キーワードは“バイラル”「GOING SEVENTEEN」監督に聞く、グローバル時代にバズるコンテンツ:サムギョプサルですが
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イチオシスト:イチオシ編集部 旬ニュース担当
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テレ東×韓国制作会社のタッグでおくるオール韓国ロケの日韓共同制作フェイクドキュメンタリードラマ、木ドラ24「サムギョプサルですが」(木曜深夜24時30分)。テレ東とともに制作を担当した韓国のコンテンツ制作会社「VISUAL ANDWIT」のキム・ヒョンソク監督とイ・ウンソン監督インタビュー【後編】。制作過程の裏側や、グローバル時代における“コンテンツの力”について語ってもらった。
【前編】では、「サムギョプサルですが」の制作秘話を。
【動画】アイドルがサムギョプサルに!? オール韓国ロケ、日韓共同制作

――VISUAL ANDWITでは「GOING SEVENTEEN」など人気K-POPアーティストのウェブバラエティーやMV、ダンスパフォーマンスビデオ制作で知られています。他社との差別化として、意識されている点は?
イ・ウンソン監督 「他のコンテンツとの差別化を図ることはとても大事だと考えています。『GOING SEVENTEEN』で言えば、従来のアイドルコンテンツはキラキラした演出で“アイドルらしさ“を強調する傾向がありました。でも私たちは、出演者を“ひとりの人“として見せることを意識しています。バラエティに出演する“個人“として自然体で参加してもらう。それがファンの方にとっては、彼らの人としての魅力を知るきっかけになって、『本当の姿が見られて良かった』という声も多くいただきました。こうした方向性が結果的に差別化につながったのかなと思っています」
キム・ヒョンソク監督 「もちろんアーティストのイメージを大事にするのは前提です。その上で、できるだけ自由に動いてもらうことを心がけています。SEVENTEENのメンバーも同じような感覚を持っていて、自由にやってくれる。その相性の良さが番組の成功にもつながったと感じています」
――VISUAL ANDWITさんが制作してきた作品で、世間の反応や、ファンからのリアクションなど、手応えを感じたのはいつ頃でしたか?
イ監督「正直に言うと、今も『軌道に乗っている』と思ってはいないんです。視聴者が何を喜んでくれるかにこだわり過ぎず、自由に撮っているので。新しいコンテンツをアップしたときに、SNSのコメントやリアクションを見て、『あ、楽しんでくれたんだな』と後から感じることの方が多いです」
――VISUAL ANDWITで手掛けた番組は今や世界中のファンに届いていますが、グローバルを意識した演出方針はあるのでしょうか?
イ監督「私たちは事前にターゲット層を決めて制作しているわけではありません。むしろ『どう見せたいか』より、『どうありのままを見せるか』の方が大事なんです。メンバーが演出方針に自然に乗ってくれて、無理をせず、楽しんでやってくれる。その相性の良さが人気につながっていると思います」

――K-POP関連のコンテンツだけでなく、近年の「イカゲーム」シリーズ(Netflix)の大ヒットをはじめ映画、ドラマなど韓国エンタメが世界で躍進している理由をどう考えていますか?
キム監督「この質問の答えは、本当に難しいと思います。これはあくまで私の個人的な考えですが、“世界に届けよう”と意識して始めたわけではありません。もともとは国内向けに作っていたものが、時代の変化で自然と世界中からアクセスされるようになって、結果的に注目されるようになったのだと思います」
イ監督「今回の『サムギョプサルですが』もそうなんですが、テレビ東京さんから『こういうコンテンツを一緒に作りませんか』と提案していただいたことをきっかけに、今回の共同制作が実現しました。韓国の制作会社として、日本のテレビ局と共同制作をする機会を得たことで、結果的に世界に発信できるようになった。こういう形の共同制作が増えれば、海外の視聴者にもより届きやすくなると感じています」
――海外の視聴者にも届きやすくなった理由として、やはり動画配信サービスの存在が大きいと思います。従来の地上波テレビで放送するコンテンツと配信コンテンツの違いは意識して制作されていますか?
キム監督「媒体が変わっただけで、大事なのは“面白いコンテンツかどうか”だと思っています。たしかにテレビは制約が多く、YouTubeのような配信は自由度が高い。でも、テレビであっても本当に面白ければ人は見てくれます。だから、結局のところ大事なのはコンテンツの力。媒体よりも中身です」
――その“面白い”を作るために意識していることは?
キム監督「面白さって、人によって感じ方が全然違いますよね。シュールなコメディが好きな人もいれば、ホラーが好きな人もいる。今は好みが先鋭化していて、みんながニッチなコンテンツを探している時代だと感じています。だから、全国民にウケるような大ヒット作は、これからは生まれにくいと思います。それよりも、自分たちが面白いと思ったことをしっかり作って、それを好む人たちにちゃんと届くようにする。そうやって“場”を作っていくことが大事だと思います」

