【スマホで受験に失敗する子どもたち】“没収”は間違い?無理なく遠ざける“最強のコントロール術”
イチオシスト

「何度言ってもスマホを手放さない」「部屋で勉強していると思ったら、動画を見ていた」――。受験本番を前に、子どものスマホ利用に頭を悩ませている親は多いはず。
しかしその依存は、子どもの意志の弱さだけが原因ではないという。
現代のスマホやアプリは、心理学の専門家が計算し尽くし、プロが“いかに長時間使わせるか”に心血を注いで作り上げたモノ。親が力ずくでスマホを取り上げたとしても、子どもの情熱が“いかに制限をかいくぐるか”というハッキングに向いてしまうことも――。
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そこで「テレ東プラス」は、『スマホで受験に失敗する子どもたち』(星海社)の著者・高橋暁子氏を取材。
親子で納得してスマホと距離を置き、後悔のない受験期を過ごすためのヒントとは――?
スマホ依存から脱却し、受験を勝ち抜く「親子共闘」のヒント
――そもそもなぜ、若者はスマホを使いすぎてしまうのでしょう。
「スマホやアプリは、心理学者が計算し尽くし、プロが“いかに頻繁に長時間使わせるか…”、人生をかけて作った端末だからです。無料で使えるのは、ユーザーを依存させて広告を見せ、課金させる自信があるから。その技術に子どもが自力で抗うのは、無理なことと言えます。まずは親御さんや大人たちが“スマホやアプリとは、そういうものなんだ”と理解する必要があります」
――スマホを見なくても、近くにあるだけで、勉強に影響が出ますか?
「例え何かしらの通知が来なかったとしても、すでに脳が“大事な連絡が来るかも”と学習してしまっているので、置いてあるだけでも気が散ります。物理的に見えない別室に置くなど、“一回忘れる作業”をするだけでも、効果は大きく変わります」
――親や大人が、子どもから無理やりスマホを取り上げることについて、先生はどう思われますか?
「親が一方的に取り上げるのは、逆効果です。子どもの使いたい情熱は凄まじく、パスワードをハックしたり、YouTubeで制限解除の方法を調べたりして、親の裏をかこうとします。これでは無意味ですよね。大切なのは、子どもに“親はスマホを取り上げる存在”ではなく、“勉強や受験に集中するために制限をサポートしてくれる協力者”だと認識してもらうことです」

――子どもが自分からスマホを遠ざけるようにするには、どうすれば良いのでしょう。
「以下のような客観的なデータを見せるのが効果的です」
・偏差値との相関:利用時間が長いほど偏差値が下がるという調査結果を雑談として共有する。
・時間の可視化:スクリーンタイム(デバイスで、アプリやウェブサイトの利用状況を確認・制限できる機能)を見て、例えば1日4時間使っているとしたら「1年のうち2カ月分、朝から晩までスマホを触っている計算になるけど、大丈夫?」と数字で示す。
「子どもが理想の未来、かなえたい夢に近づくには“今のバランスはおかしくないか?”と自覚し、自分から『制限したい』と言い出す土壌を作ることが大切です」
――具体的におすすめの「スマホ対策テクニック」があれば教えてください。
「子どもの性質に合わせて選ぶのが良いですね」
・タイムラプス勉強法:時計の画面と自分が勉強している手元やノートなどをスマホで
撮影し、勉強アカウント(SNSに開設した勉強用アカウント)に投稿するという勉強法。撮っている間はスマホを触れないので集中でき、勉強アカウントに投稿することにより、達成感や自信につながる。
・友達と協力: 友達同士でスクリーンタイムのパスワードを掛け合い、解除できないようにする。勉強アカウントで進捗を報告し合うなど。
・物理的遮断:本気でやる時は親に預ける。
――これから冬休みに入りますが、長期休暇中の注意点は?
「長期休暇に入ると生活リズムが崩れ、スマホの長時間利用につながりやすくなります。特に冬休みは、一番の危険地帯。なるべく学校と同じ時間に起きて、図書館や塾の自習室など“周りが勉強している環境”に身を置くことが大切です。強制的にオンの状態を作ることで、スマホを触る隙をなくすのが一番の対策です」
――スマホ依存から抜け出すために、リアルな人間関係はどう影響しますか?
「スマホは“逃避”に使われやすいです。逆に、リアル(部活や友人関係)で自分の居場所があり、認められている子どもは、スマホに依存しにくいと言われています。
また、”いつメン(いつものメンバー)が頑張っている“という情報は強力なので、例えば、『〇〇君も塾に行き始めたらしい』『英検に受かったらしいよ』といった情報をさりげなく伝えると、”やばい、やらなきゃ!“といういい刺激になりやすいですね」
――最後に、受験生を持つ親御さんにメッセージをお願いします。
「受験は、自分が納得して選んだ第一志望に全力で向き合うことが大切です。スマホはその障害になりがちですが、今回の書籍でまとめた“自分をコントロールする技術”は、大学生になっても社会人になっても一生使える武器になります。親御さんは頭ごなしに否定せず、最新の情報を共有しながら、お子さんが後悔しない受験期を過ごせるよう、一番の協力者でいてあげてください」
▲「スマホで受験に失敗する子どもたち」(星海社)
【高橋暁子 プロフィール】
成蹊大学客員教授、ITジャーナリスト。SNSや情報リテラシー、スマホやインターネット関連の事件やトラブル、対策が専門。小中高校大学ほかで毎年数十回以上講演し相談を受けており、若者のネット利用実態と対策についても詳しい。教育出版中学校国語の教科書にコラム掲載中。光村図書小中学校道徳の教科書で情報モラルに関する校閲を担当。NHK『あさイチ』『クローズアップ現代+』他メディア出演多数。元小学校教員であり、高校生の母でもある。
(取材・文/蓮池由美子)
記事提供元:テレ東プラス
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