“女王マジック”を点灯させた佐久間朱莉の圧倒的V 世界トップ50にも大前進
イチオシスト
<NOBUTA GROUP マスターズGC レディース 最終日◇26日◇マスターズゴルフ倶楽部(兵庫県)◇6562ヤード・パー72>
異次元のゴルフだった。72ホールで2イーグル、23バーディを奪い、ボギーは2個。2位に11打差をつけるトータル25アンダーで、佐久間朱莉が2億円大会を制した。4月の「KKT杯バンテリンレディス」での初Vには、2021年7月のプロデビューから123試合を要したが、4試合後には2勝目、その5試合後には3勝目を挙げた。そこから16試合。女王候補に成長した22歳には、わずか4カ月足らずのブランクですら、長く感じていたようだ。
「早かったほうだと思うけど、1、2、3とポンポンと勝てたので、それからすると長く感じました。でも、この4勝目に向けて、いろいろなことを考えて行動して、それを繰り返してきたことがよかったと思います」
3勝目から4勝目までの間には「日本女子オープン」の2位などトップ10入りは6試合ある。自己分析した優勝に届かない原因のひとつが、アライメント(向き)のズレだった。今週は開幕前に「少し右に向きやすい」というクセを修正。無意識にボールをつかまえすぎる動きをなくし、ショットに本来の切れ味と方向性が戻った。
その象徴的な一打が、3番パー4の残り141ヤードをピン左2メートルにつけた8番アイアンでの2打目だった。グリーン左奥のピンに対し、1ヤードほど手前だと傾斜で手前に戻され、1ヤードほど奥だとグリーンをこぼれ出る“激ムズ”の位置にピンは切られていた。
そこで繰り出したのが、ここしかない-というピンハイ左を狙い打ちした完璧な一打。「8番アイアンだと距離的にギリギリだったけど、奥は消して、段下でもいいと思って打ったショットが強めに入ってくれました。すごくいい手ごたえだった」。まさに点で打てるショットで初日から首位に立ち、国内女子の4日間大会では史上初となる年間2度目の完全Vを達成した。
今回の優勝で、現在、自己最高の57位にランクされる世界ランキングはさらにアップする。53位で日本ツアー勢の最上位の河本結、56位で2番手の小祝さくらを抜いて、トップに立つことは確実。50位以内に躍進する可能性も高いが、そこは佐久間自身もしっかり頭に入れていた。
「優勝するうえで、特に人を意識することはないです。米ツアーに出ている選手に勝ったからといって、どうかというのもない。ただ、世界ランクを考えると、今週勝ててよかった。世界ランク上位者が出場する試合で勝てれば、ポイントも少しは加算される思うので」
苦い経験をした佐久間ならではのコメントだった。今年の「全米女子オープン」は日本での最終予選会は日程などを考慮して回避し、世界ランキング75位以内の資格で出場を狙ったが、わずかに届かず出場できなかった。
世界ランキング上位者が出場すればするほど大会の格付けは上がり、世界ランキングの基となるポイント配分も高くなる。今大会には同じ埼玉出身で、同い年の明愛、千怜の岩井姉妹が出場した。今季から米ツアーに主戦場を移したツインズの世界ランキングは姉・明愛が24位で、妹・千怜が30位。ジュニア時代からのライバルを圧倒したことよりも、ツインズが参戦したことによる“恩恵”をよろこんだ。
来年も軸足は日本に置く。「海外メジャーはスポットで行けたら」という佐久間にとって、世界ランキングはそのための重要なチケットとなる。今年の出場資格でいうと、50位以内で出場できないメジャーは「シェブロン選手権」の40位以内だけ。「年間女王になるために5勝はしたい」という目標を達成できれば、メジャー全試合出場にも一歩近づく。
11月6日からの日米ツアー共催「TOTOジャパンクラシック」で優勝すれば、昨年の竹田麗央のように最短ルートで米ツアー切符を手にすることができる“オプション”も視野にいれるが、日本で強固な土台をつくり、メジャーで結果を出して海を渡るのが“佐久間ルート”。そのためにも、シーズン開幕前の「初優勝」から、大きくバージョンアップして新たな目標となった「年間女王」のタイトルは誰にも渡さない。
自身初の完全Vを達成した5月の「ブリヂストンレディス」から1位を守っているメルセデス・ランキングは、2位の神谷そらに541.47ptの差をつけ、独走態勢に入ってきた。今季も残り5試合。日本から世界を目指す佐久間が圧倒的な力で、女王獲りのマジックを点灯させた。(文・臼杵孝志)
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