市川紗椰がオススメの鉄道橋を紹介!【都会編】
『週刊プレイボーイ』で連載中の「ライクの森」。人気モデルの市川紗椰(さや)が、自身の特殊なマニアライフを綴るコラムだ。今回は「鉄道橋 都会編」について語る。
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鉄道橋とは、単なるインフラ以上に風景の一部であり、走る列車を美しく見せる巨大オブジェでもあります。鉄道にとっては名脇役ですが、ひとつひとつに工法の工夫や土地の物語があって、調べれば調べるほど味わい深いです。今回は、都会にあるオススメの鉄道橋を紹介します!
まず、東京都内のお気に入りの鉄道橋は、JR京葉線の「夢の島橋梁(きょうりょう)」。江東区にある夢の島公園の脇にある運河と新木場駅をつなぐ、大迫力の鋼鉄トラス橋です。東京と千葉を結ぶ首都高速や国道を、半径400mの巨大な曲線を描きながら鉄道橋が跨ぐ姿は圧巻。さらに、広い運河の上にも架かっているため、列車が海上を突っ切って走るように見える箇所もあります。
車窓からの景色も、工業地帯と海の青さの対比が魅力な上、鉄骨のトラスが規則正しく並ぶ光景はまるでSF映画の背景のよう。貨物線(越中島支線)と合流する構造もとてもユニークだし、とにかくかっこいい。
同じく都内だと、東武伊勢崎線の「隅田川橋梁」もオススメです。隅田川を渡る橋で、別名「花川戸鉄道橋」とも呼ばれています。1931年に竣工(しゅんこう)されたこの橋は、景観配慮のために採用されたデザインの美しさが特徴。橋の上部に目立つトラスやアーチを作らず、景観を確保。隅田公園や浅草の街並みに調和する工夫がされています。さらに、車内からの視界も遮らず、浅草の景色や隅田川の風景を楽しめるように計算されています。車窓の眺めをここまで考えてくれた都会の鉄道橋は、ここくらいな気がします。
橋の上に渡り線のポイント(分岐器)があるのもポイント(鉄道ジョーク)。分岐器を通過するため、制限速度が15㎞/hに設定されています。列車がゆっくりと橋を渡る様子は、浅草の名物的存在になっています。そして2020年6月、花田川鉄道橋がさらに進化。橋のすぐの横に遊歩道「すみだリバーウォーク」が設置され、電車や水辺の風景を間近で楽しめるようになりました。浅草と東京スカイツリーをつなぐ散歩道としてもいい感じなので、観光の際にどうぞ。
続いては広島市を流れる天満川(てんまがわ)に架かる「広電天満橋」。こちらは広島電鉄(広電)の路面電車専用の橋。路面電車が川幅のある鉄橋を堂々と渡る、控えめながらも一風変わった光景が見られます。この橋は自動車が通れず、歩行者や自転車、そして広電だけが走る特別な鉄道橋。両側に幅1.7mの歩道があり、軌道部分とは分厚い壁でしっかり区切られてますが、路面電車が間近を通りぬける迫力はすごい。音に包まれ、もはや自分が広電になった気分です。
歴史も魅力的です。1912年(大正元年)に開業した広電天満橋は、原爆の被害にも耐えた橋として知られています。爆心地からわずか1.05㎞という近さで被災したにもかかわらず、落橋しませんでした。そのため復興の象徴としても讃えられています。戦前と同じ「ガタンゴトン」というジョイント音が現代でも響いている風景に、心が揺さぶられます。コンパクトで壁も特徴的なので、その佇まいから隠れた名物橋としての風格が漂ってます。広島観光に合わせてぜひ。
●市川紗椰
1987年2月14日生まれ。米デトロイト育ち。父はアメリカ人、母は日本人。モデルとして活動するほか、テレビやラジオにも出演。著書『鉄道について話した。』が好評発売中。いつか「鉄道橋 田舎・絶景編」もやりたい。公式Instagram【@sayaichikawa.official】
記事提供元:週プレNEWS
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