【ゴルフにまつわるSDGs】石油資源から植物由来へ シャフト原料の転換を図る三菱ケミカル
今、世界中の人々が共通の目標として取り組みを進めている「SDGs」。地球温暖化や人口増加など、さまざまな問題を解決し、「持続可能」な社会を目指すものだ。そのためには、地球環境の保護、石油など限りある資源の節約が必要となる。
ゴルフ業界においても、CO2(二酸化炭素)の排出量の削減や環境保護を目指したさまざまな取り組みが行われている。特にゴルフ用品を扱う企業は、原料や製法をよりエコなものへ転換することを大きな目標としている。
三菱ケミカル株式会社(以下、三菱ケミカル)もそんな企業のひとつだ。シャフトを素材から開発できる世界で唯一のメーカーとして「TENSEI™」、「DIAMANA™」、「VANQUISH™」といったブランドを展開し、その高精度かつ革新的な性能を持ったシャフトが世界中のゴルファーから支持されている。
そんな三菱ケミカルが企業理念として掲げているのは「革新的なソリューションで、人、社会、そして地球の心地よさが続いていくKAITEKIの実現」だ。さまざまな化学事業を営む企業として、「カーボンニュートラル(温室効果ガスの排出をゼロにする)」や「サーキュラーエコノミー(循環経済)」という課題に真摯に対応している。
そういった取り組みの中でも、三菱ケミカルが重要視して進めている事業が化学産業の「グリーン化」だ。
シャフトを例に取ってみよう。シャフトには「プリプレグ」という炭素繊維とエポキシ樹脂を組み合わせてシート状にした素材が使用されている。あまり知られていないが、炭素繊維やエポキシ樹脂のそもそもの原料となるのは主に「石油資源」。この原料を植物由来のものに転換していくことが、三菱ケミカルの掲げる「グリーン化」というわけだ。
■2024年に最大25%の樹脂成分をバイオマス化に成功した「バイオプレグ」をリリース
そんな三菱ケミカルの「グリーン化」に向けた取り組みによって生まれた製品のひとつが、2024年3月にリリースされた「BiOpreg # 400シリーズ」だ。
シャフトの素材となる「プリプレグ」が炭素繊維とエポキシ樹脂の組み合わせで作られる話は前述したが、このうち、エポキシ樹脂の原料の最大25%を植物由来のものに置き換えているという。
三菱ケミカルで素材開発を手がける田口真仁氏は、世界的に見ても例のない「プリプレグ」だと話す。
「原料を植物由来のものにしたいという風潮があっても、技術的な難しさがありました。従来のものに比べて、植物由来の樹脂は扱いが難しく、『プリプレグ』の性能がどうしても落ちてしまうのです。製品として販売するには量産性の確保も課題でした。しかし、三菱ケミカルでは従来の『プリプレグ』と遜色ない性能を持った植物由来の原料を添加した『BiOpreg # 400シリーズ』を完成させることができました」
「プリプレグ」の開発では、炭素繊維とエポキシ樹脂の種類や配合を変えることで、弾性や強度、剛性など、細かく特性を変化させることができる。裏を返すと、それだけ繊細なもので、原料の25%を従来と全く違う植物由来のものに置き換えるのは、想像以上の困難が伴う。三菱ケミカルは、原料の組み合わせによってどんな特性が生まれるのか、長年の研究で蓄積してきた独自のノウハウを持っており、それによって革新的な「BiOpreg # 400シリーズ」を生み出すことができたのだ。
三菱ケミカルのプロダクトマネジメントを担当する鴋沢浩平氏は、今後の展望について以下のように語る。
「これまでの素材と同じように扱えて、よりエコな素材が使えることが『BiOpreg #400シリーズ』のメリットです。ゴルフシャフトだけでなく、自動車や飛行機など、さまざまな分野で活用してもらえるようにしたいですね。今後もさらなる『グリーン化』を目指して、より良い素材の開発を進めていきます」
原料の「グリーン化」が進めば、石油資源を守ることにつながるし、植物は生育段階で空気中のCO2を吸収して減らしてくれる。そして、植物由来の原料が広く普及すれば、それだけ効果も大きくなり、持続可能な社会の実現がより近付いてくるわけだ。ゴルフ界にとどまらない三菱ケミカルの「SDGs」な取り組みには今後も注目していきたい。
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