荒井晴彦監督×綾野剛主演で描く、滑稽で切ない愛の物語「星と月は天の穴」
結婚生活に失敗した作家と画廊で知り合った大学生との奇妙な交渉を綴った吉行淳之介の小説を、監督・脚本を荒井晴彦、主演を綾野剛が務めて映画化した「星と月は天の穴」が、12月19日(金)よりテアトル新宿ほか全国で公開される。メインビジュアル(吉行淳之介が書いた題字を使用)が到着した。
妻に逃げられ、独身のまま40代を迎えた小説家の矢添(綾野剛)。心の穴を埋めるように娼婦の千枝子と時折り体を交え、あるコンプレックスが原因で恋愛に尻込みしていた。そして、執筆する小説の主人公に自身を投影して《精神的な愛の可能性》を探究している。そんな中、画廊で大学生の瀬川紀子と出会い、奇妙な情事に至る──。
紀子役を咲耶、千枝子役を田中麗奈が務め、柄本佑、岬あかり、MINAMO、 宮下順子らが脇を固める。愛を恐れながらも求めてしまう、滑稽で切ない物語を味わいたい。
〈コメント〉
綾野剛
映画「花腐し」に続き、本作でも荒井監督の脚本を浴びる事ができ、主人公を通して言葉の美しさと滑稽さ、なにより文学への造詣に触れられ、とても稀有なひとときでした。とある小説を主人公が説明するシーン。噛めば噛むほど、呑めば呑むほど説明台詞を逸脱し、煙草を燻らせ酒を堪能する様に台詞を生み吐き出し、生きた言葉へと昇華する。脚本に導かれたその過程は、役者人生においても、唯一無二の体験でした。今思い出しても武者震いします。
映画「星と月は天の穴」どうぞ言葉の心地を召し上がってください。
咲耶
「純文学の登場人物になりたい」そんな願望が私にはありました。それがまさかこんなに早く実現してしまうなんて、全力で掴みに行った紀子という人物を演じる事が出来たのは私にとってこの上ない幸せです。現代の日本映画界に真っ向から反抗するような作品ですが、美しくもユーモラスな観る文学であると私は感じます。だからこそ多くの方に御覧頂きたいと心から感じます。綾野さんがどれだけ頼り甲斐のある素敵な先輩だったのか、荒井監督とご一緒した事がどれだけ貴重で特別な経験だったのか、あの夢のような時間、語り尽くせない程です。
田中麗奈
荒井晴彦監督とは、脚本を書かれた「幼な子われらに生まれ」、「福田村事件」でご一緒していました。
監督された「火口のふたり」、「花腐し」には惹かれていましたし、ご縁を感じてもいたので、お話しをいただいた時はびっくりしましたが、お声がけいただき大変嬉しかったです。
主演の綾野剛くんとの共演もとても久しぶりで楽しみにしていました。
剛くんは現場で色々とアイデアを出し、荒井監督もそれを楽しんでいるのがこちらにも伝わってきて、とても良い現場だと思いました。
役者としてだけではなく作り手として客観的にも現場を見ている視界の広い方だと改めて感じました。
千枝子に関して、彼女が何を想っているのかというのは、脚本を読んだ時点で直感的に感じましたが、もっと細かく腑に落ちていくように、、と丁寧に彼女の背景を作っていきました。
今でも千枝子を思い出すと胸がキュッとします。
年齢制限もあり、チャレンジングな作品だと思います。
作品を観ていただいたお客様からどんな反応がうかがえるのか、楽しみにしたいと思います。
荒井晴彦(脚本・監督)
18歳だった。彼女もいないし、女の子の手を握ったのは高校の文化祭のオクラホマミキサーの時だけだった。それもそっと。’66年の「群像」新年号、吉行淳之介の「星と月は天の穴」、「女の軀に軀を重ねても欲情は起ってこない」男は、連れ込み旅館の枕もとの棚の下の埃を見る。「数週間にわたって抜け落ちた数え切れない数の男と女の毛が、絡み合っていた」「突然、はげしい欲情が彼の中に衝き上ってきた」 これ、なんか分かると思った。妻に裏切られ、愛とか恋とかいう情感を持ち込むのを拒否し、女を「道具」として扱おうと思っている男が「道具」に敗けてゆく小説だった。映画の仕事をするようになって、いつか映画にしたいと思ってきた。やっとです。
「精神という花が咲いている。引っこ抜くとその根っこに『性』がぶらさがっている」と吉行さん。引っこ抜いていきたい。
「星と月は天の穴」
出演:綾野剛、咲耶、岬あかり、吉岡睦雄、MINAMO、原一男、柄本佑、宮下順子、田中麗奈
脚本・監督:荒井晴彦
原作:吉行淳之介「星と月は天の穴」(講談社文芸文庫)
エグゼクティブプロデューサー:小西啓介 プロデューサー:清水真由美、田辺隆史 ラインプロデューサー:金森保 助監督:竹田正明
撮影:川上皓市、新家子美穂 照明:川井稔 録音:深田晃 美術:原田恭明 装飾:寺尾淳 編集:洲﨑千恵子 衣裳デザイン:小笠原吉恵 ヘアメイク:永江三千子 インティマシーコーディネーター:西山ももこ 制作担当:刈屋真 キャスティングプロデューサー:杉野剛 音楽:下田逸郎 主題歌:松井文「いちどだけ」他 写真:野村佐紀子、松山仁 アソシエイトプロデューサー:諸田創
製作・配給:ハピネットファントム・スタジオ 制作プロダクション:キリシマ一九四五 制作協力:メディアミックス・ジャパン
©2025「星と月は天の穴」製作委員会
公式サイト:https://happinet-phantom.com/hoshitsuki_film/
記事提供元:キネマ旬報WEB
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