脚本家・山田太一のすべてがわかる 「山田太一 上映 展示会」横浜で開催中! 【リポート前篇】
イチオシスト
「男たちの旅路」「岸辺のアルバム」「想い出づくり。」「ふぞろいの林檎たち」など、テレビドラマ史に残る数々の作品を生んだ名脚本家・山田太一さん。2023年11月29日に89歳で亡くなってから2年、現在、神奈川県・横浜にある「放送ライブラリー」では、山田さんの功績をふりかえる特別企画「山田太一 上映展示会~名もなき魂たちを見つめて~」(主催:公財・放送番組センター/共催:山田太一のバトンを繋ぐ会)が2025年12月12日(金)から好評開催中だ。
山田太一さんの功績をたどる本格的な展示会としては今回が初めて。山田さんの仕事を俯瞰してみることができ、直筆の原稿、愛用品、往復書簡など初めて公開される展示品がそろった、価値ある貴重なイベントになっている。

≪展示会 見どころを紹介≫
■生い立ち(原点)
小・中学校時代の作文、イラスト、大学時代の読書ノートなど初公開の資料を多く展示。浅草や湯河原での少年時代、小田原高校、早稲田大学時代、松竹大船撮影所での助監督時代のエピソードを披露。これらの時代体験が山田太一作品をつくったともいえる。山田さんは、実は絵も上手かったこともわかる!

■作品紹介(テレビドラマ)
1960年代のデビュー作から、2016年の遺作「五年目のひとり」まで、山田太一脚本のテレビドラマ全作品を年表にて紹介、台本や作品の場面写真なども多数展示。なんと、あの名作が当初は違う題名だった

■映画・舞台・小説・エッセイ
山田太一さんが手掛けた映画、舞台の脚本、小説、エッセイなどの全作品リストに加えて、著作本を展示。山田さんが書かれたテレビドラマは約150作品になるが、小説、戯曲も数多く手がけていることがわかる。
■直筆原稿
「ありふれた奇跡」(2009年)の脚本をはじめ直筆原稿を展示。力強い筆跡の手書き原稿から山田さんが作品に込めた熱気を感じることができる。
■書斎・書庫
山田さんの自宅の書斎や書庫を写真で紹介。原稿用紙、文具(愛用の2Bの鉛筆など)、眼鏡、スケジュール帳(「ふぞろいの林檎たち」の放送が始まる1983年5月の、なんという多忙ぶり!)などが展示。初公開。

■往復書簡
本展示会の重要な見どころの一つ。テレビマンユニオンの合津直枝さんがプロデュース、演出を手掛けたドキュメンタリー番組「山田太一からの手紙」(2024年11月9日放送、NHK Eテレ)でも紹介されているが、山田さんは筆まめで、多くの人たちと手紙のやりとりをしている。その貴重な一部が展示されている。
松竹時代の師匠の木下惠介監督、大学時代の同級生の寺山修司さん、山田ドラマに出演した沢村貞子さん、大原麗子さん、八千草薫さんからの手紙、山田太一さんから向田邦子さんへ宛てた手紙など。
中でも貴重なのは、山田さんの父・逸三さんから太一さんに宛てた手紙。
山田逸三さんは昭和の激動の時代を様々な苦労を背負って生き抜いた人で、山田さんのエッセイ『路上のボールペン』にはこう綴られている。
「明治うまれのたくましさを、私は事毎(ことごと)に感じ、自分の体験の浅さ、人間を見る目の軽さを、父と逢うごとに感じていた」「私は父の子供の中でも、世間を知らない、物を知らない、生活能力に乏しい子供の筆頭であったので、そういう子供が書いたドラマがテレビから流れることに、空怖ろしいような、世間をだましているような気持があったのではないか、と思う」
そんな逸三さんが太一さん脚本のドラマ「記念樹」(1966年)を見て、率直な感想を書いた手紙を太一さんに送っている。文面は展示会場で実物を見ていただきたいが、太一さんはその手紙を大切に持っていた——。まるで一篇のドラマのごとく感動的である。
■名セリフ、名言
山田作品にある膨大な名セリフを厳選に厳選を重ね、山田太一さん自身が残した名言の数々と共に紹介する。
■寄稿「山田太一から受け取ったもの」
各界で活躍する14名が今回のイベントのために寄せた、山田太一作品についてのメッセージを掲示。
新井英樹(漫画家)、宇多丸(ラッパー)、大根仁(演出家、映画監督)、岡田惠和(脚本家)、小沢健二(シンガーソングライター)、清田麻衣子(編集者)、宮藤官九郎(脚本家、演出家、映画監督)、小島秀夫(ゲームクリエイター)、鈴木敏夫(プロデューサー、スタジオジブリ代表取締役議長)、スチャダラパー(ヒップホップグループ)、徳永有美(フリーアナウンサー)、西川美和(映画監督)、長谷正人(社会学者)、町山広美(放送作家) [敬称略]
「山田太一から受け取ったもの」がいかに大きなものだったか、そして、それが現在も生きていることがわかる。
■山田太一と放送ライブラリー
山田太一さんは、放送ライブラリーの公開セミナーに複数回登壇し、自作について語っている(2001年開催「岸辺のアルバム」、2006年開催「男たちの旅路 車輪の一歩」、2015年開催「時は立ちどまらない」)。その公開セミナーの様子を紹介。
≪山田太一の貴重な作品の上映会≫
展示会場に隣接された映像ホールでは、山田太一脚本のドラマが上映されている。
[上映作品]
「河を渡ったあの夏の日々」、「男たちの旅路スペシャル 戦場は遥かになりて」、「春の一族」(第1回)、「想い出づくり。」(第1回)、「岸辺のアルバム」(第15回=最終回)、「沿線地図」(第1回)、「シャツの店」(第1回)、「チロルの挽歌」(第1回)、「春の惑星」、「獅子の時代」(第1回)、「あめりか物語」(第3回)、「終りに見た街」(2005年版)、「鳥帰る」、「ながらえば」、「友だち」(第1回)、「丘の上の向日葵」(第1回)、「ありふれた奇跡」(第1回)、「本当と嘘とテキーラ」、「日本の面影」(第1回)、「真夜中のあいさつ」、「なつかしき海の歌」、「時は立ちどまらない」
放送ライブラリーでは、上記の作品を含めて多数の山田太一作品が8階の視聴ホールでいつでも見ることができるが、展示会とあわせて大きなスクリーンで山田ドラマを鑑賞する機会はない。どれも貴重な作品ばかりなので、ぜひこの機会をお見逃しなく!

