「悔しいと、残念しかない」 地元で3連覇へ―宮本勝昌が魅せた“奮闘劇”
<ファンケルクラシック 最終日◇19日◇裾野カンツリー倶楽部(静岡県)◇6986ヤード・パー72>
「悔しいと、残念しかないですよ」。20ホールの激闘を終えた宮本勝昌の表情には、勝ち切れなかった無念さが、ただただにじんだ。
地元で3連覇がかかっていた。大会開催前から宮本のそばを通るひとたちがエールを送る日々。「会う人、会う人に声をかけてもらえるのは本当にうれしいですよ。そう言ってもらえるうちが華だと思っています」。かけられる声には素直によろこんだ。
それでも、やはり記録への重圧は大きい。達成を果たせば、2001〜03年大会を制した髙橋勝成に続く史上2人目の快挙だった。「連覇とか2連続優勝とか、試合が始まるまではこうやって言っていただけるのでありがたいですが、全くプラス材料にはなりません。あすからはおそらく、自分のなかの(快挙への)意識は完全に消えてスタートを迎えると思います」。気負わない姿勢で大会に挑んだ。
初日は「68」で4アンダー・6位タイ発進。2日目は雨が降ったり止んだりと天候が優れず、全体的にスコアが伸び悩むなか「70」をマークした。会場となる裾野カンツリー倶楽部はグリーンのアンジュレーションが効いていてライン読みが容易ではない。そこに湿った空気が入ることで難しいコンディションとなった。
それでも「みんな同じ状況。自分の打ち方もいまいちのパッティングが多かった。なるべくしてなった結果」と、どんな場面でも対応できなかったのは自身の実力不足だと、宮本らしい姿勢を示していた。唯一の心残りは「バーディをいっぱい取って、できることならトーナメントリーダーで1打でもリードして最終日を迎えたかった」ということ。最終日は首位と2打差の3位タイから、最終組の1つ前の組で迎えた。
この日の宮本のプレーは、出だしから攻めの姿勢を貫いた。家族、地元ファンを含め、多くのギャラリーが宮本の組についていた。そのなか、2番でバーディを先行させるも、そこからは8番までパーが続いた。
「18ホールを同じフィーリングでやり続けたときはなかなかなくて、うまくいくホールと上手くいかないホールって必ず続くんですよね。前半はうまくいかないホールがずっと続いていて、そこをパーでしのげて」。前半はショット、パッティングと葛藤しながらも9番から3連続バーディ奪取。トータル10アンダーで単独首位に浮上した。
「後半はバーディをいっぱい取ることができたので、そこは一日を通してやれば、粘り強くやっていたのかなと思ったんですけど、最後は詰めが甘いにつきますかね」。14番で1メートルのパーパットを外してボギーを喫したが、直後の15、16番で立て直し、再び単独トップに返り咲いた。しかし、2打リードで迎えた17番で3パットの痛恨ボギー。それでも、2位に1打リードで最終18番パー5に突入した。
3メートルのバーディトライ。下りのスライスラインのパットは、カップの右側を通過し、パーでホールアウト。1打リードのままクラブハウスリーダーとして後続で最終組のタマヌーン・スリロット、プラヤド・マークセン(ともにタイ)のプレーを見守った。その二人はバーディを奪い、勝負は3人による18番でのプレーオフにもつれこんだ。
緊迫感漂うプレーオフ1ホール目は全員パー。2ホール目、先にマークセンが2打目をグリーン右のバンカーに入れた。ただ宮本は「マークセンを見ていても、真ん中に乗せておけばいいというのも考えていましたけど、緩みましたね」と、235ヤードの2打目を5番ウッドで放ったショットがカート道で跳ねて、グリーン右へ。隣接する練習グリーンへと転がって行った。
崖下からの状況。「高さはどっちかなと思いながら、58度で低く打ったほうが良い」とイメージした。しかし、ピンが見えない70ヤードの3打目はわずかにダフり、グリーン手前のバンカーへ。4オン2パットのボギーを喫し、この時点でパーを守ったタイ勢2人に敗退。3連覇への挑戦は終わった。
ただただ、悔しさが溢れる。「何事も負けるのは悔しいし、優勝以外はやっぱり…。この気持ちは多分これからも続くと思うので、きょうは多分、悔しい一日がもうちょっと続きそうですね。いまが(午後)3時だから…。また次の試合もありますから、そこに向けてまたやります」。レギュラーツアー通算12勝、シニアツアー4年目にして通算9勝を挙げるトッププレイヤーは、最後まで表情を変えることなく、想いを明かした。
この宮本の奮闘ぶりに、会場にいたギャラリーからは大きな拍手が送られた。取材対応を終えると、マスター室の前で髙橋勝成に会った。「3連覇ってやっぱりすごいです! できませんでした! 」と勢いよく、深く頭を下げる。それに髙橋は、宮本の左肩に手を置いて、なにか言葉をかけていた。内容は聞こえなかったが、その姿にも胸を打たれた。
残り4試合となった残りのシーズンの目標は「福岡シニアの優勝ですね。賞金王は、(1位、2位でも)どちらでもいい。福岡シニアの優勝ですね」。2023年の「福岡シニア」では10位タイで迎えた最終日にコースレコードとなる「62」をマーク。日大ゴルフ部の同期である片山晋呉と「初めて」となるプレーオフで優勝争いを演じ、バーディを奪い勝利した大会だ。そんな熱戦を繰り広げた思い入れのある大会が次戦となる。
宮本にとって、賞金ランキングでの戦いはトップ2に入ることを目指す。例年通りであれば、シーズン終了時点の賞金ランク上位4位までの選手には翌年の「全米シニアオープン」、「全米プロシニア」、さらに同10位までの上位2名には「全英シニアオープン」の出場権が与えられてきた。
先月、米国男子シニアツアー(PGAツアーチャンピオンズ)に参戦するための予選会(QT)の廃止が決定。宮本はこれまで2023年、24年と2度挑戦しており、今年も出場を予定していた。そのとき、「いままでは10月序盤まで(賞金ランキング)最上位者でいれば最終予選(QT)に行けると思っていたのが、(最終戦の)指宿が終わった時点で上位2位にいなきゃいけないことに変わった。そこに気持ちは切り替えました」と明かしていた。
だからこそ、来季のメジャー3試合に出て「25万ドル稼ぐこと」がいまの目標。「そうすると、ランキングが(プレーオフに出場できる)72位以内に入ると思うんです。そこでもう1回“大当たり”すると、翌年のシード権を取ることができる」と、これまでの成績から予測して道筋を立てている。現在、賞金ランクトップの宮本は“賞金王”を狙うよりもトップ2を維持して終えることを念頭に置いている。
「どのような大会でも優勝を狙う」というのが宮本のスタイル。今回の悔しさを糧に、まずは思い出の舞台で大会2勝目を果たす。(文・高木彩音)
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