境も大きく関係しています。
くわえて、下り坂でのエンジンブレーキを多用するような状況や、凸凹道や砂利道などの悪路走行もシビアコンディションの典型です。
「チョイ乗り」が及ぼすバイクへの悪影響

ではいったいなぜ、「チョイ乗り」が「シビアコンディション」という過酷な環境に分類されるのでしょうか。
その最大の理由は、エンジンオイルの劣化と、エンジンの温度管理の密接な関係にあります。
通常、エンジンが十分に温まった状態で走行していれば、内部の温度は100度近くまで上昇するため、発生した水分は水蒸気となり、ブローバイガスなどと共に外部へ排出されていきます。
しかし、エンジンが温まりきる前に目的地に到着してしまうと、この水分蒸発のサイクルが完了しません。
冷えたエンジン内部では発生した水蒸気が結露し、水滴となってクランクケース内に留まります。
この残留した水分が、エンジンオイルと混ざり合うことが最大の問題です。
また、本来潤滑や防錆を担うエンジンオイルに水が混入すると、「乳化」と呼ばれる現象が起こります。
こうなると、オイル本来の油膜を保持する性能が著しく低下し、ピストンやシリンダーといった金属部品を摩耗から守ることができなくなります。
さらに、水分を含んだオイルは酸化しやすく、エンジン内部の金属パーツに錆を発生させる原因になりえます。
また、「チョイ乗り」がシビアコンディションとされる理由は、水分によるオイルの乳化だけではありません。
「燃料希釈」という現象も、エンジンに悪影響を及ぼします。
エンジン始動直後や水温が低い状態では、燃焼を安定させるために、コンピューターは通常よりも濃い燃料を噴射するように制御します。
しかし、エンジンが冷えているとガソリンが気化しにくく、液体のままシリンダーの壁面に付着してしまうことも少なくありません。
この余分なガソリンが、ピストンの隙間からクランクケースへと落ち、エンジンオイルと混ざってしまうというわけです。
走行距離が伸びていないにもかかわらず、メーカーが厳しいメンテナンスサイクルを指定しているのは、こうした目に見えない内部的な劣化が、通常の走行時よりもはるかに早いスピードで進行するためです。
まとめ
とはいえ、だからといって便利な「チョイ乗り」を完全にやめる必要はまったくありません。
大切なのは、その使い方がメーカーの定義する「シビアコンディション」に該当しているという事実を、オーナー自身が自覚しておくことです。
そのうえで、週に一度は意識して少し遠回りをしてみる、あるいは休日に30分以上走行してエンジンをしっかりと芯まで温めてあげるなど、バイクの健康状態を気遣ってあげることが大切です。


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