寺脇康文が挑む新境地 “妥協なき姿勢”
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【シリーズ「役者魂」VOL.3 前編】
1984年、三宅裕司が主宰する劇団「スーパー・エキセントリック・シアター(SET)」に入団。以来40年間にわたって、舞台はもとより、映像の世界で活躍。「刑事貴族2」(日本テレビ)や国民的ドラマ「相棒」(テレビ朝日)など、猪突猛進な熱血漢役がよく似合う俳優・寺脇康文。
そんな寺脇が、現在放送中のドラマ9「能面検事」(毎週金曜 夜9時)では、周囲から「仏」と呼ばれる大阪地検次席検事・榊宗春役を好演。
検察上層部や警察組織に対して一切忖度せず、ただただ冷静沈着に職務を全うする“能面”の主人公・不破俊太郎(上川隆也)、新人事務官・惣領美晴(吉谷彩子)とのやりとりに、絶妙な彩りを添えている。
デビューから42年目の新境地。その思いとは? 俳優としての矜持を聞く。
【動画】寺脇康文が挑む新境地「能面検事」

「今日は何でも、ジャンジャン聞いてね」。
テレ東の会議室に現れた寺脇は開口一番そう言うと、にこやかに微笑んだ。テレビで見るそのままの温かくチャーミングな人柄が伝わってくる。
細身で長身。スーツの上からも、鍛えていることがよくわかる。今回の「能面検事」への出演は、即答で決めたという。
「上川くんとは、以前一緒にやらせていただいて全幅の信頼がありますし、チャンスがあればもう一度共演してみたかったんです。
台本を読ませていただいて、スカッとする場面がありながら人情味もあり、その両輪で進む物語が非常に面白かったこと、上川くんが演じる不破俊太郎が“今の世の中に必要な男だ”と思ったので、『ぜひ、やらせてください』と伝えました」
舞台は大阪。権力に忖度しないエース検事・不破を何かとフォローする「仏の榊」こと次席検事・榊宗春役を演じている。
「中山七里先生の原作では、榊は標準語を話しますが、ドラマでは大阪弁にしてもらいたいと、その一つだけお願いしました。榊は一見するとクールで、話し言葉は“ですます調”。ちょっと不破と、キャラクターが似ているかなと思いました。
舞台は大阪ですし、今回は、普段やったことのない大阪弁でやってみようと。“ですます調”ではなく、ざっくばらんに『お前、○○やんけ~』みたいな感じで演じたらどうだろうと考えて中山先生に確認したところ、快諾してくださいました。
そこから第1話の榊のセリフを、全部大阪弁に変換して…。第4話目くらいからかな? 台本も大阪弁で来るようになったんですけど、それまでは自分で直していました」
大阪府出身の寺脇。しかし、長きにわたる俳優人生の中で、本格的に大阪弁で演じるのは初めてだという。
劇団「スーパー・エキセントリック・シアター」に入団したのが1984年。同劇団の戦友にして親友の岸谷五朗と立ち上げた演劇ユニット「地球ゴージャス」は、去年30周年を迎えた。大阪弁のイメージが薄いのも、無理はない。
「人生の3分の2を東京で過ごしていますからね。もしかすると、僕が大阪出身ということを、このドラマで知った方も多いかもしれない(笑)。でも、そういう(大阪出身のイメージがない)今こそ、大阪弁を使ってみるのもいいかな、面白いかなと思って提案しました。不破と榊のコントラストが出せたらいいなと。
台本や原作があって、監督、スタッフがいて、我々は俳優部として現場にやって来る。それぞれがそれぞれをリスペクトしながら、自分の持ち場でベストを尽くす。そこは突き詰めていきたいです。」

「いい作品にするためには妥協しない」。
自身の根底にあるのは、長い歴史を誇るドラマ「相棒」で、苦楽をともにしてきた俳優・水谷豊の作品に臨む姿勢だ。
