【プロ野球ドラフト2005】10月23日ドラフト当日にドヤれる(!)注目選手のトリビア集
10月23日に実施されるプロ野球ドラフト会議。あの目玉選手はバレーボール一家! など逸材たちの家族エピソード、裏話、小ネタ......
10月23日に実施されるプロ野球ドラフト会議。読んでおくと当日がもっと楽しくなる、注目選手たちのちょっとしたウラ話や小ネタをご紹介します!
■今年のドラフトの目玉はこの選手!今やプロ野球ドラフト会議はチームの命運を左右するビッグイベントと言っていい。円安の影響もあり、条件のいい外国人選手を補強することは至難の業。
日本のスター選手はFAで国内移籍ではなく、アメリカンドリームを目指すようになった。チーム成績に最も直結する選手補強は優秀な新人を発掘するドラフト会議でということになる。
今年の10月23日に実施されるドラフト会議で名前を覚えておきたい人材は誰か。まず重複1位指名確実の大物として立石正広(創価大)の名前を挙げておきたい。
今年は大学球界に上位指名候補がひしめく「大学生豊作イヤー」だが、立石の注目度はズバぬけている。すでに広島の田村恵スカウト部長が1位指名を公言。立石のような右投げ右打ちの強打の内野手は各球団の需要が高いため、競合は避けられない情勢だ。
立石正広(たていし まさひろ)【創価大】右投げ右打ちの強打の内野手
「ドカッ!」と爆発するかのようなインパクト音からして、並の打者とはまるで違う。プロの世界で順調に育てば、いずれは本塁打王を狙えるスラッガーになるはずだ。
そんな立石だが、実はバレーボール一家に育ったという意外な側面がある。母・郁代さん(旧姓・苗村[なむら])はバルセロナ五輪女子バレーボール代表。長姉の沙樹さん(リガーレ仙台)、次姉の優華さん(クインシーズ刈谷)もバレーボール選手だ。
父・和広さんも大学までバレーボールをプレーしていたが、幼少期は野球に親しんだ。そこで長男にも野球を勧めたところ、学生トップクラスの強打者になってしまった。
ちなみに、立石は「野球の次にバレーボールが大好き」と明かすほどで、ジャンプ力は白眉。長打力だけでなく、高い身体能力でもファンを魅了しそうだ。
今年は人材不足といわれる高校生では、石垣元気(健大高崎高)が筆頭候補になる。高校生ながら常時150キロ台を計測する、近年まれに見るスピードキング。その才能にNPB球団だけでなく、MLBスカウトも注目している。
北海道登別市出身で寒さに強い。健大高崎の青栁(あおやぎ)博文監督が「冬場の練習でもタンクトップ姿でうろついているので、風邪をひかないか心配」と明かしたことも。
石垣元気(いしがき げんき)【健大高崎高】高校生ながら常時150キロ台を計測する右腕
石垣を巡っては「最速158キロ」というセンセーショナルな数字がメディアによって広められたが、実は裏事情がある。石垣は実際に昨秋の関東大会で158キロの数値を表示させている。だが、試合会場だった神奈川・等々力球場は実際のスピードよりも大きい数字が出やすい「盛りガン」として有名だった。
バックネット裏でスピードガンを構えたスカウト陣からは、「誤計測じゃない?」という声も漏れた。石垣本人もまたメディアに踊らされることなく「あれは誤計測です」と冷静に受け止めている。いずれ近い将来、「158キロ騒動」を忘れさせるような驚愕の球速をマークするかもしれない。
甲子園を沸かせたスター候補では奥村頼人(横浜高)もプロ志望届を提出した。今春のセンバツでは2年生の怪物・織田翔希との二枚看板で優勝。今夏は投手としてはコンディション不良に終わったものの、打者として大暴れした。指名順位によっては、強豪社会人に進むことが有力視されている。
奥村頼人(おくむら らいと)【横浜高】甲子園を沸かせたスター左腕
奥村の気骨を象徴するエピソードとして、小学5年時の「家出事件」を紹介したい。野球の練習のため遅い時間に帰宅した奥村少年は、母から「ウチの子じゃない」と叱責された。
