日本有数の映画ガイド・高橋ヨシキが『入国審査』をレビュー!
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入国審査は誰にとっても非常に嫌なものだ。
とくに、警察官に職務質問されたことのないような人にとって、入国審査はおそらく唯一「潜在的な犯罪者として取り扱われる場」であるがために、居心地の悪さを禁じ得ないことも多いだろう。
よく職務質問について「やましいところがなければ困らない」という人がいるが、たとえ全くやましいところがなかったとしても、警察や入国審査官に「犯罪者の可能性がある人間」として取り扱われること自体が、自分の尊厳が損なわれていく感覚をもたらすのである。
移住のためスペインからニューヨークにやってきたカップルが入国審査で引っかかり、別室へと連れられて行くところから始まる本作のオープニングは、その感覚を強くブーストするものだ。入れ替わり登場する係員からカップルはさまざまな質問を受ける。
「やましいところがなければ何も困らないのだから、すべて正直に話すように」というおなじみの物言いも登場するが、係員の目に何が「やましいこと」と映るのか分からないことが不安を加速させる。しかも相手は自分について詳細な情報を持っているようだ。
息詰まるサスペンスと意外なツイストに満ちたタイトな作品だ。
STORY:NYの空港で入国審査を待つカップル。移住ビザも取得し、新天地で暮らす準備は万全のはずが、説明もなく連行され、密室での不可解な尋問が始まる。なぜ二人は止められたのか? やがてある疑念が二人の間に湧き起こり──
監督・脚本:アレハンドロ・ロハス、フアン・セバスチャン・バスケス
出演:アルベルト・アンマン、ブルーナ・クッシ
上映時間:77分
全国公開中
記事提供元:週プレNEWS
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