予想通り暑かったけど、予想外に熱くなかった“イーグル&バーディ祭り”その理由は?【現地記者コラム】
先週の「大東建託・いい部屋ネットレディス」は、大会期間中の気温が連日、猛暑日の35度を超えた。猛暑対策のひとつとして、競技開始は4日間ともツアー史上最も早い午前6時となったが、最終日は全組がホールアウトする前の午後12時53分に37.5度を記録した。暑さは覚悟していた通り過酷なものだった一方、勝手に名付けて楽しみにしていた“イーグル&バーディ祭り”は予想外の低調だった。
昨年大会は4日間で36個のイーグルが量産され、バーディは1481を数えた。大会の平均ストロークは69.69。決勝ラウンドの3日目はパー72ではツアー史上最少の68.64を記録し、最終日も68.86と歴史に残るバーディ合戦となった。
今年は4日間の平均ストロークが71.0で、最終日の70.21が最少だった。イーグルは29個で、バーディは1312個。ツアー史上最も短いパー4となった256ヤードの5番は3.39と、昨年の3.44を更新して大会別では史上最も易しいパー4となった。ただ、昨年の初日は本来の360ヤードのティを使用し、ワンオンチャレンジは2日目からの実施で、最終日は3.14というツアー記録が誕生している。
昨年大会をツアー記録のトータル28アンダーで制した川崎春花、同じく昨年の5番でアルバトロスのホールインワンまであと20センチのスーパーショットを放った小祝さくらは、今大会の前には「グリーンは重くて、やわらかい。去年とほぼ同じ状態」と話していた。メルセデス・ランキング1位を快走する佐久間朱莉も「優勝争いするには最低(トータル)20アンダーは必要」としていたが、優勝スコアはトータル17アンダー。予選カットラインも昨年のトータル4アンダーから今年は同2アンダーに落ち着いた。
コースセッティング担当は昨年の佐伯三貴から馬場ゆかりに代わったが、選手からピン位置が難しくなったという声は聞こえてこなかった。2日目以降は強い風が吹いたが、フォローとなった6番パー5は2オンする選手が増え、イーグルが昨年の0から10個と激増したように、風がそこまで全体のスコアにマイナスの影響を及ぼしたとも思えない。
プロアマ大会の日に雑談していたベテランの某キャディ氏がこんなことを話していた。「去年ほどの伸ばし合いにはならないと思いますよ」。渋野日向子、古江彩佳、西郷真央、勝みなみ、西村優菜らに続き、今年は竹田麗央、山下美夢有、岩井明愛・千怜が米ツアーに主戦場を移した。昨季37戦で計16勝の4人が抜けたことで、今季の勢力図が大きく変わることは何度も書いてきた。「群雄割拠」「戦国時代」という表現もしたが、“天下人”の候補は数えるほど。予想が的中した件(くだん)のキャディ氏の根拠も「去年に比べてツアー全体のレベルは下がっているから」だった。
この状況は最近の大相撲に似ているかもしれない。27日が千秋楽だった名古屋場所は平幕3人の優勝争いの末、東前頭15枚目の琴勝峰が初優勝した。8場所ぶりの平幕優勝だったが、圧倒的な力を誇る横綱・大関が不在なのだから誰にでも勝つチャンスはある。昨年のプロテストに合格した“新入幕”のルーキーたちが、毎週のように上位を賑わわせている女子ツアーも構図は同じだ。
大相撲には初土俵から所要13場所で横綱に昇進した大の里という新しい「顔」が誕生した。新横綱場所の名古屋は11勝4敗と奮わなかったが、若い横綱が重しとなって角界に君臨すれば間違いなく全体のレベルは上がってくるはずだ。
女子ツアーにも新横綱が欲しい。今季19戦で複数回優勝は3勝の佐久間だけ。横一線の状態から“番付”を上げて、三役、大関、そして横綱に出世するような選手が1人、2人と出てくれば、バーディ祭りも間違いなく大いに盛り上がる。(文・臼杵孝志)
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