――SNS時代において、コンテンツを発信していくうえで意識していることはありますか?
キム監督「最近、韓国のコンテンツ会社では『バイラル』が最も重要なキーワードだと思います。ただ、私たちはバイラルヒットを“狙って”作っているわけではありません。むしろ自然な面白さで勝負したい。刺激的な仕掛けを入れて無理にバズを狙うより、自分が面白いと思った部分だけを短く切り抜いて、シンプルにつなげる。それが結果的に本編への興味につながればいいなと思っています」
【補足:テレビ東京プロデュ―サー 鄭善榮(チョン・ソニョン)】
「キム監督は謙遜されていますが、VISUAL ANDWITさんはショート動画作りが本当に上手です。あくまで“本編に誘導するため”という意識で作られていて、構成やテンポも含めて非常に洗練されています」
――お二人が映像の世界に入ったきっかけは? テレビ番組が好きだったという背景もあったのでしょうか。
キム監督「あまりテレビがどうこうというより、『自分の作りたいコンテンツを自由に作りたい』という気持ちの方が強かったです。気づいたら会社を立ち上げていて、そこからひたすら作り続けている感じですね(笑)」
イ監督「私は子どもの頃からテレビ番組が大好きで、大学でも映像制作を学びました。今思えば、『自分が作った映像を誰かに見てほしい』という気持ちがずっとあるんだと思います。昔はテレビが主流でしたが、今は配信になって、これからはまた違う媒体が出てくるかもしれない。でも、媒体が変わっても『誰かに届けたい』という気持ちは変わらない。だからこそ、『自分が作りたいものを作る』という姿勢が本質だと考えています」
――ちなみに、日本の配信コンテンツやドラマもご覧になりますか?
キム監督「映画やドラマはよく見ています。特に印象的だったのは『孤独のグルメ』(テレ東)や『ホットスポット』(日本テレビ系)。そして、是枝裕和監督の映画『怪物』や『PERFECT DAYS』もとても好きです」
イ監督「私は映画『告白』が好きですね。日本の作品は新鮮なアイデアが多く、いつも刺激を受けています。そうやって調べたり観たりしながら、インスピレーションを得ています」

――これから、コンテンツはさらに多様化・細分化していくと思います。そんな時代に、監督お二人が“これだけは忘れたくない”と感じている、制作の軸はありますか?
キム監督「やっぱり、『誰かに届くもの』を作りたいという気持ちです。『自分が面白いと思えるもの』を作って、その面白さが誰か一人にでもちゃんと届けば、それはもうコンテンツとして成立していると思います」
イ監督「私も、『自分が作った映像を誰かに見てもらいたい』という気持ちはずっと変わっていません。媒体が変わっても、流行が変わっても、その根本だけは忘れずにいたいです」
「誰かに届くコンテンツを作りたい」「自分が面白いと思えるものを信じる」。そんなクリエイターとしての本音が、二人の言葉から静かに伝わってきた。バズを狙わず、それでも結果的に広がっていく。その延長線上にある本作、木ドラ24「サムギョプサルですが」で、まずはこれまでになかった新鮮な世界観を存分に味わってほしい。
木ドラ24「サムギョプサルですが」の第1話と最終話を「TVer」、「ネットもテレ東」で無料配信中!お気に入り登録もお忘れなく!
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(取材・文/斉藤和美)
【前編】では、「サムギョプサルですが」の制作秘話を。
【動画】アイドルがサムギョプサルに!? オール韓国ロケ、日韓共同制作
“世界に届ける”より、“ありのまま”を

