ロッテ新陣容で話題の「コーディネーター」ってどんな仕事?【山本萩子の6-4-3を待ちわびて】第191回
イチオシスト

プロ野球のコーディネーターについて語った山本キャスター
目が覚めた時、寒さに震えてなかなか布団から出られない日が増えました。本格的に冬の足音を感じる今日この頃、日米のプロ野球も本格的にオフシーズンに入りましたね。
MLBは歴史的な戦いとなったワールドシリーズを終え、ストーブリーグに突入。日本でも、各球団の来季の新陣容が明らかになってきており、シーズン中と同じようにニュースから目が離せません。
先日、SNSを沸かせたのが、ロッテの打撃コーディネーターに就任した26歳の矢沢大智さん。ファンは「え、誰だろう......?」となりましたが、私も失礼ながら、お名前を聞いたことがありませんでした。
記事で読んだ情報ですが、矢沢さんはプロや社会人を含め、どのチームにも在籍した経験がないとのこと。前職は立命館大学院の研究者で、ロッテにアナリストとして就職し、2026シーズンからは打撃コーディネーターを務めるそうです。
そもそも、コーディネーターって何でしょう。「なんとなくわかるけど、なんだかよくわからない」という方も多いのではないでしょうか。
「coordinate」は「調整する」「組織する」「間に立ってまとめる」「連携させる」などの意味ですが、ロッテの公式ホームページには、コーディネーター部門の主な役割について以下のような説明が載っていました。
【1】一、二軍監督、コーチと状況共有、全選手の状態、課題把握
【2】中長期的視点の強化施策策定、実施
【3】データを活用した課題抽出、解決策作成
【4】チームとフロント、その他のスタッフとの調整
【5】海外最新事情の収集
首脳陣や選手たちの間に立って、つないで、チームをデザインして......みたいな感じでしょうか。NPBでは、2020年代に入ってからよく耳にするようになったと記憶していますが、「コーディネーター」という役職がホームページに明記されているのは、ロッテ、ソフトバンク、阪神でした。
ロッテは2022年シーズンから採用され、統括コーディネーターに永野吉成さん、ピッチングコーディネーターに、のちに監督を務める吉井理人さんが就いています。
ソフトバンクは2023年シーズンから。初年度は2人でしたが、25年からは投手、野手、データサイエンス、メディカル、ストレングス&コンディショニング部門と、なんと合計11人ものコーディネーターがいます。資金に余裕のあるソフトバンクならではかもしれませんが、チームとして重視していることが伝わってきます。

最近のオフショット。野球が終わってしまって寂しいですが、時間ができたので久々に地元でのんびりお酒を飲みました。
阪神では、和田豊さんが2024年シーズン終了後、新設の「一、二軍打撃巡回コーディネーター」という役職に就きました。「コーディネーター」と名はつかずとも、似たような役割はこれまでもあったのかもしれませんね。
一方でMLBでは、コーディネーターは広く認知されています。現場とフロントの間に入るポジションとして、おそらく10年以上前から、「hitting coordinator」「pitching coordinator」の肩書きが存在していたかと思います。
特に選手育成の軸を統一することを目的に、マイナーで重視されていると聞いたこともあります。若手選手の育成は、どのスポーツでも大事なことですからね。
コーディネーターという仕事の輪郭がだんだん見えてきましたが、2022年からソフトバンクの投手部門コーディネーターを務める星野順治さんが、実際の役割や存在意義を語っている記事を読みました。
そこで語られていた大事なことは、「選手がどう進むべきかを明確にすること」とのことです。フロントとのミーティングや、コーチの考えを聞くこともあり、指導に一貫性が出ることが大きいと。
育成において重要なのは、フロントがどのような意図でその選手を獲得したかを踏まえ、育成の道筋を定めること。例えば投手なら、どのくらいのイニングを任せ、ローテーションを組んでいくかなどを決める。そうすることで、コーチは選手の指導方向が明確になるそうです。
以前、元ロッテの黒木知宏さんに聞いた話ですが、コーディネーターの役職が日本に取り入れられる前、2017年まで務めていた日本ハムの一軍投手コーチ時代に、同じような役割も担っていたとか。二軍との情報共有のための資料づくりなどもやっていたそうです。昨今は分業化が進んでいますが、コーディネーター職の存在感が増しているのも"時代の波"と言えるのかもしれません。
ちょっと話はそれますが、ソフトバンクでは2025年シーズンから「メンタルパフォーマンスコーチ」が導入されました。リーグ優勝時のインタビューで、選手の口からもメンタルコーチの存在の大きさが語られていましたが、MLBでもポピュラーな役職ですし、2年前に甲子園を制した慶應義塾高校の野球部でも導入されて話題になっていましたね。今後、さらに増えていくことが予想されます。
近代野球はデータがかなり重要ですし、若い方が参画することも多くなるかもしれません。ロッテの矢沢さんも26歳。野球というスポーツの進化に伴い、求められる力が変わってきているのが面白いですね。
そして、プロアスリートとしての経験がなくても、「プロ」としてスポーツに関わることができる。もしタイムスリップをして、小学生の頃の自分に会うことができたら、「こんな道もあるよ」と伝えると思います。野球を面白くする仕事がどんどん増えていったらいいですね。
それでは、また来週。

構成/キンマサタカ 撮影/栗山秀作
記事提供元:週プレNEWS
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