「豊さんは、ギリギリまで“これでいいのか”と考えているんですよ。もっといいセリフがないか、より良い作品にするためには、脚本を変えることだってある。動き一つにしても“こっちに動いた方がいいんじゃないか”と、常に模索していらっしゃいます。その背中をずっと見てきたので」
ポーカーフェイスで冷静沈着、キレ者すぎるため“変人”扱いされている警視庁特命係の杉下右京(水谷)と、猪突猛進で人情に厚い熱血漢・亀山薫(寺脇)。2人のバディもまた、静と動のコントラストが効いている。
「“能面”である不破に対して、榊が人間味のあるキャラクターになったと思います。
あと、重くなりがちなドラマにホッとする瞬間というのかな。榊のシーンが視聴者の皆さんの安らぐポイントになっていれば嬉しいです。なぜ“仏の榊”と呼ばれるようになったのか……考えながら演じているので、その辺りも楽しみにしてもらえたら。
『相棒』の撮影が終わった後は、何かしら演じてはいました。
なんて言うのかな、俺の場合、演じていないと鈍るので。もちろん、何もしていない時間をうまく力にする役者もいると思いますが、セリフを覚えていないとちょっと感覚が鈍くなるから、間を空けたくない、というか――。
60歳を超えて、これからは、本当にやりたいと思った仕事の話が来たら、どんなに忙しくてもやっていこうと思っています。今回もそういうタイミングで『能面検事』のオファーが来たので、ぜひやってみよう、やるからには悔いなく臨もうと思いました」
精かんな顔つきと鍛え上げられた外見…とてもそうは見えないが、1962年生まれの63歳。
「周りから“変わらない”と言ってはもらえますが、歳を取った実感はありますよ。ここ何年かは毎朝半身浴をして、頭がすっきりしたら、ストレッチをしながら最低2回は台本を通して読むようになりました。それが今の自分にとって、成長の時間になっています」
かつては、ドラマのクランクイン前、高尾山に登ってトレーニングしていたことも。
「山頂で腕立て伏せをやりながらセリフを覚えて…今もストレッチの後は、ウォーキングしながらセリフを吟味しています。傍から見たら怖いけど、歩いている最中にバーッとまくしたてることもありますよ(笑)」
「自分には突出したものがない。天才じゃないから」そう謙遜するが、決して自虐に聞こえないのは、40年間、努力を積み重ねてきた証だろう。
「台本を繰り返し読む。俺の場合、セリフの覚え方はそれだけなんですよ。覚えようとせずに、ひたすら何回も読む。そうすると、夜寝るごとにどんどん頭に入っていきます。俺にはそれしかできないので、続けるだけですね」
「役者魂」寺脇康文 後編は、8月15日(木)正午に公開する。
(取材・文/橋本達典)
【寺脇康文 プロフィール】
1962年2月25日生まれ、大阪府出身。1984年に劇団「スーパー・エキセントリック・シアター」に入団。退団後は、岸谷五朗と演劇ユニット「地球ゴージャス」を結成。
ドラマ「相棒」シリーズの亀山薫役で国民的な人気を獲得し、2008年に公開された、映画「相棒-劇場版-絶体絶命!42.195km 東京ビッグシティマラソン」で「日本アカデミー賞」優秀助演男優賞を受賞した。舞台に映像にと、幅広く活動している。
【第5話】
国有地払い下げ問題における容疑者・安田調整官が隠していた“一つ目”の秘密が暴かれる。そんな中、不破(上川隆也)と惣領(吉谷彩子)は学園建設候補地の廃医院で男女の白骨死体を発見する。東京最高検の検察官・折伏(宮川一朗太)は手柄の横取りを目論むも、不破は一切気にせず、いつも通り捜査を進める。そして20年以上、大阪の地で秘密裏にされてきた衝撃的な真相に辿り着くのだった…。
