今季のタイトル争いで議論に! 意外と知らない「セーブ」の条件【山本萩子の6-4-3を待ちわびて】第187回
セーブの条件について語った山本キャスター
みなさんこんにちは、野球大好き山本萩子です。
2025年のペナントレースも幕を閉じましたが、新人賞などを除く各タイトルも確定しました。その中で特に熾烈だったのは、セーブ王のタイトルです。最終的に巨人のライデル・マルティネス投手と、中日の松山晋也投手が分け合いましたが、その行方は最終戦までもつれました。
ふたりが46セーブで並んだ状態で迎えた、10月1日の巨人vs中日戦。巨人が9回まで5点をリードしていましたが、9回から登板した宮原駿介投手が2アウトから2ランホームランを許し、3点差になります。
巨人の勝利ムードが漂う中の一発に、「このまま追いつけ」と勢いに乗る中日の応援団。しかしマルティネス投手は登板せず、そのまま試合は終了しました。
セーブがつく条件を、「リードが3点以内の場面で登板し、リードを守って試合を終える」のみだと認識していると、「なぜ3点差になったのに、マルティネス投手を登板させなかったんだ」となりますよね。この日、セーブがついたら単独でセーブ王になれたわけですから、「なんで?」という声が多く上がったようです。
なぜマルティネス投手は登板しなかったのか――。
あらためてセーブの条件を確認したのですが、これが意外と複雑なので、あらためてみなさんと復習させてください(間違いがありましたらご指摘ください!)。
"先発至上主義"の時代は、「先発・完投こそが投手の仕事だ」と認識されていました。しかし、分業制が進むにつれて試合を締める投手の重要性が認識されるようになっていき、日本のプロ野球では1974年にセーブが採用され、1976年に現在の制度になりました。
セーブがつく前提条件のひとつは、「勝ち投手ではないこと」。例えば先発投手だと、少なくとも5回以上を投げ、降板した時点でチームがリードしていて、試合終了までそのリードが保たれたら勝ち投手に。中継ぎ投手も登板後にチームが逆転した時などに勝ちはつきますが、セーブはつきません(ルール改定以降のお話です)。
前提となる条件はほかに、以下があるようです。
・勝利チームの最後の投手として登板する。
・同点や逆転されることなく、リードを保って試合を終了させる。
・1/3イニング以上の投球回を記録する。
ここまでの4つは満たしていましたが、その上で、さらに細かい条件があります。その中のひとつ以上を満たしたらセーブがつく可能性が生まれるのですが......マルティネス投手が登板しなかった理由も考えながら見ていきます。
最近のオフショット。愛媛の
その1 <リードが3点以内の場面で登板し、少なくとも1イニング以上を投げリードしたまま試合終了>
10月1日の試合では3点差まで迫られたものの、すでに2アウトでしたから、登板しても「1イニング以上を投げる」を満たすことはできませんでした。
その2 <点差に関わらず、3イニング以上を投げてリードしたまま試合終了>
大量リードした状況でも、3イニング以上を投げて勝った時点でセーブが記録されます。マルティネス投手も7回から3イニングを投げて、リードしたまま試合が終了したらセーブがつきましたが、そんな起用は現実的ではないですね。
その3 <2者連続で本塁打を打たれたら同点、もしくは逆転される状況で登板し、リードしたまま試合終了>
2点差以内なら、どんな状況でもいいということですね。5点差だったあの試合でも、満塁になった時点で登板したら条件を満たすことになります。3点差でランナーなしだった9回2アウトのあの場面は、次の打者が出塁した時点で条件を満たしますが......わざと出塁させることなんてしないでしょう。
こうして見ると、クローザーがとにかくヒリヒリする状況で登板することが多い、ということがよくわかりますね。
シーズン半ばにヤクルトのクローザーを担った星知弥投手は、中継ぎとクローザーの違いをこう語っています。
「中継ぎは1点も与えずに次につなぐことが大事。抑えは点を取られても勝てばいい」
中継ぎは戦術によって交代することがありますが、クローザーは一度登板したら、勝負がつくまでマウンドを降りられないことが多いです。そんな中で星投手は、開き直ったことでいい方向に持っていけたそうです。
さて、セーブがいかに大変な記録なのかわかったところで、珍しい記録もご紹介します。
まずは「0球でセーブ」。どちらも、9回2アウト、ランナーを背負った状態で1塁への牽制球でアウト。過去に2度記録されています。
次は「1球でセーブ」。これは多く記録されています。ロッテなどで活躍した小宮山悟さんは、引退を表明した最終戦で1球でセーブを記録し、当時の史上最年長セーブ記録も更新しています。また、オリックスやヤクルトなどで活躍した近藤一樹さんは、9回2アウト、カウント2-2の場面で緊急登板し、1球で三振に打ち取ってセーブを記録しました。
以上、意外と知らないセーブの条件でした。野球はルールが複雑ですから、意外と知らないことってありますよね。これからも、みなさんと一緒に学んでいけたらと思っています。
それでは、また来週。
構成/キンマサタカ 撮影/栗山秀作
記事提供元:週プレNEWS
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