おぎぬまXのキン肉マンレビュー【第51巻編】~武道、悪魔将軍、ネメシス、最強の中の最強の結集~
イチオシスト

『週プレ』復活シリーズ、JC『キン肉マン』51巻をおぎぬまXがレビュー!!
節目の第50巻、連載100話を超えた第51巻では、正義超人と悪魔超人の連合軍(ドリームリーグ)と、完璧超人始祖(パーフェクト・オリジン)の闘いが新たなステージを迎えます! また、悪魔将軍の目的、超人閻魔の正体など、数々の秘密も明らかになります!!
●キン肉マン51巻
レビュー投稿者名 おぎぬまX★★★★★ 星5つ中の5【ついに明かされた、悪魔将軍の目的!】
冒頭の第118話「新たなる闘いの序曲!!の巻」では、ネメシスが超人墓場に降り立つ場面から始まります。そこに待っていたのは、かつて"完璧・壱式(パーフェクト・ファースト)"ゴールドマンと呼ばれていた超人、悪魔将軍でした! 作中でも最強クラスの実力を持つネメシスと悪魔将軍がにらみ合う場面は、すごい緊張感がありますね!
ネメシスと対話しながら悪魔将軍は、超人閻魔が腰掛けていた玉座の裏に、古めかしい祭壇が隠されていることを明かします。悪魔将軍いわく、この祭壇に10個ある「始祖のダンベル」を全てはめ込むと、全ての完璧超人始祖(パーフェクト・オリジン)および〝あやつ〟がこの世から消滅するのだといいます。ネメシスすら知らなかった秘密に驚愕しました。悪魔将軍ももともとは完璧超人始祖のひとり。つまり将軍は、〝あやつ〟と呼ばれる者の暴走を止めるために、自らの存在もろとも消滅する覚悟なのです。
ここで注目したいのは、突如現れた祭壇でしょう。冒険映画『インディ・ジョーンズ』に登場しそうな神聖な遺物のような見た目をしていますが、そこにはめ込むのは聖杯ではなく、ダンベル...!! 神話的なモチーフとプロレス的要素、両者は対極に位置するように思えて、どこか絶妙に収まりがいいのはなぜなのでしょうか?
そして、このダンベル祭壇には〝あやつ〟を消滅させるという目的以外にも、重要な役割が存在します。それは、読者に物語の進行度を視覚させる装置です。祭壇にはもともと10個の窪みがあり、すでに4つのダンベルが捧げられています。このあと、側近のザ・ニンジャとサンシャインが3つのダンベルを献上し、揃ったダンベルは7つに。この光り輝くダンベルの煌(きら)めきは、そのまま物語の進行度に直結し、動画再生する時に表示されるシークバーのように、新シリーズがクライマックスに向かっていることを示唆しています。
これまでのシリーズと異なり、複雑なシナリオの新シリーズだからこそ、こういったゴールが見えやすくなる装置はありがたいですよね。『キン肉マン』では、数々のギミックやオリジナル装置が登場しますが、その裏には読者への配慮を欠かさない、ゆでたまご先生ならではの演出が隠されているのだと思います!

変わり果ててしまったかつての同志に引導を渡すことが、悪魔将軍の最後の仕事...!!
自らの目的を明かし、その場を去ろうとする悪魔将軍ですが、そうは問屋は卸しません。超人閻魔を護るため、ネメシスが突撃しますが......さすがは将軍様。ロビンマスクとの闘いで負傷しているとはいえ、実力者であるネメシスの攻撃をあっさり受け、軽くいなしてしまいます。「今の世代の超人を相手にするつもりは一切ない」と宣言し、颯爽(さっそう)と超人墓場を去る悪魔将軍。この発言は、少なくとも悪魔将軍が正義超人軍と闘うつもりはないことも含んでいますので、読者としてはこれほどホッとすることはありませんね。

ネメシスを軽々と放り投げる悪魔将軍。無量大数軍(ラージナンバーズ)と始祖(オリジン)、両者の実力差が明確に示された場面とも言える
さて、場面は超人墓場からグランドキャニオンへと変わります。地の底のリングから姿を現したのは、ストロング・ザ・武道(ブドー)...!「真の裁きを...!」と不穏なつぶやきを残し、どこかへ飛び去ってしまいました。
再び場面は変わり、京都。アシュラマンVSジャスティスマン戦をモニター観戦していた正義超人軍でしたが、キン肉マンが己を鼓舞するため「馬場でも猪木でも超人閻魔でもドンとこいじゃーっ!」と叫んだ矢先、これまで姿を消していたストロング・ザ・武道が目の前に降り立ちました。そして、いつも通りにおしっこを漏らす我らが主人公(笑)。
やがて武道は、キン肉マンを担ぎ上げると「いいところに連れていく」と告げ、ふたたびどこかへ飛んで行ってしまいます。その行き先は、かつて超人オリンピックも行われた超人たちの聖地、国立競技場でした。すかさず委員長たちも姿を現し、次なる闘いのステージの準備が着々と進んでいきます。
武道が竹刀を地面に突き刺すと、国立競技場の地下に隠されていた"許されざる世界樹(アンフォーギブン・ユグドラシル)"が蘇(よみがえ)りました。さらに悪魔超人軍も合流し、武道と悪魔将軍が数億年ぶりの再会を果たします。このシーンでは、両者が火花を散らしながらも、物語の核心に迫る数々の秘密が語られていきます。
シルバーマンがキン肉族の祖先であるということ、そしてストロング・ザ・武道の正体こそが超人閻魔であり、また完璧超人始祖の最初のひとり"完璧超人・零式(パーフェクト・ゼロ)"ザ・マンであるという衝撃の事実が明かされました...!

