「日本オープンよりシニアを選択した」 “たまちゃん”こと T・スリロットは今季2勝目で海外メジャー出場へ前進
<ファンケルクラシック 最終日◇19日◇裾野カンツリー倶楽部(静岡県)◇6986ヤード・パー72>
最終日はトータル8アンダーの単独トップからスタートした“たまちゃん”ことタマヌーン・スリロット(タイ)。しかし「ドライバーが暴れて」なかなかスコアを伸ばすことができず、14番ホールでは1つ前の組を回る宮本勝昌と、同じ最終組のプラヤド・マークセン(タイ)に3打のリードを許す展開。「その時点で絶対勝てないだろう」と諦め気味だった。
しかし、終盤の15番、17番、18番でバーディを奪って土壇場で追いつき、トータル10アンダーで並んだ宮本とマークセンと3人のプレーオフに突入した。
18番パー5の繰り返しで行われたプレーオフ。1ホール目は全員パーとして、続く2ホール目で宮本がグリーンを狙った2打目を右に曲げて崖下の10番に落とし、4オン・2パットのボギーで脱落。大会3連覇の偉業はならなかった。そして3ホール目、今度はマークセンの2打目が右のOBゾーンに消えてボギーとし、プレーオフでは3ホールとも3オン2パットのパーとしたスリロットが、9月の「日本シニアオープン」に続く今季2勝目、シニア通算3勝目を挙げた。
今季はシニアツアー8戦に出場してトップ10を外したのは1度だけ。直近の5試合では、4位タイ、優勝、2位、5位、優勝と好調を維持。その強さの要因は「ドライバーの安定」と「パットの上手さ」にある。
2年前までは曲がりの大きいドローが持ち球だったが、「昔はフックもスライスもときどき出ていた。それでスイングを変えた」とスイング改造に着手。ドライバーではインサイド・アウトの軌道でボールを包み込むように打っていたのを、今はヘッドを真っすぐ出すように修正した。それにより「曲がり幅が少なくなり、コントロールできるようになって、良い成績を残せている」と効果を実感する。
ドライバーの曲がりを抑えることで、飛距離も20ヤードほどアップ。現在のドライバーのキャリーは270~280ヤードで、ランを入れると290ヤード前後になる。ほとんどのパー5で2オンを狙えるため、バーディチャンスが増加した。
そして、スリロット最大のストロングポイントはパッティングだろう。平均パット数はただひとり1.6台の1.6741。2位の宮本は1.7170だから、飛び抜けた数字となっている。「たまちゃんスタイル」と笑顔でいうパッティングは独特で、上体をかがめるようにして重心を低くし、右肩を下げてハンドファーストに構えて打つ。「顔を起こさずに右目でカップを見ると、ラインが見える。自然とハンドファーストになった。それがずっと変わらないスタイル」と自身のパッティングを説明する。
さらにパットのストロークでは、ほとんどフォローを出さずヘッドをボールにぶつけていく。「フォローは少しだけ。パンチ気味に打つ方がやさしいし、方向性も出る」。極端なハンドファーストに打てば、ロフトが立ち過ぎて芝目の影響を受けそうだが、フェースもスタンスも少しオープンにすることでそれを緩和し、コロがりを良くしている。
今日の最終日は、アップダウンのある裾野カンツリー倶楽部を歩き続けた疲れで、改善したはずのドライバーの精度を欠いたが、15番ではグリーンエッジから5メートル、17番では二段グリーンの下の段から上の段のカップに打っていく15メートル、18番では下りの4メートルと、難しいラインを次々と沈めてプレーオフに持ち込み、「自分の特長であるパットが生きた」と胸を張る。
この優勝により1400万円を加算すると獲得賞金は4246万5500円となり、賞金ランキングは3位から2位に浮上。トップの宮本には約78万円差まで迫った。日本シニアオープンの優勝で今大会と同週に行われていた「日本オープン」の出場資格を得たが、「今年の目標は海外メジャーに行ける賞金ランキング4位以内なので、日本オープンよりもこちらを選択した」とシニアツアーを優先。一番良い結果につなげた。
例年通りであれば、賞金ランキング4位以内に入ると、来年の「全米プロシニア」と「全米シニアオープン」の出場権が得られる。また、賞金ランキング10位以内の上位2名には来年の「全英シニアオープン」への出場チャンスもある。このままの順位で終えれば、海外メジャー3試合に出場できる見込みだ。
シーズンは残り4試合で、賞金ランキング4位どころか、賞金王の可能性まで見えてきた。宮本との差を伝えると「来週抜いちゃうよ!」と色気を出す。次週の「福岡シニアオープン」で連勝して、一気に賞金ランキングトップの座を狙う考えだ。
大会期間中は「キャディの息子はラーメンが好きで、僕は唐揚げとチャーハンがタイ料理に近いのでよく頼んでいたよ」と、静岡県のご当地中華『五味八珍』に毎日通っていた。タイ料理では定番のナンプラーに唐辛子が入った辛いソースを持ち歩いて料理にかけて食べるのが“たまちゃん”流。最後は「アリガトウゴザイマス。ジャパン、ダイスキー!」と言って記者たちを笑わせ、満面の笑顔で会場をあとにした。
<ゴルフ情報ALBA Net>
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