時代を超えて生き続ける山田太一のメッセージ
紹介したとおり、今回の「山田太一 上映展示会」は貴重なイベントである。
「テレビドラマが好き」だけど、「山田太一作品はよく知らない」、あるいは「数本しか見たことがない」という方には、山田太一という作家の全貌を知る絶好の機会になる。山田さんは1970~1980年代の作品が代表作として語られることが多いが、1990年代以降にも多くの名作・傑作を生んでいたこともわかる。
山田太一作品を同時代で見てきた方には、「生い立ち」や「往復書簡」をオススメしたい。山田太一、一個人を知ることで、山田太一作品の根源に触れることができるだろう。
そして、放送関係者、DVD・配信関係者の方にも、ぜひこのイベントに足を運んでいただきたい。山田太一さんがテレビ界において、いかに大きな足跡を残したことを改めて詳細に知ることができるとともに、寄稿「山田太一から受け取ったもの」を見ると、各界のクリエイターたちにどれだけ影響を与え続けているかを、認識できるだろう。
山田太一さんは、普通の人の普通の人生を、そしてそれはすべて一様ではないということを、ドラマを通して描き続けてきた。その作品群は、現代においても、見るものに大きな影響を与えるだろう(満席の上映会場で、前のめりになって山田ドラマを見る観客の姿がそれを証明している)。
だからこそ、再放送、DVD化、CS放送、配信など、どんな形でもよいので、数多くの山田太一作品が見られる環境をつくってほしいと思う。TBSは、2024年、2025年に数本の山田作品の再放送をしてファンを喜ばせたが、これに留まらず、各局がさらなる機会を提供してくれることを切にお願いしたい。
これは、今回の「山田太一 上映展示会」の開催に奔走した「山田太一のバトンを繋ぐ会」が目指すことでもある。
「山田太一のバトンを繋ぐ会」の詳細は【リポート後篇】で紹介しよう。
取材・文=前野裕一 制作=キネマ旬報社 制作部
「山田太一 上映展示会」
●会場:放送ライブラリー イベントホール、映像ホール
(神奈川県横浜市中区日本大通11番地 横浜情報文化センター内)
※[交通]みなとみらい線「日本大通り駅」情報文化センター出口 直結
●開催期間:2025年12月12日(金)~2026年2月11日(水・祝)
●開館時間:10:00~17:00
●利用料金:無料
●休館日:2025年12月29日~2026年1月5日、及び月曜日*祝日の場合は翌日
*詳細は、放送ライブラリーのホームページにて⇒https://www.bpcj.or.jp/
記事提供元:キネマ旬報WEB
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