1984年、三宅裕司が主宰する劇団「スーパー・エキセントリック・シアター(SET)」に入団。以来40年間にわたって、舞台はもとより、映像の世界で活躍。「刑事貴族2」(日本テレビ)や国民的ドラマ「相棒」(テレビ朝日)など、猪突猛進な熱血漢役がよく似合う俳優・寺脇康文。
そんな寺脇が、現在放送中のドラマ9「能面検事」(毎週金曜 夜9時)では、周囲から「仏」と呼ばれる大阪地検次席検事・榊宗春役を好演。
検察上層部や警察組織に対して一切忖度せず、ただただ冷静沈着に職務を全うする“能面”の主人公・不破俊太郎(上川隆也)、新人事務官・惣領美晴(吉谷彩子)とのやりとりに、絶妙な彩りを添えている。
デビューから42年目の新境地。その思いとは? 俳優としての矜持を聞く。
【動画】寺脇康文が挑む新境地「能面検事」

大阪弁の役に挑戦「能面検事」で新たな一面
「今日は何でも、ジャンジャン聞いてね」。
テレ東の会議室に現れた寺脇は開口一番そう言うと、にこやかに微笑んだ。テレビで見るそのままの温かくチャーミングな人柄が伝わってくる。
細身で長身。スーツの上からも、鍛えていることがよくわかる。今回の「能面検事」への出演は、即答で決めたという。
「上川くんとは、以前一緒にやらせていただいて全幅の信頼がありますし、チャンスがあればもう一度共演してみたかったんです。
台本を読ませていただいて、スカッとする場面がありながら人情味もあり、その両輪で進む物語が非常に面白かったこと、上川くんが演じる不破俊太郎が“今の世の中に必要な男だ”と思ったので、『ぜひ、やらせてください』と伝えました」
舞台は大阪。権力に忖度しないエース検事・不破を何かとフォローする「仏の榊」こと次席検事・榊宗春役を演じている。
「中山七里先生の原作では、榊は標準語を話しますが、ドラマでは大阪弁にしてもらいたいと、その一つだけお願いしました。榊は一見するとクールで、話し言葉は“ですます調”。ちょっと不破と、キャラクターが似ているかなと思いました。
舞台は大阪ですし、今回は、普段やったことのない大阪弁でやってみようと。“ですます調”ではなく、ざっくばらんに『お前、○○やんけ~』みたいな感じで演じたらどうだろうと考えて中山先生に確認したところ、快諾してくださいました。
そこから第1話の榊のセリフを、全部大阪弁に変換して…。第4話目くらいからかな? 台本も大阪弁で来るようになったんですけど、それまでは自分で直していました」
大阪府出身の寺脇。しかし、長きにわたる俳優人生の中で、本格的に大阪弁で演じるのは初めてだという。
劇団「スーパー・エキセントリック・シアター」に入団したのが1984年。同劇団の戦友にして親友の岸谷五朗と立ち上げた演劇ユニット「地球ゴージャス」は、去年30周年を迎えた。大阪弁のイメージが薄いのも、無理はない。
「人生の3分の2を東京で過ごしていますからね。もしかすると、僕が大阪出身ということを、このドラマで知った方も多いかもしれない(笑)。でも、そういう(大阪出身のイメージがない)今こそ、大阪弁を使ってみるのもいいかな、面白いかなと思って提案しました。不破と榊のコントラストが出せたらいいなと。
台本や原作があって、監督、スタッフがいて、我々は俳優部として現場にやって来る。それぞれがそれぞれをリスペクトしながら、自分の持ち場でベストを尽くす。そこは突き詰めていきたいです。」

俳優・水谷豊から学んだ妥協なき姿勢
「いい作品にするためには妥協しない」。
自身の根底にあるのは、長い歴史を誇るドラマ「相棒」で、苦楽をともにしてきた俳優・水谷豊の作品に臨む姿勢だ。