ストロング・ザ・武道と悪魔将軍...! 静かに殺意をぶつけ合う師弟!
超人界のイレギュラーであるキン肉マンの処遇をめぐって、完璧超人と悪魔超人の大将同士が激突しようとしたその時、両者の間にネメシスが割って入りました...! ネメシスは武道の正体にとまどいを見せながらも、超人墓場と同じように武道を護るために悪魔将軍と対峙します。さらに悪魔六騎士との闘いを勝ち残った完璧超人始祖...サイコマン、ガンマン、ジャスティスマンの3人が姿を現しました。
さて、これで武道の前に立ちはだかる最後の門番ともいえる超人たちが揃(そろ)いました。無量大数軍の頭目であるネメシスだけでも、シリーズボスに匹敵する実力があるというのに、さらに上位集団ともいえる完璧超人始祖(パーフェクト・オリジン)が3人も...! はっきり言って、『キン肉マン』始まって以来最強の布陣といえるでしょう。
あえて告白しますが、僕は旧シリーズ贔屓(ひいき)の厄介なファンです。鳴物入りでやってきた新キャラに、アイドル超人が負けたら癇癪(かんしゃく)を起こして三日三晩大暴れするような読者ですよ。ですが...ですがね、そんな旧シリーズを愛するオールドファンから見ても、今回の敵たちは侮れない。いや、正直言って、完璧陣営の4超人を倒せる者の姿が、ちょっと思い当たらないくらい、本当に本っっ当に敵が強すぎる!!
そうなってくるともう、「こんなバケモノたちとの対戦相手に、どうにか推しの超人が選ばれないでくれぇ〜!」と天に祈ってしまいます。超人墓場が機能しない今、試合中で命を落とすことは、物語の永遠のフェードアウトを意味するのですから。
そんな緊迫した状況の中でいの一番に動いたのが、ザ・ニンジャでした。下等超人と挑発するサイコマンに飛び掛かるものの、直前の試合の怪我もあって即返り討ちに。そして、かつて超人血盟軍で同志だったブロッケンJr.に「生き残れ」と言葉を残して、病院へ運ばれました。『キン肉マン』はある意味、この世でもっとも生死感がアバウトな漫画だったかもしれません。しかし、ここから先は命綱なし...! どいつと当たっても生きて帰れる保証のない、死の抽選会が始まるのです。

サイコマンに返り討ちにされたザ・ニンジャ。バッファローマンとブロッケンJr.に
さて、あらためて正義・悪魔・完璧の3陣営の主力が集結し、3陣営がにらみ合います。ここの描写は見開きで描かれていますが、実は新シリーズの『キン肉マン』はバトル漫画でありながら、意外と見開きページが少ないんですよね。本当にここぞという場面でしか使われていない印象です。WEB連載なのでスマホで見る方も多く、片側のページだけで成立する構図を心がけているのが理由のひとつだとは思うのですが、それでもこのシーンは、禁を破ってでも見開きでぶちこみたかった、ということなのでしょう。納得、そして圧巻のド迫力シーンです...!! 
ゆでたまご先生の気概を感じる見開き!完璧・無量大数軍の急襲から始まった新シリーズの、決戦に向かう緊張感を漂わせる珠玉の一枚!
決戦を前に、委員長がリングを用意しようとすると、"許されざる世界樹"の中央塔が変形し、古代リングが現われました。黄金のマスク編の〝五重のリング〟を彷彿とさせる特設リングの登場に、血が滾(たぎ)ります。やはり、決戦の舞台はこうでなくては!

一目で古代リングの仕組みを看破した、ミートくんの冷静で的確な解説...!
そしてついに対戦カードが発表されます。先述した通り、敵陣は歴代最強の猛者(もさ)揃い......誰と当たってもまず無事では済まない〝死の抽選会〟です。双方の因縁の結果、ブロッケンJr.がサイコマン、バッファローマンがガンマン、テリーマンがジャスティスマン、ラーメンマンがネメシスと対決することが決定しました。
こちらも正悪連合軍オールスターの様相ですが、それでも勝利が確信できるカードはありません。それだけ、敵陣が強いのです! 特にブロッケンJr.が心配です...! ていうか、テリーの相手はジャスティスマン...!? いや、ちょっと待ってくださいよ! 確かに、アシュラマンの仇(かたき)を取るのはテリーの役目かもしれませんが、よりによってあのバケモノとぶつからなきゃいけないんですか!?
......取り乱してしまい、すみません。でも、ここまで試合前にハラハラさせることができるなんて、本当に『キン肉マン』って素晴らしい漫画だと思います。
4試合一斉にゴングが鳴らされると、さっそくバッファローマンとガンマンが正面から激突! 互いの角を何度もぶつけ合った末、ガンマンがバッファローマンに強烈な一撃を浴びせるところで次巻へと続きます...! 果たして正悪連合軍は始祖たちにどう立ち向かうのか、次回のレビューで詳しく語りたいと思います!
●こんな見どころにも注目!
ついに「超人閻魔」にして「ザ・マン」という正体が明らかになったストロング・ザ・武道。今シリーズのボスともいえる存在ですが、この巻で描かれたキン肉マンとの対話が、どこかほのぼのとしていて面白いです。武道は常に目を血走らせていますが、さすが元神なだけあって、基本的には紳士的です。キン肉マンと京都で再会するシーンも、まるで悪い子を叱るように接していて、歴代最強のボスでありながら、なんだか「近所に住んでる怒ると恐いけど優しいオッチャン」のような愛嬌がありますね(笑)。
構成/石綿 寛(樹想社) ©ゆでたまご/集英社
記事提供元:週プレNEWS
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