殺人鬼ジェイソンが初登場! 本作の成功がシリーズ化を決めた 『13日の金曜日PART2』
飯塚克味のホラー道 第131回『13日の金曜日PART2』

80年代のスプラッターホラーを代表すると言えば、誰もが『13日の金曜日』(1980)を思い浮かべるだろう。ホッケーマスクをかぶり、ナタを手にしたジェイソンが、サマーキャンプにやって来た若者たちを殺しまくる。作品が作られる度に残虐度はパワーアップし、シリーズ後半では、同じ時代に人気を二分した『エルム街の悪夢』(1984)のフレディ・クルーガーと共演を果たす。だが、ジェイソンが殺人鬼として映画に登場したのは1作目ではなく、この第2作だった。加えて言うと、この映画ではまだホッケーマスクをかぶっておらず、顔を隠すのはズタ袋。おなじみのスタイルになるのは第3作だ。
さらに付け加えておくと、『13日の金曜日』シリーズは正直、出来のいい作品が少ない。惨殺シーンにのみ力を入れ続けた結果、話の構築はワンパターンで、本作と3作目を担当したスティーヴ・マイナー、4作目のジョセフ・ジトーなど、他の作品で認められた監督も力を発揮できずにいる。これは恐らく、製作スタジオであるパラマウントの意向があまりに強かったため、監督たちが作家性を出せずにいたからだと思われる。
本作の特典でも語られているが、1作目の監督ショーン・S・カニンガムは13日の金曜日にまつわる映画を年に1本程度ずつ作っていきたいと思っていたそうなのだが、スタジオ側は、ストレートな続編を熱望していたそうなのだ。結果、ホッケーマスクの殺人鬼が生まれることになり、ホラー映画の象徴とも言うべき存在になっていくのだから、スタジオの意見も完全否定はできない。因みに同時期の『ハロウィン』シリーズでは『ハロウィンⅢ』(1982)が、ブギーマンを登場させない内容だったため、ヒットには至らなかったという例がある。

映画は冒頭、前作で生き残ったアリス(アドリエンヌ・キング)が何者かに殺害される場面から始まる。丁寧に1作目を振り返り、舞台はクリスタル・レイクへと移っていく。そこではジェイソンが生き延びていて、若者たちを殺そうと狙っているのではと都市伝説が吹聴されていた。そして、それは現実となり、若者たちが次々と犠牲になっていく。
本作の魅力は、やはりハリー・マンフレディーニの特徴あり過ぎる音楽だ。不気味なシーンが近づくと、「ジェイジェイジェイ…」とおなじみの曲が流れ、画面に出ている若者が殺されるのではないかと観客に予感を抱かせる。この音楽無しに『13日の金曜日』シリーズは、あり得ない。特殊メイクは前作のトム・サヴィーニから変わって、カール・フラートンが担当。後に『羊たちの沈黙』(1991)も担当するフラートンは、近年ではデンゼル・ワシントン専属のメイクアップアーチストとして現在も活躍を続けている。
今回のブルーレイの魅力と言ったら、やはり特典映像に尽きるだろう。「『13日の金曜日PART2』の記録」ではショーン・S・カニンガム監督が、続編製作にいかに悩んでいたかを明かし、冒頭であっけなく絶命してしまうアドリエンヌ・キングは台本を読まずに依頼を受け、観客が喜んでくれればいいと、実にあっけらかんと出演理由を語る。歴代ジェイソン俳優が勢ぞろいした「ジェイソンよ永遠に」では各俳優のジェイソンへの思いが綴られていて興味深い。削除シーンでは残酷過ぎて本編には収録されなかったスプラッターシーンがまとめて収録。音が付いていないので、苦手な人も冷静に見られるかもしれない。
本編は4Kスキャンされているので、昔のDVDとは比べ物にならないほどの高画質。ナイトシーンでは黒がしっかり沈み、特殊メイクの素晴らしさもしっかり確認できた。英語音声の5.1chもよくできているが、昔、テレビオンエアされた日本語吹替版の収録は価値が高いだろう。今ではすっかり時代が変わってしまったが、当時は夏になるとゴールデンタイムの洋画劇場枠で、普通に放送していたのだ。難しい話でなく、ワンパターンな作りのため、途中から見ても問題のない本作のようなホラー映画はお茶の間で大受けだった。そんな時代を懐かしがりながら、吹替版で鑑賞するのもいいだろう。
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飯塚克味(いいづかかつみ)
番組ディレクター・映画&DVDライター
1985年、大学1年生の時に出会った東京国際ファンタスティック映画祭に感化され、2回目からは記録ビデオスタッフとして映画祭に参加。その後、ドキュメンタリー制作会社勤務などを経て、WOWOWの『最新映画情報 週刊Hollywood Express』の演出を担当した。またホームシアター愛好家でもあり、映画ソフトの紹介記事も多数執筆。『週刊SPA!』ではDVDの特典紹介を担当していた。現在は『DVD&動画配信でーた』に毎月執筆中。TBSラジオの『アフター6ジャンクション』にも不定期で出演し、お勧めの映像ソフトの紹介をしている。
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記事提供元:映画スクエア
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