エコノミーでも飛行機の機内Wi-Fiは無料。無料化が進む『機内Wi-Fi』のいま
イチオシスト

かつて、飛行機の機内Wi-Fiは、ファーストクラスやビジネスクラスなど上級クラスの利用者には無料で提供される一方、エコノミークラスでは有料、または利用できないのが一般的でした。
筆者も先日、久しぶりにANAの国内線に搭乗した際、アプリを使って飛行中でも無料Wi-Fiが利用できることに驚かされました。

実はANAだけではなく、JALや外資系の航空会社も、エコノミークラスを含む全クラスでのWi-Fi無料化へと舵を切っているとのこと(航空会社によっては、無料利用に時間制限が設けられている場合があります)。
では逆に、なぜ、これまで飛行機でのWi-Fi利用は制限されてきたのでしょうか。
そもそもなぜ制限されていた? 飛行機でのWi-Fi利用

現在では多くの航空機で、フライトモード(機内モード)に設定することでWi-FiやBluetoothの使用が認められています。ただし飛行機での電波利用について、技術的な検証と規制緩和が進むには長い時間がかかりました。携帯電話やWi-Fiなどの電子機器から発せられる電波が、航空機のナビゲーションシステムや通信機器に干渉し、飛行の安全性に影響を及ぼす可能性が指摘されていたためです。
規制緩和について
日本の航空機内における電子機器の使用制限の緩和は、2014年9月1日から施行されました。緩和に伴い、携帯電話やスマートフォンなどの電子機器を「機内モード(フライトモード)」に設定すれば、離着陸時を含む常時、電源を入れて使用することが可能に。機内モードにした上で、Wi-FiやBluetoothの接続を個別にオンにすれば、機内Wi-FiシステムやBluetoothヘッドホンなどの機内機器同士の無線通信も可能になりました。
つまり、ANAやJALがエコノミークラスを含む全クラスで機内Wi-Fiを無料化できたのは、2014年の規制緩和から約10年を経て、ようやく実現した取り組みと言えるでしょう。
機内Wi-Fi環境整備にかかるコストについて

一方、電子機器の使用制限が緩和されても、実際に多くの乗客がフライト中に自由にWi-Fiを使えるようになるまでには、まだ時間がかかりました。従来は機材の導入コストや通信料が高額で、その費用を運賃に転嫁せざるを得ないケースが多かったためです。
その背景には、地上でのインターネット接続は基地局からの電波を利用しますが、太平洋横断など航路が海上に及ぶ航空機では地上基地局のカバーエリア外となることが挙げられます。そのため初期の機内Wi-Fiは、静止軌道衛星(GEO)を利用する方式が一般的で、通信距離が長く、遅延(レイテンシー)が発生しやすい環境でした。
こうした課題は、近年普及が進む低軌道衛星(LEO)による衛星インターネットの登場よって解消され始めたことも、エコノミークラスを含む全乗客が自由に機内Wi-Fiを楽しめる環境づくりの要因でしょう。
国内における機内Wi-Fiの無料化
日本の主要航空会社であるJALとANAの機内Wi-Fiについてご紹介します。
JAL

JALでは国内線・国際線ともにWi-Fiを無料で提供しています。なお、国内線は完全無料で、国際線はファーストクラス・ビジネスクラスは時間無制限、プレミアムエコノミーとエコノミークラスは1時間無料です。
ANA

ANAは国内線でWi-Fiが全クラス完全無料。国際線では一部が全クラス無料となっており、今後は国際線全体での無料化が計画されています。
機内Wi-Fiの高速化を後押しする衛星インターネット
国内外を問わず、多くの航空会社が全クラス無料での「高速」インターネット提供に踏み切れるようになった背景には、新しい通信技術の登場があります。その代表格が、SpaceX社が提供する衛星インターネット「Starlink」です。

先述した通り、これまでの航空機内Wi-Fiは主に地上基地局や高軌道の静止衛星を利用してきたため、通信速度や安定性に課題がありました。しかし、Starlinkは高度約550kmの低軌道に多数の小型衛星を配置することで、通信の遅延を大幅に低減。これにより、乗客は上空でも動画視聴やオンライン会議などをストレスなく利用できるようになりました。
さらにStarlinkのインフラを活用することで、高速かつ安定した通信を従来より効率的に提供できるようになりました。
総じて通信コストの構造が変わり、航空会社が全クラスでの無料提供に踏み切りやすくなっています。カタール航空やハワイアン航空などの一部の航空会社では、Starlinkの導入により接続自体を無料化している航空会社もあります。
エコノミークラスを含む全乗客への機内Wi-Fiの提供は、「データ通信無制限か否か」「利用時間に制限があるか否か」など、サービスの度合いは各社でさまざまですが、航空業界における大きなトレンドであることは間違いありません。
エコノミークラスの乗客であっても、フライト中、地上と変わらない快適さで映画をストリーミングしたり、ウェブ会議に参加したり、大容量のデータをやり取りしたりできる時代がすぐそこまで来ています。
機内Wi-Fiは、かつては「使えるだけでありがたい有料サービス」だった機内Wi-Fiも、これからは「あって当たり前の無料・高速インフラ」へと進化し、空の旅をより快適なものにしてくれるでしょう。
※サムネイル画像(Image:Shutterstock.com)
記事提供元:スマホライフPLUS
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