――VISUAL ANDWITでは「GOING SEVENTEEN」など人気K-POPアーティストのウェブバラエティーやMV、ダンスパフォーマンスビデオ制作で知られています。他社との差別化として、意識されている点は?
イ・ウンソン監督 「他のコンテンツとの差別化を図ることはとても大事だと考えています。『GOING SEVENTEEN』で言えば、従来のアイドルコンテンツはキラキラした演出で“アイドルらしさ“を強調する傾向がありました。でも私たちは、出演者を“ひとりの人“として見せることを意識しています。バラエティに出演する“個人“として自然体で参加してもらう。それがファンの方にとっては、彼らの人としての魅力を知るきっかけになって、『本当の姿が見られて良かった』という声も多くいただきました。こうした方向性が結果的に差別化につながったのかなと思っています」
キム・ヒョンソク監督 「もちろんアーティストのイメージを大事にするのは前提です。その上で、できるだけ自由に動いてもらうことを心がけています。SEVENTEENのメンバーも同じような感覚を持っていて、自由にやってくれる。その相性の良さが番組の成功にもつながったと感じています」
――VISUAL ANDWITさんが制作してきた作品で、世間の反応や、ファンからのリアクションなど、手応えを感じたのはいつ頃でしたか?
イ監督「正直に言うと、今も『軌道に乗っている』と思ってはいないんです。視聴者が何を喜んでくれるかにこだわり過ぎず、自由に撮っているので。新しいコンテンツをアップしたときに、SNSのコメントやリアクションを見て、『あ、楽しんでくれたんだな』と後から感じることの方が多いです」
――VISUAL ANDWITで手掛けた番組は今や世界中のファンに届いていますが、グローバルを意識した演出方針はあるのでしょうか?
イ監督「私たちは事前にターゲット層を決めて制作しているわけではありません。むしろ『どう見せたいか』より、『どうありのままを見せるか』の方が大事なんです。メンバーが演出方針に自然に乗ってくれて、無理をせず、楽しんでやってくれる。その相性の良さが人気につながっていると思います」
韓国エンタメが世界で躍進する理由

――K-POP関連のコンテンツだけでなく、近年の「イカゲーム」シリーズ(Netflix)の大ヒットをはじめ映画、ドラマなど韓国エンタメが世界で躍進している理由をどう考えていますか?
キム監督「この質問の答えは、本当に難しいと思います。これはあくまで私の個人的な考えですが、“世界に届けよう”と意識して始めたわけではありません。もともとは国内向けに作っていたものが、時代の変化で自然と世界中からアクセスされるようになって、結果的に注目されるようになったのだと思います」
イ監督「今回の『サムギョプサルですが』もそうなんですが、テレビ東京さんから『こういうコンテンツを一緒に作りませんか』と提案していただいたことをきっかけに、今回の共同制作が実現しました。韓国の制作会社として、日本のテレビ局と共同制作をする機会を得たことで、結果的に世界に発信できるようになった。こういう形の共同制作が増えれば、海外の視聴者にもより届きやすくなると感じています」
――海外の視聴者にも届きやすくなった理由として、やはり動画配信サービスの存在が大きいと思います。従来の地上波テレビで放送するコンテンツと配信コンテンツの違いは意識して制作されていますか?
キム監督「媒体が変わっただけで、大事なのは“面白いコンテンツかどうか”だと思っています。たしかにテレビは制約が多く、YouTubeのような配信は自由度が高い。でも、テレビであっても本当に面白ければ人は見てくれます。だから、結局のところ大事なのはコンテンツの力。媒体よりも中身です」
――その“面白い”を作るために意識していることは?
キム監督「面白さって、人によって感じ方が全然違いますよね。シュールなコメディが好きな人もいれば、ホラーが好きな人もいる。今は好みが先鋭化していて、みんながニッチなコンテンツを探している時代だと感じています。だから、全国民にウケるような大ヒット作は、これからは生まれにくいと思います。それよりも、自分たちが面白いと思ったことをしっかり作って、それを好む人たちにちゃんと届くようにする。そうやって“場”を作っていくことが大事だと思います」
バイラルは“狙う”より“にじむ”もの