「豊さんは、ギリギリまで“これでいいのか”と考えているんですよ。もっといいセリフがないか、より良い作品にするためには、脚本を変えることだってある。動き一つにしても“こっちに動いた方がいいんじゃないか”と、常に模索していらっしゃいます。その背中をずっと見てきたので」
ポーカーフェイスで冷静沈着、キレ者すぎるため“変人”扱いされている警視庁特命係の杉下右京(水谷)と、猪突猛進で人情に厚い熱血漢・亀山薫(寺脇)。2人のバディもまた、静と動のコントラストが効いている。
「“能面”である不破に対して、榊が人間味のあるキャラクターになったと思います。
あと、重くなりがちなドラマにホッとする瞬間というのかな。榊のシーンが視聴者の皆さんの安らぐポイントになっていれば嬉しいです。なぜ“仏の榊”と呼ばれるようになったのか……考えながら演じているので、その辺りも楽しみにしてもらえたら。
『相棒』の撮影が終わった後は、何かしら演じてはいました。
なんて言うのかな、俺の場合、演じていないと鈍るので。もちろん、何もしていない時間をうまく力にする役者もいると思いますが、セリフを覚えていないとちょっと感覚が鈍くなるから、間を空けたくない、というか――。
60歳を超えて、これからは、本当にやりたいと思った仕事の話が来たら、どんなに忙しくてもやっていこうと思っています。今回もそういうタイミングで『能面検事』のオファーが来たので、ぜひやってみよう、やるからには悔いなく臨もうと思いました」
精かんな顔つきと鍛え上げられた外見…とてもそうは見えないが、1962年生まれの63歳。
「周りから“変わらない”と言ってはもらえますが、歳を取った実感はありますよ。ここ何年かは毎朝半身浴をして、頭がすっきりしたら、ストレッチをしながら最低2回は台本を通して読むようになりました。それが今の自分にとって、成長の時間になっています」
かつては、ドラマのクランクイン前、高尾山に登ってトレーニングしていたことも。
「山頂で腕立て伏せをやりながらセリフを覚えて…今もストレッチの後は、ウォーキングしながらセリフを吟味しています。傍から見たら怖いけど、歩いている最中にバーッとまくしたてることもありますよ(笑)」
「自分には突出したものがない。天才じゃないから」そう謙遜するが、決して自虐に聞こえないのは、40年間、努力を積み重ねてきた証だろう。
「台本を繰り返し読む。俺の場合、セリフの覚え方はそれだけなんですよ。覚えようとせずに、ひたすら何回も読む。そうすると、夜寝るごとにどんどん頭に入っていきます。俺にはそれしかできないので、続けるだけですね」
「役者魂」寺脇康文 後編は、8月15日(木)正午に公開する。
(取材・文/橋本達典)
【寺脇康文 プロフィール】
1962年2月25日生まれ、大阪府出身。1984年に劇団「スーパー・エキセントリック・シアター」に入団。退団後は、岸谷五朗と演劇ユニット「地球ゴージャス」を結成。
ドラマ「相棒」シリーズの亀山薫役で国民的な人気を獲得し、2008年に公開された、映画「相棒-劇場版-絶体絶命!42.195km 東京ビッグシティマラソン」で「日本アカデミー賞」優秀助演男優賞を受賞した。舞台に映像にと、幅広く活動している。
【第5話】
国有地払い下げ問題における容疑者・安田調整官が隠していた“一つ目”の秘密が暴かれる。そんな中、不破(上川隆也)と惣領(吉谷彩子)は学園建設候補地の廃医院で男女の白骨死体を発見する。東京最高検の検察官・折伏(宮川一朗太)は手柄の横取りを目論むも、不破は一切気にせず、いつも通り捜査を進める。そして20年以上、大阪の地で秘密裏にされてきた衝撃的な真相に辿り着くのだった…。
記事提供元:テレ東プラス
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。