どうなる?都営大江戸線延伸“陸の孤島”に新駅構想 鉄道の空白地帯解消目指す【コラム】
イチオシスト

“陸の孤島”とも一部で呼ばれてきた大泉学園町(東京・練馬区)に、鉄道整備の動き――東京都は2025年10月、都営地下鉄大江戸線を光が丘駅から北西へ約4キロ延ばし、「土支田」「大泉町」「大泉学園町」の3駅(駅名は全て仮称)を設ける延伸計画の検討状況を公表しました。総事業費は約1600億円。鉄道空白地帯の解消に向けた動きとして注目されています。
各駅の間隔は光が丘~土支田約1.5キロ、土支田~大泉町約1.4キロ、大泉町~大泉学園町約1.1キロを想定しています。土支田駅は土支田通りの東側付近、大泉町駅は外環道との交差部付近の西側、大泉学園町駅は大泉学園通りの東側に設置する案です。終点の大泉学園町駅に折り返し運転用の引上げ線を整備するほか、既存の高松車庫を改修する計画もあります。

都によりますと、沿線のまちづくりが進んで利用者が増えた場合、開業から40年以内に累積損益が黒字化する見通しです。試算では1日あたり約6万人の利用増を見込んでいますが、採算の前提条件や詳細な数値は公表されていません。開業時期についても未定としており、今後の協議や検討の進展が注目されます。
延伸計画は「交通政策審議会答申第198号」において「地域の成長に応じた鉄道ネットワークの充実に資するプロジェクト」に位置づけられており、都は2023年度に庁内検討PTを設置、旅客需要の創出、コストの低減、財源の確保・活用の3つの観点から事業性の改善策を検討していました。
都営大江戸線とは
都営大江戸線は東京都交通局が運行する地下鉄で、営業距離は40.7キロ、駅数は38です。全区間が地下にあり、リニアモーター方式を採用しています。1991年に光が丘~練馬間が先行開業し、1997年に新宿まで延伸、2000年12月に全線開業しました。
2002年には汐留駅が開業し、新宿、都庁前、六本木、麻布十番、大門、月島、門前仲町、両国、飯田橋など都心の主要エリアを通り、JRや東京メトロとの乗り換えに便利です。住宅地の光が丘や練馬方面と都心を結ぶ“生活路線”として、通勤・通学客に広く利用されています。
大泉学園町はどんなまちか
延伸区間の終点として想定されている大泉学園町は、練馬区の北西部に位置する住宅地です。都立大泉中央公園や体育館、温水プールなど公共施設が多く、教育や福祉の環境が整っています。
ただし、西武池袋線の大泉学園駅や、東京メトロ有楽町線・副都心線の地下鉄成増駅、東武東上線の成増駅までは、いずれもバスで10~20分ほどかかります。地域の移動はバスや自家用車に頼ることが多く、朝夕の渋滞が課題となっています。練馬区は、区北西部に鉄道の空白地帯が存在するとして、長年にわたり新路線の整備を要望してきました。

大泉学園町のまちづくりは、1925年に発生した関東大震災の後に大泉学園通りを中心に碁盤の目のように整備されました。当初は大学の誘致を目指していましたが、計画は実現せず、学園という名前だけが残りました。
現在は閑静な住宅地として発展していますが、駅からは離れており、住民の多くがバスで駅に向かう生活を続けています。このため“陸の孤島”と呼ばれることもあり、延伸によってアクセスが大きく改善することが期待されています。
(写真:PIXTA)
鉄道チャンネル編集部
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