――SNS時代において、コンテンツを発信していくうえで意識していることはありますか?
キム監督「最近、韓国のコンテンツ会社では『バイラル』が最も重要なキーワードだと思います。ただ、私たちはバイラルヒットを“狙って”作っているわけではありません。むしろ自然な面白さで勝負したい。刺激的な仕掛けを入れて無理にバズを狙うより、自分が面白いと思った部分だけを短く切り抜いて、シンプルにつなげる。それが結果的に本編への興味につながればいいなと思っています」
【補足:テレビ東京プロデュ―サー 鄭善榮(チョン・ソニョン)】
「キム監督は謙遜されていますが、VISUAL ANDWITさんはショート動画作りが本当に上手です。あくまで“本編に誘導するため”という意識で作られていて、構成やテンポも含めて非常に洗練されています」
――お二人が映像の世界に入ったきっかけは? テレビ番組が好きだったという背景もあったのでしょうか。
キム監督「あまりテレビがどうこうというより、『自分の作りたいコンテンツを自由に作りたい』という気持ちの方が強かったです。気づいたら会社を立ち上げていて、そこからひたすら作り続けている感じですね(笑)」
イ監督「私は子どもの頃からテレビ番組が大好きで、大学でも映像制作を学びました。今思えば、『自分が作った映像を誰かに見てほしい』という気持ちがずっとあるんだと思います。昔はテレビが主流でしたが、今は配信になって、これからはまた違う媒体が出てくるかもしれない。でも、媒体が変わっても『誰かに届けたい』という気持ちは変わらない。だからこそ、『自分が作りたいものを作る』という姿勢が本質だと考えています」
――ちなみに、日本の配信コンテンツやドラマもご覧になりますか?
キム監督「映画やドラマはよく見ています。特に印象的だったのは『孤独のグルメ』(テレ東)や『ホットスポット』(日本テレビ系)。そして、是枝裕和監督の映画『怪物』や『PERFECT DAYS』もとても好きです」
イ監督「私は映画『告白』が好きですね。日本の作品は新鮮なアイデアが多く、いつも刺激を受けています。そうやって調べたり観たりしながら、インスピレーションを得ています」
結局、面白さは“誰かの心に届くかどうか”

――これから、コンテンツはさらに多様化・細分化していくと思います。そんな時代に、監督お二人が“これだけは忘れたくない”と感じている、制作の軸はありますか?
キム監督「やっぱり、『誰かに届くもの』を作りたいという気持ちです。『自分が面白いと思えるもの』を作って、その面白さが誰か一人にでもちゃんと届けば、それはもうコンテンツとして成立していると思います」
イ監督「私も、『自分が作った映像を誰かに見てもらいたい』という気持ちはずっと変わっていません。媒体が変わっても、流行が変わっても、その根本だけは忘れずにいたいです」
「誰かに届くコンテンツを作りたい」「自分が面白いと思えるものを信じる」。そんなクリエイターとしての本音が、二人の言葉から静かに伝わってきた。バズを狙わず、それでも結果的に広がっていく。その延長線上にある本作、木ドラ24「サムギョプサルですが」で、まずはこれまでになかった新鮮な世界観を存分に味わってほしい。
木ドラ24「サムギョプサルですが」の第1話と最終話を「TVer」、「ネットもテレ東」で無料配信中!お気に入り登録もお忘れなく!
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(取材・文/斉藤和美)
記事提供元:テレ東プラス
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