寺脇康文 役者人生42年目の矜持に迫る
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【シリーズ「役者魂」VOL.3 後編】
放送中のドラマ9「能面検事」(毎週金曜 夜9時)で、周囲から「仏」と呼ばれる大阪地検次席検事・榊宗春役を好演している俳優・寺脇康文。
検察上層部や警察組織に対して一切忖度せず、ただただ冷静沈着に職務を全うする“能面”の主人公・不破俊太郎(上川隆也)、新人事務官・惣領美晴(吉谷彩子)とのやりとりに、絶妙な彩りを添えている。寺脇に、俳優としての矜持を聞く【後編】。
※前編はこちら
【動画】寺脇康文が大阪弁で新境地「能面検事」

取材中も、時に身振り手振りを交えながら答えてくれるなど、サービス精神旺盛な寺脇。
ドラマの記者会見では、総務課事務官・前田拓海役を演じる大西流星の後、「なにわ男子の寺脇康文です!(笑)」と自己紹介。集まった記者たちを和ませた。
「大阪出身のせいか、カッコいいとかじゃなく“おもろい”って言われたいんですよ。カッコいい人はごまんといますから。
憧れは『カリオストロの城』のルパン。ユーモアとカッコよさのバランスというのかな。実は(「相棒」で演じている)亀山薫も、ルパンを意識しているところがあります。
あと、“人が笑っているのを見るのが好き”というのもありますね。みんなの笑顔を見ていると、自分も幸せな気持ちになるから」
「根っからの関西人だから、面白いことを言いたいし、やりたい」。元来、人を笑わせることが好きなのだ。
「ギャグ的なものや舞台でお客さんに笑っていただくようなことは三宅裕司さんから教わりましたし、“映像の世界でどう演技するべきか”ということは水谷豊さんから。どちらも語り尽くせないくらい、本当にいろいろなことを教わりました」
1984年、三宅裕司が主宰する劇団「スーパー・エキセントリック・シアター(SET)」に入団、その年に初舞台を踏む。そして、その後、水谷豊主演「刑事貴族2」にレギュラー出演。
「長い夏休みじゃないですけど、40年間、今も夢のような日々を過ごしています。“役者をやっていれば、いつかは豊さんと共演できるかな…”という夢がいきなり叶ってしまった。『刑事貴族2』が終わった約7年後に『土曜ワイド劇場』で『相棒』が始まり、今に至りますが、ずっと夢の中にいる気分です」
仕事に取り組む姿勢はもちろん、水谷の一挙手一投足に憧れた。
「『刑事貴族2』の時は、みんなの“アニキ~!”という感じでした。
憧れるあまり、自分も含めて一緒に出ている若い役者、みんな豊さんになってしまう。動きや口調をついつい真似してしまうんですよ。監督から『お前ら全部、豊さんになっているぞー』と言われながら(笑)、当時は独特の話し方やステップ、走り方を真似していました。それくらい影響力がありました」
水谷は「現場での振る舞いも一流」と語る。
「“こうやっていいものをつくるんだ”ということを学びました。その頃の自分はまだ駆け出しで、他の人のことまで考えられなかったんですけど、周りの役者が上がれば、自ずと主役も上がる…主役が上がることで、さらに周りが盛り上がるということを教わりました。
例えば『このギャグ、言えるか?』と、豊さんが俺に見せ場を与えてくれるんです。結果それがいいシーン、いい作品につながっていく。29歳でその経験を積めたことが、今の糧になっています」
ここで、「あ~あ、お恥ずかしいったらありゃしない!」と、「刑事貴族2」における水谷の言い回しをものまねで披露(これがめちゃくちゃ似ている!)。
「豊さんと三宅さん、自分の中で確実に糧になっているのがわかります。記者会見の場でも、せっかく記者の皆さんが集まってくれたのだから、楽しんで帰ってもらいたい…そういうサービス精神の根底は、三宅さんの教えにありますね。その方がいい時間になるし、少しでもニュースになってくれたらいいなと」

