かつての世界1位が“左打ちパッティング”で11年ぶり復活V「夢は諦めてはいけない」 ヤニ・ツェンの“今”
イチオシスト
元世界ランキング1位、36歳になったヤニ・ツェン(台湾)が復活優勝を遂げた。母国・台湾で開催されたLET(欧州女子ツアー)「ウイストロン・レディスオープン」がその舞台。悪天候のため36ホールに短縮された大会では、第1ラウンドで「63」をマークしすると、最終ラウンドも「67」。通算14アンダ―で2位に4打差をつける圧勝だった。
勝利を決めた18番グリーンでは、家族と多くの友人がかけつけウォーターシャワーを浴びた。「トロフィーを掲げることを本当に長い間待っていた」と主役は感無量。「母国で、家族と友人の前で勝ててこんなにうれしいことはない。『自分の夢は絶対に諦めてはいけない』というのを見せることができた…」。そう言って、声を震わせる。
メジャー5勝を含む米女子ツアー通算15勝。2011年2月から13年3月まで109週間連続で“世界ランキング1位”の座にも就いた。22歳でのメジャー5勝はタイガー・ウッズ(米国)をしのぐ最年少記録。抜群の飛距離とショット力を武器に戦い、誰もがツェンの女王時代が続くと疑わなかったが、「スランプ」は突然やってきた。
「練習場でできることがコースでできなくなった」とツェンは振り返る。やがてそれはショートパットが入らない「イップス」へとつながることになる。さらにケガも追い打ちをかけた。19年には臀部の痛みが左脚にまで広がるなど、苦しい時間を過ごしてきたが、それでもツェンは諦めなかった。
「シェブロン選手権」はクラフト・ナビスコ選手権という名称だった10年に制覇。現在の「KPMG全米女子プロ選手権」は08、11年と2度勝っている。そして10、11年には全英を連覇。この3大会に関しては、歴代優勝者のカテゴリーで出場権も持っている。
今年4月には、「全米女子オープン」の予選会を突破。5月29日にエリンヒルズで開幕した同大会に9年ぶりに出場したのだが、その時は何よりグリーン上だけ左打ちでパットする姿が注目を集めた。
ツェンが左でパットを始めたのは昨年のこと。新しくタッグを組んだコーチ、ブラディ・リグス氏の勧めによるものだった。理由を聞かれたツェンは「長い話を手短に言うと、右打ちのパッティングでは2度と勝てないと分かっていたから」と笑った。試合で初めて試したのは昨年末の台湾での試合。「最初のホールで1メートルを沈められたのも信じられなかった」とも話す。その大会では1.5メートルを一度も外さず、以来「グリーン上は左打ち」で戦っている。
今季の米女子ツアーは歴代勝者と「ツアー勝者」の資格でここまで9試合に出場。予選通過を果たしたのは「AIG女子オープン」の63位だけだった。4306日ぶりの勝利でLETのツアーメンバー資格を得たツェン。「この情熱がどこから来ているのか分からないけど、自分がどこまでできるのか、確かめたい」とツェンは大きく胸を張った。(文・武川玲子=米国在住)
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