すると、奥村は「新しいお母さんを探しに行く」と宣言して出奔。約30㎞もの道のりを歩き続け、警察やメディアを巻き込んで大捜索が始まりかける直前に発見、保護された。
なお、奥村が父・倫成さんに家出した理由を語ったところ、倫成さんから「オレも誘ってよ」と返されたという。
倫成さんは滋賀県内で知る人ぞ知る名指導者で、野洲高監督時代の2012年夏には滋賀県大会準優勝。現在は八日市高監督を務め、今夏は滋賀県大会ベスト4と甲子園まであと少しに迫った。
奥村は「父から学ぶことは多いです」と尊敬の念をにじませながらも、「どっちが先に甲子園に行くかと言い合っていたので、勝ったなと思いました」と負けず嫌いな一面をのぞかせている。
■国際色豊かな逸材たち!前出の立石に限らず、今年はスラッガー系の人材がそろっている。国際色豊かでスケール抜群の人材を紹介しよう。
今秋にかけて評価が急上昇しているのはエドポロ・ケイン(大阪学院大)だ。身長190㎝、体重101㎏の巨体は迫力があり、スカウトの間では「万波中正(日本ハム)に近いタイプ」という声も上がる。
父はナイジェリア人、母は韓国人で、兄のキングさんは総合格闘家として現在はRIZINを主戦場に活躍。エドポロは「キングのジムでトレーニングすることもありますよ」と語る。天才肌のイメージが強い兄に対し、弟は努力家で通っている。
ドラフト会議を前に打撃技術が向上したことについて質問した際、エドポロは自身がいかに猛練習を積んできたかを強調した後、印象的な言葉を放っている。
「打つことは決まっていたんで。あとは打席に入って、ヒットという結果を受け取りに行っただけですね」
高校生で要注目の大砲候補といえば、櫻井ユウヤ(昌平高)がいる。身長180㎝、体重87㎏とたくましい体躯を誇り、丸太のような太ももが印象的。高校通算49本塁打を放った。
櫻井(さくらい)ユウヤ【昌平高】高校通算49本塁打を放った未来の大砲候補
櫻井の両親はタイ国籍。現在は離婚しており、母・リンダさんはシングルマザーとして、異国の地、日本でユウヤと兄を育てた。週末は息子を応援するため、平日に働けるようにとタイ家庭料理の弁当店をオープン。すると店は繁盛し、現在は客のリクエストに応じる形で平日のランチ営業を始めた。
「野球のルールはホームランと三振しかわからない」と笑うリンダさんだが、櫻井が本塁打を放つと誰よりも大きな声で絶叫する。櫻井は「恥ずかしいけど、励みになります。もっと打ってもっと喜ばせたいですね」と笑う。
櫻井がプロに入団し、華やかな舞台で大アーチをかける日が来れば、きっとリンダさんの絶叫がスタジアムにこだまするはずだ。
衝撃の飛距離の持ち主といえば、大坪梓恩(しおん/石川ミリオンスターズ)の名前も外せない。ひと言で言えば「独立リーグ史上最強の怪素材」。身長190㎝、体重110㎏の巨体から、まるでピンポン玉でも打つかのように大飛球を連発する。
母方の曽祖父がアメリカ人で、パワーだけでなく俊足も武器にする。今年でまだ21歳という若さも魅力だ。
エリートコースとはかけ離れた球歴を歩んできた。千葉の新興勢力・千葉学芸高に入学したものの、1年秋の時点で中退。千葉学芸の同期には有薗直輝(現日本ハム)がいた。有薗は高校通算70本塁打を放つ超高校級のスラッガーだったが、大坪は中退するまで有薗を上回るペースで本塁打を量産していたという。
通信制高校に転校後は、「野球はもういい」としばらくブランクが空いた。教師の勧めを受けて社会人クラブチームのヌーベルベースボールクラブで野球を再開し、野球への情熱を取り戻すと、岐阜に新設されたスポーツ専門学校・日本プロスポーツ専門学校へ。
フードデリバリーのアルバイトをこなしながら2年間学んだ後、石川ミリオンスターズに練習生として入団。「初めて技術的な指導をしてもらった」と大坪は語る。
入団2年目となる今季は日本海リーグ1位タイとなる8本塁打をマーク。粗削りながらバットスピードはMLBでもトップクラス。ドラフト指名される可能性は十分ある。
怪素材という意味では、エミール・セラーノ・プレンサ(幸福の科学学園高)も負けていない。ドミニカ共和国からの留学生で、父は日本球界で投手として活躍したドミンゴ・グスマン(元中日ほか)。