インタビュー前編では「本当に自分がやりたいと思った仕事をやっていけたら」と語っていたが、最後に役者としての今後のビジョンがあれば聞かせていただこう。
「それが、ビジョンとかプランとか全くないんですよ。もう行き当たりばったりというか、今やるべきこと、来た仕事に対して考えていくだけ。“今”と“次”しかない。その連続でやっていくだけで、これがずっと変わらない、自分の中の一つの矜持でもあります」
42年目。役者を続けていく上での原動力は「いつも楽しく、いい作品を」。取材中に何度も登場した言葉だ。
「俺は生きていく中で、人にはそれぞれ役割があると思っていて、自分の役割は、映像や舞台で演技をして、お客さんに楽しんでもらうこと。それを60歳過ぎた今もできていることが、ただただありがたいし、楽しい。そんな気持ちが原動力になっているのではないかと。
あとは“役者が自分の天職だから――”としか言いようがないんですよね。役者以外、何もできないので…俺。それを全うするために努力する、それだけで。
例えば、テレビで町工場の特集を見て、“こんなにすごいことができるの!?”“お餅にあんこを詰めるスピード、めちゃくちゃ速いじゃん!”とか、そういう方々の姿に励まされて“よし、俺も頑張ろう!”と、日々セリフと格闘しています。
水谷さんや三宅さんとの出会いも含めて、次に生まれ変わっても役者ができたらいいですね」
最後は、「こうやって取材で話すことで、自分の考えを再確認できるのでありがたいです。またお会いしましょう!」と、爽やかに手を振って去っていった。
サービス精神と気遣いと、あくなき情熱と。俳優・寺脇康文のことを、少しだけ知れたような気がした。
(取材・文/橋本達典)
【寺脇康文 プロフィール】
1962年2月25日生まれ、大阪府堺市出身。1984年に劇団「スーパー・エキセントリック・シアター」に入団。退団後、岸谷五朗と演劇ユニット「地球ゴージャス」を結成。
ドラマ「相棒」シリーズの亀山薫役で国民的な人気を獲得し、2008年に公開された、映画「相棒-劇場版-絶体絶命!42.195km 東京ビッグシティマラソン」で「日本アカデミー賞」優秀助演男優賞を受賞した。舞台に映像にと、幅広く活動している。
【第6話】

府内の駅前で7人が刺殺される無差別殺人事件が発生。犯人・笹清(安井順平)の動機は、自分も含めた就職氷河期世代を切り捨てた社会への復讐だという。
取り調べが続く中、大阪地検に届いた郵便物が爆発し、前田(大西流星)が巻き込まれ意識不明に。やがてロスト・ルサンチマンなる人物の登場で、二つの事件は思わぬ繋がりを見せ始めて…。榊(寺脇康文)は不破(上川隆也)に両事件の捜査を命じるが、犯人の特定は難航する。
放送中のドラマ9「能面検事」(毎週金曜 夜9時)で、周囲から「仏」と呼ばれる大阪地検次席検事・榊宗春役を好演している俳優・寺脇康文。
検察上層部や警察組織に対して一切忖度せず、ただただ冷静沈着に職務を全うする“能面”の主人公・不破俊太郎(上川隆也)、新人事務官・惣領美晴(吉谷彩子)とのやりとりに、絶妙な彩りを添えている。寺脇に、俳優としての矜持を聞く【後編】。
※前編はこちら
【動画】寺脇康文が大阪弁で新境地「能面検事」

理想は、ルパンが持つユーモアとカッコよさのバランス
取材中も、時に身振り手振りを交えながら答えてくれるなど、サービス精神旺盛な寺脇。
ドラマの記者会見では、総務課事務官・前田拓海役を演じる大西流星の後、「なにわ男子の寺脇康文です!(笑)」と自己紹介。集まった記者たちを和ませた。
「大阪出身のせいか、カッコいいとかじゃなく“おもろい”って言われたいんですよ。カッコいい人はごまんといますから。
憧れは『カリオストロの城』のルパン。ユーモアとカッコよさのバランスというのかな。実は(「相棒」で演じている)亀山薫も、ルパンを意識しているところがあります。
あと、“人が笑っているのを見るのが好き”というのもありますね。みんなの笑顔を見ていると、自分も幸せな気持ちになるから」
「根っからの関西人だから、面白いことを言いたいし、やりたい」。元来、人を笑わせることが好きなのだ。
「ギャグ的なものや舞台でお客さんに笑っていただくようなことは三宅裕司さんから教わりましたし、“映像の世界でどう演技するべきか”ということは水谷豊さんから。どちらも語り尽くせないくらい、本当にいろいろなことを教わりました」
1984年、三宅裕司が主宰する劇団「スーパー・エキセントリック・シアター(SET)」に入団、その年に初舞台を踏む。そして、その後、水谷豊主演「刑事貴族2」にレギュラー出演。
「長い夏休みじゃないですけど、40年間、今も夢のような日々を過ごしています。“役者をやっていれば、いつかは豊さんと共演できるかな…”という夢がいきなり叶ってしまった。『刑事貴族2』が終わった約7年後に『土曜ワイド劇場』で『相棒』が始まり、今に至りますが、ずっと夢の中にいる気分です」
仕事に取り組む姿勢はもちろん、水谷の一挙手一投足に憧れた。
「『刑事貴族2』の時は、みんなの“アニキ~!”という感じでした。
憧れるあまり、自分も含めて一緒に出ている若い役者、みんな豊さんになってしまう。動きや口調をついつい真似してしまうんですよ。監督から『お前ら全部、豊さんになっているぞー』と言われながら(笑)、当時は独特の話し方やステップ、走り方を真似していました。それくらい影響力がありました」
水谷は「現場での振る舞いも一流」と語る。
「“こうやっていいものをつくるんだ”ということを学びました。その頃の自分はまだ駆け出しで、他の人のことまで考えられなかったんですけど、周りの役者が上がれば、自ずと主役も上がる…主役が上がることで、さらに周りが盛り上がるということを教わりました。
例えば『このギャグ、言えるか?』と、豊さんが俺に見せ場を与えてくれるんです。結果それがいいシーン、いい作品につながっていく。29歳でその経験を積めたことが、今の糧になっています」
ここで、「あ~あ、お恥ずかしいったらありゃしない!」と、「刑事貴族2」における水谷の言い回しをものまねで披露(これがめちゃくちゃ似ている!)。
「豊さんと三宅さん、自分の中で確実に糧になっているのがわかります。記者会見の場でも、せっかく記者の皆さんが集まってくれたのだから、楽しんで帰ってもらいたい…そういうサービス精神の根底は、三宅さんの教えにありますね。その方がいい時間になるし、少しでもニュースになってくれたらいいなと」

