森田芳光監督と出会う4カ月 見たり、読んだり、写したり、「国立映画アーカイブ」の展覧会が大盛況 【第1回】
東京・京橋にある「国立映画アーカイブ」で、8月12日(火)から始まった「展覧会 映画監督 森田芳光」が大盛況である。
2011年、森田芳光監督の早すぎた死に多くの惜別の声が聞かれたが、その7年後、2018年11月から12月にかけて行われた森田芳光全作品上映(新文芸坐)からはじまり、日本各地、さらにはアメリカ、フランス、韓国、台湾など外国でも回顧上映が開催され、内外で森田監督の再評価が高まっている。そんな中、「国立映画アーカイブ」で大々的なイベントが決定、「映画監督 森田芳光」と題して「展覧会」と「上映会」が開催される。
2025年8月12日(火)から始まった「展覧会 映画監督 森田芳光」は、高評価と好調な動員を見せている。関係者が「空前絶後」と評するこの「展覧会」の見どころを案内しよう。
森田監督がシナリオ執筆に使っていた書斎を再現
監督使用の台本のメモ書きで、演出のねらいがわかる!?
「国立映画アーカイブ」7階の展示室。エレベーターを降りると、いきなり入口で等身大パネルの森田芳光監督が出迎えてくれているのが楽しい驚き。
常設展「NFAJコレクションでみる 日本映画の歴史」という映画史の展示の先に設置された森田監督の絵柄の暖簾をくぐると、「展覧会 映画監督 森田芳光」のはじまり。五つのカテゴリーで構成されている。
「森田組へようこそ」では、「家族ゲーム」の有名な、五人が同じ向きで座るテーブルと椅子が再現されていて、ここで家庭教師の吉本(松田優作)と沼田家の人々(伊丹十三、由紀さおり、宮川一朗太、辻田順一)たちと一緒に記念写真が撮れるようになっている。
「森田芳光を作ったもの」では、森田監督が脚本を執筆するために使用していた伊豆の別荘の書斎をセットで再現。窓から見える自然の風景もきちんと再現されて臨場感たっぷり。森田監督が読んでいた本の数々や愛聴していたレコードの一覧は、まさに“森田芳光を作ったもの”の一部を垣間見る思いで、時間をかけてじっくり探索したい。
机には子ども時代に描いた創作ノートや監督デビュー前のアイデアノートと並んで、「ときめきに死す」での360度パン撮影を実現した仕掛けを再現したミニュチュアの模型もあるのでお見逃しなく。
「森田芳光が作ったもの」では、デビューから最後の作品までの撮影現場の写真集や、監督自身が使用していた台本(全作品)が、引き出し形式で展示。その映画を撮るにあたり大切にした演出、撮影中にひらめいたアイデアなど監督自身が書き込こんだ文字が読める。
「未来の想い出 Last Christmas」の原作者、藤子・F・不二雄先生からの森田監督に宛てた感動的な手紙も展示。全作品のポスターギャラリーには、劇中の名セリフが添えられている。
「森田芳光の原点」は、自主映画時代の機材の展示に加えて、8ミリ作品から商業映画に活かした手法を検証した映像集(膨大な映像の中から選び集めた、編集技師・光岡紋さんによる労作)が圧巻。ここでしか見られない貴重な映像資料だ。
森田監督が愛用したディレクターズ・チェアと、自身の言葉「映画を観に行くということは、人に会いにいくこと」「あらゆる価値観への好奇心が、僕の映画の起動力」などが垂れ幕の形で紹介。
「森田芳光のこれから」は、各国で繰り広げられたレトロスペクティブ上映のポスターなどの展示と、その上映会関係者が寄せたコメント映像を上映。諸外国で森田作品がどう評価されているかを知ることができる。
出口では、今回のためにつくられた「メイン・テーマ」のびっくり箱の再現品が、来場者を見送ってくれる──。
ここで紹介したものはほんの一部、映画に使われた小道具などめずらしい展示品も数多く展示されている上に、じっくり読みたい資料と、必見の映像資料が豊富で、たっぷり時間を注ぐ価値がある幸福な絶好の機会。決して広いスペースではないが、空間を活かした見どころ満載の展覧会、時間をかけてじっくり堪能することをオススメします。(開催は11月30日まで)
家庭教師は松田優作ではなかった!?元にっかつプロデューサーがキネ旬公式YouTubeで語る「あの懐かしの映画」の舞台裏!第一回は「家族ゲーム」
記事提供元:キネマ旬報WEB
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