呂布カルマと政治「セコさを自覚していながらも、黙っていられない」
イチオシスト

『週刊プレイボーイ』でコラム「呂布カルマのフリースタイル人生論」を連載している呂布カルマ
ラッパーとしてはもとより、グラビアディガー、テレビのコメンテーターなど、多岐にわたって異彩を放っている呂布(りょふ)カルマ。『週刊プレイボーイ』の連載コラム「呂布カルマのフリースタイル人生論」では『政治』について語った。
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★今週のひと言「今、政治が面白く見られるようになった理由とは?」
今、政治が面白い。史上初の女性総理の誕生はもちろん、大小さまざまなスキャンダルや政変、タレント性を持った政治家たち、わが国の明日を左右するということをいったん隣に置いておけば、これほどネタと興味の尽きないジャンルはない。
でも、これは単に俺がそーゆー年になったというだけなんだろうな。
思えば俺が子供の頃も親は何が面白いかわからん国会中継とか政治ニュースをいつも見ていたわ。
若い頃は自分と友達のことぐらいしか考えていないし、基本的に退廃的なもんに惹(ひ)かれたり、漠然とこの世界がひっくり返ることを望んでいたりして、世の中がすさめばすさむほど良しみたいな考えだろう。実際、俺自身20代ぐらいまでは、そんな感じだったと思う。
成人という意味ではなく、しっかり大人になって地域社会とのつながりを持つようになると、また何より子を授かって親になると、自分事よりも子供たちにとっていい世の中を望むようになる。
子供が先か、仕事が先かわからんけど、しっかり働くようになれば、景気や納めた税金がどう使われるのかも気になっていくだろうし、そうなると当然政治に無関心ではいられない。
俺がやっとそのフェーズに入ったから「今、政治が面白い」とかほざいてるだけで、いまさらかよって先輩もいるだろうし、逆に一生そこに気づかないというか、興味を持たずに済むようなヤツもいるはずだ。
実際、目の前のことに集中していて、仕事なり遊びなりに時間を割いていて、なおかつ現状の暮らしに不満も疑問もなければ、わざわざ小難しい政治に触れることもないだろう。もしかしたら、それはそれで幸せなことなのかもしれない。
幸か不幸か俺には政治ニュースを楽しむ時間があり、支払った税金の行方が気になる程度には納税をし、平和を願いたいような家族がある。
そうなるとSNSや動画サイトで政治絡みのネタをクリックするようになり、おかげでアルゴリズムによって頼みもしないのに次から次へと政治関係の情報が流れてくるようになった。そして、それらは今の俺にとって無視できない内容なのだ。
最初こそ、いい年こいた大人の政治家同士の醜い言い争いや、裏のかき合い、中には胸の奥を熱くするような演説をエンターテインメントとして消費していたが、次第にそれだけでいいのかと疑問も浮かび始める。
俺みたいなニワカ政治ウオッチャーも、一日中SNSに張りついて政治絡みのポストに反応してるヘビーユーザーも、はたまた選挙行くぐらいなら遊び行くっしょ勢も、直接的にはみんな等しく選挙で一票分の力しか持たないのだ。
だからといって、自分が選挙に立候補してそれ以上の力を持ちたいかといわれると、みんなその根性はない。
その責任に堪える自信がないのだ。
いくら詳しくなろうが、SNSで講釈垂れようが、自分がその場に立たない限りは外野から石を投げているだけなのだ。
ならばいっそデモで直接? いや、めっそうもない。
有名人はなまじ数字の影響力を持っているから政治系のコメントをすることで世論を多少左右しているかのような錯覚を抱きやすいが、やっていることはセコいのだ。
そのセコさを自覚していながらも、黙っていられないときがある。
気軽に素人が口を挟めなかった時代の政治がうらやましい気さえしてくる。
撮影/田中智久
記事提供元:週プレNEWS
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