稀代の監督・神代辰巳が“遺作”にしたいと持ち込んだ「ベッドタイムアイズ」 キネ旬YouTube〈あの懐かしの映画を語ろう〉第3回
1980年代から90年代を彩った日本映画の裏側に迫る、キネマ旬報公式YouTube の〈あの懐かしの映画を語ろう〉の第3回が9月3日(水)より配信となった。今回、元にっかつプロデューサーの山田耕大氏に語っていただく作品は「ベッドタイムアイズ」(87)。クラブ歌手の女と、黒人兵との狂おしい愛を描いた山田詠美の小説を、性を通じて人間を描き続けた神代辰巳が監督した問題作だ。
今回は、山田氏がにっかつを退社する前後から話はスタート。にっかつ在籍時からある芸能プロダクションから声を掛けられ、共同で作品作りを企画していた山田氏が、会社の了承を得られずに最終的ににっかつを退社、同志を集め会社を立ち上げる経緯が語られる。当時30代前半の山田氏がにっかつを辞め、立て続けに2つの会社を設立するに至った話は、80年代後半のバブル期であったとは言え、今の感覚でも激動の人生だ。
そんな山田氏が立ち上げた制作会社・メリエスに合流したのが、神代辰巳監督。ロマンポルノを代表する監督であると共に、一般作でも萩原健一、桃井かおりの「青春の蹉跌」(74)などで高い評価を得た鬼才が、「遺作にしたい」と持ち込んだのが本作だったと言う。山田氏によれば、遺作にしたいと言うのは監督の常套句だったそうだが、原作者の山田詠美氏が監督作「赫い髪の女」(79)が大好きだったという縁があり、オファーが殺到していた映像化の許諾が取れ、晴れて製作の運びに。山田氏本人も、まだ無名だった頃の山田詠美氏と別の作品で関わりがあったというから、不思議な縁を感じてしまうエピソードだ。
そして製作に進んでいく訳だが、難航する資金集めの話も。「あらゆるところに企画書を持って回った」が駄目だったという山田氏。肺の悪い神代監督も息を切らしながら連日奔走していたという。そして遂には諦めかけてヤケ酒を飲もうと、新宿のゴールデン街のとある飲み屋で出会った人によって事態は一気に好転していくのだが、まだ本決まりでないにも関わらず、話を聞いた監督が喜んでしまい、「じゃあ、麻雀やろう!」と言い出したというエピソードが前編のハイライトだろう。
後編では、主演を躊躇う女優たちの中、出演を熱望した樋口可南子と、アメリカでのオーディションを行い相手役に選んだマイケル・ライトのキャスティングについてなど、さらに「ベッドタイムアイズ」の製作の裏側が語られていく。
さらに、本作から話題は広がり、シナリオ執筆に監督と旅館を転々としたという山田氏が語る神代監督や、監督に心酔し共闘した、ショーケンこと萩原健一が監督の訃報を知らされた時の貴重なエピソードが語られていく。
これまでVHS、LDでリリースされて以降、長らくパッケージ化されずにいた本作だが、オリジナルのネガ原版をデジタル化し、レストア・カラコレされたHDリマスター完全版Blu-rayが9月3日にリリースされた。ぜひ、キネマ旬報YouTubeチャンネル〈あの懐かしの映画を語ろう〉の第3回目と合わせて、本編もご覧いただきたい。
制作=キネマ旬報社
キネマ旬報公式YouTube 〈あの懐かしの映画を語ろう〉
第1回「家族ゲーム」
前編:https://youtu.be/MQdGi9lI2ZM
後編:https://youtu.be/ZPkQQ0ZCdJo
第2回「私をスキーに連れてって」
前編:https://youtu.be/DTmZNlDRplQ
後編:https://youtu.be/cLEuN8b0nRA
〈今後の配信予定〉
「ドレミファ娘の血は騒ぐ」 9月17日(水)※予定
「死んでもいい」
「木村家の人びと」
「ベッドタイムアイズ」
監督:神代辰巳
脚本:岸田理生
原作:山田詠美
企画:山田耕大
製作:静間順二、宮島秀司
プロデューサー:伊藤秀裕
撮影:川上皓市
照明:磯崎英範
美術:西村伸明
編集:菊池純一
音楽:マンハッタン・ジャズ・クインテット
出演:樋口可南子、マイケル・ライト、大楠道代、奥田瑛二、柄本明、竹中直人
©伊藤秀裕
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記事提供元:キネマ旬報WEB
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