「役者が天職――この道しかない」揺るぎない覚悟”
インタビュー前編では「本当に自分がやりたいと思った仕事をやっていけたら」と語っていたが、最後に役者としての今後のビジョンがあれば聞かせていただこう。
「それが、ビジョンとかプランとか全くないんですよ。もう行き当たりばったりというか、今やるべきこと、来た仕事に対して考えていくだけ。“今”と“次”しかない。その連続でやっていくだけで、これがずっと変わらない、自分の中の一つの矜持でもあります」
42年目。役者を続けていく上での原動力は「いつも楽しく、いい作品を」。取材中に何度も登場した言葉だ。
「俺は生きていく中で、人にはそれぞれ役割があると思っていて、自分の役割は、映像や舞台で演技をして、お客さんに楽しんでもらうこと。それを60歳過ぎた今もできていることが、ただただありがたいし、楽しい。そんな気持ちが原動力になっているのではないかと。
あとは“役者が自分の天職だから――”としか言いようがないんですよね。役者以外、何もできないので…俺。それを全うするために努力する、それだけで。
例えば、テレビで町工場の特集を見て、“こんなにすごいことができるの!?”“お餅にあんこを詰めるスピード、めちゃくちゃ速いじゃん!”とか、そういう方々の姿に励まされて“よし、俺も頑張ろう!”と、日々セリフと格闘しています。
水谷さんや三宅さんとの出会いも含めて、次に生まれ変わっても役者ができたらいいですね」
最後は、「こうやって取材で話すことで、自分の考えを再確認できるのでありがたいです。またお会いしましょう!」と、爽やかに手を振って去っていった。
サービス精神と気遣いと、あくなき情熱と。俳優・寺脇康文のことを、少しだけ知れたような気がした。
(取材・文/橋本達典)
【寺脇康文 プロフィール】
1962年2月25日生まれ、大阪府堺市出身。1984年に劇団「スーパー・エキセントリック・シアター」に入団。退団後、岸谷五朗と演劇ユニット「地球ゴージャス」を結成。
ドラマ「相棒」シリーズの亀山薫役で国民的な人気を獲得し、2008年に公開された、映画「相棒-劇場版-絶体絶命!42.195km 東京ビッグシティマラソン」で「日本アカデミー賞」優秀助演男優賞を受賞した。舞台に映像にと、幅広く活動している。
【第6話】

府内の駅前で7人が刺殺される無差別殺人事件が発生。犯人・笹清(安井順平)の動機は、自分も含めた就職氷河期世代を切り捨てた社会への復讐だという。
取り調べが続く中、大阪地検に届いた郵便物が爆発し、前田(大西流星)が巻き込まれ意識不明に。やがてロスト・ルサンチマンなる人物の登場で、二つの事件は思わぬ繋がりを見せ始めて…。榊(寺脇康文)は不破(上川隆也)に両事件の捜査を命じるが、犯人の特定は難航する。
記事提供元:テレ東プラス
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