中日時代の恩師である森繁和(元西武)が幸福の科学学園の特別コーチを務める関係からエミールは2年前に来日。野球を始めたのが13歳と遅かったこともあり、日本の細かな野球に順応できず苦しんだ時期もあった。
それでも、同時期に来日したユニオール・エルイン・ヌニエス・ジャケスと励まし合い、共に急成長。今夏の栃木大会3回戦・小山西(おやまにし)高戦では、1点ビハインドの9回裏に、エミールが起死回生の同点ソロ弾。さらに延長11回裏には、再びエミールがサヨナラ満塁弾を放り込んだ。
なお、父・ドミンゴは元投手だったにもかかわらず、エミールは「お父さん、バッティングを教えてくれた」と話している。ドミンゴといえば、日本時代に18打席連続三振という世界ワースト記録を樹立している。そんなドミンゴの息子が超人的なパワーを誇るスラッガーに育つのだから、運命とは不思議なものだ。
■連続指名記録の見える学校も!エミール以外にも、強烈な個性を持つ「2世選手」がいる。2代続けてのサブマリン・渡辺向輝(東京大)だ。
父・俊介(元ロッテ)はNPB通算87勝を挙げ、WBCでも2回の世界制覇を果たしたアンダースローだった。その息子である向輝は幼少期より学業優秀で、進学校として知られる海城中・高に進学。大学受験では、東大理科二類に現役合格した。
渡辺向輝(わたなべ こうき)【東京大】元プロ野球選手を父に持つアンダースロー投手
渡辺の快進撃は東大進学後に始まった。身長167㎝、体重63㎏と小柄な体格ながら、アンダースローのメカニズムを徹底的に研究。
理系らしくアンダースローに関する論文を読みあさり、どうすれば打たれないかを追究した。大学3年秋には法政大戦で完投勝利を収め、4年時には大学日本代表候補合宿に招集されている。
渡辺は人懐っこい表情で「完全に理詰めでアンダースローをつくってきました」と振り返る。本気を出せば130キロを超える球速を出すことも可能だが、「シンカーとの変化量の差を最適化するため」という理由で「スピードを出すにしても123キロまでと決めている」と語る。
プロ志望届を提出し、支配下でのドラフト指名があった場合はプロ入り。指名漏れの場合は一般就職する意向を示している。ユニークな2代目サブマリンが誕生するか。
逆に王道のエリートコースを歩む選手たちも、ドラフトイヤーを迎えている。
今や高校球界の大横綱となった大阪桐蔭高からは森陽樹(はるき)と中野大虎(だいと)のダブルエースがプロ志望届を提出。今年で同校から8年連続でのドラフト指名が有力視される。大学に進学したOBでも、繁永晟(しげなが・あきら/中央大)、花田旭(あさひ/東洋大)、野間翔一郎(近畿大)がドラフト候補に。
また、大阪桐蔭では控えだった山下来球(ききゅう/国士舘大)が東都2部リーグ通算100安打を達成するなど大学でブレイク。「育成でもいいからプロに行きたい」と強豪社会人からの誘いを断ってまでプロ入りにこだわっている。
さらに歴代最長を更新する16年連続ドラフト指名の可能性を秘めるのが、東京六大学リーグの名門・明治大。今年も記録更新は確実だが、それどころか未曽有の指名ラッシュに沸くかもしれない。
最有力視されるのは捕手の小島大河。天才的な打撃センスが評価されており、上位指名が予想される。ほかにも安定感抜群の左腕・毛利海大(かいと)、速球派リリーバーの大川慈英、今秋に故障から復帰を果たしたポテンシャル型左腕の久野(ひさの)悠斗、故障さえなければドラフト1位指名が有力視された大型右腕・髙須大雅(ひろまさ)と投手陣も多士済々だ。
小島大河(こじま たいが)【明治大】天才的な打撃センスが評価されている捕手
10月23日はどんな一日になるのか。粛々と進む会議の裏側では、有望選手たちの熱いドラマが進行している。
取材・文/菊地高弘 写真/アフロ
記事提供元:週プレNEWS
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