使用済み「おくすりシート」を再生品に 日本初のプログラムを横浜市と実施 今秋からは東京・東大和市でも

使用済み「おくすりシート」をリサイクル!? こんな画期的なアイデアを実践しているのが第一三共ヘルスケア(東京)だ。今年6月に新たな「サステナビリティー宣言」を発表した同社は、主要テーマの一つである「Earth/健やかな地球へ」の取り組みとして、年々使用量が増加している使用済み「おくすりシート」を回収して処理し、新たなリサイクル品として生まれ変わらせる生活者参加型の取り組みとしては日本で初めての試み※を実施している。環境型社会の構築に向けた取り組みを推進する企業と自治体の新しい取り組みに注目が集まっている。(※テラサイクルジャパン合同会社調べ)
民間のシンクタンクによると、おくすりシートは国内で年間約1万3000トン生産されているが、リサイクル資源としての認知度が低く、大半が可燃ごみとして焼却処分されているのが実情という。
「使用済みのまま捨てられているおくすりシートに、会社として何かできるアプローチはないか?」。模索を続けていた第一三共ヘルスケアは2022年春ごろ、リサイクルに先進的に取り組んでいる横浜市に対し、リサイクル活動で実績のあるテラサイクルジャパン(本部・横浜市)の協力を得て、おくすりシート回収箱の設置を持ちかけた。
「やりましょう」と快諾した横浜市と、第1段階として中区内の病院や調剤薬局、公共施設などに約30の拠点を設置。同年10月20日の「リサイクルの日」に、日本で生活者参加型として初めてとなる「おくすりシート リサイクルプログラム」がスタートした。
当初はなかなか回収が進まなかったが、同社などの呼びかけが浸透すると次第に回収が進み出し、拠点数はわずか半年で60に倍増。そしていまや市内全区で約100にまで増え、回収された使用済みおくすりシートは今年4月末時点で10トン以上に上った。
同社のサステナビリティ推進マネジャーの岩城純也氏は「目標の10倍以上が回収できた。想定以上だ」と喜びを隠せない。リサイクルされたおくすりシートは、特別な製法でペンやトレーなどの再生品に生まれ変わった。横浜市内でのプログラムは引き続き継続するとともに、今後は再生品の種類を増やし、回収活動に協力してくれた同市へ還元していく方針という。
取り組みは一見、順調そうにみえるが、課題もあると認める。岩城氏は「拠点数が増え、回収量が多くなるのはうれしいが、それに伴いさまざまなコストもかかる」と指摘する。
こうした実績や反省点を踏まえ、今秋からは第2弾として東京・東大和市でもプログラムを開始する。実は、今回はリサイクルに積極的に取り組んでいる同市から「自治体からのサポートをするので、うちでやらないか」と持ちかけられたという。岩城氏は「うれしいことにいくつかの自治体からもオファーは来ている。自治体からの人的フォローを受けられれば、今後も拠点数を増やすことができる」と期待を寄せる。
リサイクルされた再生品を生み出すまでにも苦労はあった。おくすりシートはプラスチックとアルミニウムで作られていることが多く、プラスチックも材質が1種類ではないため、双方を「分離」させることが技術的に難しかったという。そこで考えたのが、プラスチックとアルミニウムを分離せずにまとめて粉砕し、その小片の比重の重さによって製品を作り分けることだった。それでも製品の完成度には満足できないというのが本音で、さらなる改善を目指している。
同社は現在、ペンやトレー以外の再生品の種類を増やすことや、引き続き、よりよいリサイクル技術を模索しているという。
今後の展開について、岩城氏は「おくすりシートを資源として活用できるということを発信して、それによってプラスチックなどの資源ゴミについての知識を身につけてもらえたらいい」としたうえで、「使用済みのおくすりシートを集めることはできるようになってきた。問題は集めたあとどうリサイクルするか、どう還元していくか、そこには社会的な責任が伴う」と強調する。
課題を乗り越えながら、第一三共ヘルスケアが始めた先進的な取り組み。同社は、数年後には他社や業界を巻き込んで、この取り組みを進めていけるのが理想、と将来を見据えている。
記事提供元:オーヴォ(OvO)
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