監督集団5月のサイコサスペンス「災 劇場版」、サン・セバスティアン国際映画祭出品
「宮松と山下」で知られる監督集団5月の関友太郎と平瀬謙太朗が独特の構造で描き、WOWOWで放送された全6話のサイコサスペンス『災』。その時系列や展開を大胆に再構築した「災 劇場版」が、2026年に公開される。併せて、第73回サン・セバスティアン国際映画祭コンペティション部門でワールドプレミアを行うことが発表された。
悩みや葛藤、希望を抱えながら生きる罪なき6人。気づけばどの物語にも、一人の男が紛れ込んでいる。男は性格、容貌、所作を変えながら6人の前に現れ、次々と災いをもたらしていく──。
「宮松と山下」でも両監督とタッグを組んだ香川照之が災いをもたらす名もなき男を怪演し、彼を追う刑事役の中村アンをはじめ、竹原ピストル、宮近海斗、中島セナ、松田龍平、じろう(シソンヌ)、内田慈、藤原季節、坂井真紀、安達祐実、井之脇海らが共演する。
〈コメント〉
香川照之(主演)
『5月』組の監督たちと初めて組んだ『宮松と山下』も充分に狂った作品だったが、今作『災』は6話連続だった長尺のドラマ版でさえ難解奇妙な物語だったものを、三分の一の尺の2時間の映画に編集し直してさらに混迷を極め、理解不能が大前提のような狂作へとぶっ返り、それを二作連続で自身の映画祭に、しかも今回は猛者たちが群雄割拠するコンペティション部門へ招いたというサン・セバスティアンの勇猛果敢さには心底頭が下がる。シーンの順番は滅茶苦茶、私が演じる多岐にわたる人物像がさらにそれを混沌とさせ、一体現地の人たちはどこまでこれを理解するというのだろう。
そして来年、本作は劇場公開されると聞いた。元となったドラマ版をその後でも見ることが出来る我々は、まだ筋の答え合わせをする機会があるだけ恵まれている。
世界屈指の美食の街サン・セバスティアン。何はともあれ、そこから黒船は出発する。心配である。
関友太郎(監督・脚本)
ドラマから産声をあげた風変わりな映画が、サン・セバスティアンという世界的な舞台に呼んでもらえたこと、本当に嬉しく思います。8人の男をさも当たり前のように怪演してくださった香川さんをはじめ、『災』の世界を作り上げた俳優・スタッフの全仕事がただただ誇らしいです。映画愛が溢れかえっているあの街で、この得体の知れぬ作品がどう受け止められるのか…。緊張と興奮が渦巻いたまま上映当日を迎えることになりそうです。
平瀬謙太朗(監督・脚本)
意味もなく、前触れもなく、慈悲もなく、悪意すらなく私たちの人生を壊すものを、人は「災い」と呼びました。それは、恐ろしいほど乱暴な現象にも関わらず、いざ相対するまで、一体、どこに潜んでいるのか感じ取ることすらできません。その“目に見えぬ恐怖”を“今までにない形”で描こうと試み、この『災』という作品が生まれました。
“今までにない形”ということを大切にしたので、結果、ドラマと映画、それぞれまったく違う作品になりました。映画『災』は、映画にしかできない形で、観る人の胸中に“目に見えぬ恐怖”を静かに呼び起こします。
この試みが世界に届いたことを嬉しく思うのと同時に、世界中から集まった映画を愛する観客が、この映画から何を受け取り、何を感じるのか、すこしだけ緊張しています。
そして、まずは世界に問うことになりましたが、2026年にはこの“恐怖”と“形”を皆様にもお届けします。
「災 劇場版」
出演:香川照之、中村アン、竹原ピストル、宮近海斗、中島セナ、松田龍平、内田慈、藤原季節、じろう(シソンヌ)、坂井真紀、安達祐実、井之脇海
監督・脚本・編集:関友太郎、平瀬謙太朗
音楽:豊田真之 原案:5月
劇場版企画プロデュース:日枝広道
プロデューサー:西憲彦、高江洲義貴、伊藤太一、近藤あゆみ、定井勇二
配給:ビターズ・エンド
制作プロダクション:AOI Pro.
劇場版製作幹事:電通 製作著作:WOWOW
©WOWOW
記事提供元:キネマ旬報WEB
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