まるで映画の墓場 ホコリだらけで雨もりのする所蔵庫に放置されたビデオテープ 「キムズビデオ」本編映像
アメリカ・ニューヨークに実在したシネフィルの聖地キムズビデオの、5万5000本ものビデオ・コレクションの行方をめぐるドキュメンタリー映画「キムズビデオ」(公開中)から、サレーミ市に移設された映画たちの”墓場”を映し出した本編映像が公開された。
キムズビデオ創業者のキム・ヨンマン氏がシチリア島に出向くと、ビデオテープにとってはあまりにも劣悪な、ホコリだらけで雨もりする湿った所蔵庫に放置されていることが発覚。思わず「Oh my God...(これは、ひどい…)」と絶句するキム氏。落胆したまま所蔵庫を出て、町のバーに向かうと、そこにはサレーミ市長のドミニコ・ヴェヌーティ氏の姿があった。本来であれば、コレクションはきちんと管理された上で、市民に貸し出され、市民たちが映像鑑賞を楽しんでいる約束だった。キム氏がこのコレクションの重要性を説くが、市長は上の空。娘を空港に送ることしか頭にない。諦めずに自分が受けた悲しみを伝えるキム氏だが、市長の心には全く刺さらない。
映像はここまでだが、この問題の根本的な原因は市長ではないことが明らかになる。かつてのサレーミ市長やその取り巻きたち、現地の警察、その陰で暗躍するマフィア、マフィア撲滅委員会会長、マフィアとのつながりが疑われる謎の人物と、次々に怪しい人物が登場していくことになる。
「キムズビデオ」は、アシュレイ・セイビンとデイヴィッド・レッドモンが監督を務めるドキュメンタリー。ニューヨークの映画ファンたちが通い詰めたレンタルビデオショップ「キムズビデオ」。そこは、5万5000本もの貴重でマニアックな映画の宝庫だった。配信サービスの隆盛で閉店に追い込まれた2008年、謎めいた社長キム・ヨンマンは、大量のコレクションをイタリアのシチリア島にあるサレーミという村に譲渡することを決意する。4000マイルの旅を無事に終えた伝説のコレクションだったが、数年後に「キムズビデオ」の元会員であるデイヴィッド・レッドモンがシチリアを訪れると、ずさんな管理体制の中、ホコリだらけの湿った所蔵庫でひっそりと息を潜めていた。
助けを求める映画たちの“声”にかき立てられ、映画たちを救う荒唐無稽な奪還作戦が始動。その奪還作戦は、カーニバルの夜に映画の撮影だと偽り、アルフレッド・ヒッチコックやチャールズ・チャップリン、ジャン=リュック・ゴダール、イングマール・ベルイマン、ジャッキー・チェンといった映画の巨匠たちの“精霊”を召喚し、所蔵庫から映画たちを解放する前代未聞の計画だった。

【作品情報】
キムズビデオ
2025年8月8日(金)、ヒューマントラストシネマ有楽町、渋谷ホワイトシネクイントほか全国順次公開中
提供:ミュート、ラビットハウス
共同配給:ラビットハウス、ミュート
©Carnivalesque Films 2023
記事提供元:映画スクエア
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