【堂本光一 コンマ一秒の恍惚Web】フェラーリがシーズン前半戦で勝つところを見たかった!
ハンガリーGPの予選でポールポジションを獲得したルクレールは4位に終わる。ハミルトンとの強力なコンビで2025年シーズンに臨んだフェラーリだったが、前半戦は未勝利に終わった
前半戦最後のレースとなったハンガリーGPはフェラーリのシャルル・ルクレールがレース中盤までリードするが、マシントラブルで失速。
マクラーレンのランド・ノリスとオスカー・ピアストリが、今シーズンのチャンピオン争いを象徴するかのような激しいバトルを演じる。最終的にはノリスが今季5勝目を挙げ、2位にはピアストリが入り、マクラーレンが4戦連続でワンツー・フィニッシュを決めた。
角田裕毅(つのだ・ゆうき)選手は、予選でチームメイトのマックス・フェルスタッペンに迫る速さを見せたが、決勝ではペースがなく17位に終わった。
F1は次戦のオランダGP(決勝8月31日)まで夏休みに入ったが、「前向きな姿勢を失わずに強くなって戻ってきたい」と語っていた角田選手。後半戦はどんなパフォーマンスを見せてくれるのだろうか。
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■前半戦を象徴するマクラーレンによる優勝争い前半戦を締めくくるハンガリーGPは上位勢のタイヤ戦略が分かれ、興味深いレース展開になりました。スタートで出遅れたノリス選手はワン・ストップ作戦を決断し、ツー・ストップ作戦を採っていたチームメイトのピアストリ選手を打ち破り、シーズン5勝目を挙げました。
ハンガリーGPの舞台となったハンガロリンクはコース幅が狭く、長いストレート区間がないので、オーバーテイクしづらいサーキットです。そのため、ピットインの回数を減らすことでポジションを上げ、そのまま順位を守り切るという作戦がうまくいくケースがしばしばあります。
ノリス選手はレースの状況を的確に読み、戦略をうまく決めて勝利をつかみ取ったということだと思いますが、それでもレース終盤、ピアストリ選手がノリス選手の背後まで追いつき、両者によるスリリングなバトルがチェッカーフラッグまで続きました。まさに前半戦を象徴するレースだったと思います。
マクラーレンの2台は、3位に入ったメルセデスのジョージ・ラッセル選手以下に20秒以上の大差をつけて異次元の速さを見せました。そういう意味でも今年を象徴するレースだったと思います。
ただ予選の一発のタイムに関しては、フェラーリも希望を持てるところがありました。シャルル・ルクレール選手がマクラーレンの2台を上回るタイムを叩き出し、今季初のポールポジションを獲得したからです。
■フェラーリが不可解なトラブルで勝利を逃がすレース序盤のルクレール選手のペースは安定して速かった。最初のタイヤ交換を終えるまではピアストリ選手を抑え、トップを快走します。
フェラーリは今シーズン未勝利ですが、ハンガリーでは勝てるかも......と期待しながらレースに注目していたのですが、中盤に入ると急にペースダウン。ピアストリ選手やラッセル選手に追い抜かれ、4位に終わります。
チーム側はマシンにダメージがあったと発表していますが、何が原因か明らかにしていません。はっきりと言えない部分があるのかもしれませんが、結果、フェラーリはノリス選手のワン・ストップ作戦にまんまとやられて、マクラーレンに勝利を奪われてしまった。コンストラクターズランキング2位で前半戦を終えましたが、1勝もできなかったのは残念でしたね。
ハンガロリンクでは今年からフェラーリに加入したルイス・ハミルトン選手の苦戦も目立ちました。ハンガリーGPの予選で12番手に終わったハミルトン選手は「俺は役立たず。フェラーリはドライバーを変えたほうがいい......」と、ファンが心配になるようなコメントを残していました。
キャリア19年目のシーズンを迎えたハミルトン選手ですが、まだフェラーリのマシンに適応できていません。それだけ現代のF1マシンはセンシティブなんだと思います。ハミルトン選手と同様にレッドブルに新加入した角田裕毅(つのだ・ゆうき)選手も同様に苦しんでいます。
一方で、ハミルトン選手とコンビを組むルクレール選手はフェラーリで7年目、角田選手のチームメイトのフェルスタッペン選手はレッドブルで10年目のシーズンをそれぞれ迎え、マシンの特性を熟知しています。だから新加入のふたりよりも、安定したパフォーマンスを発揮できているのだと思います。
それでもベテランのハミルトンはレース巧者で、予選で結果が悪くてもポイント圏内まで上がってきています。ハンガリーでは惜しくもポイントには届きませんでしたが、さすがだと思います。角田選手もそういう走りができればいいのですが、ハンガリーのレッドブルは本当に厳しかった。
■レッドブルがレーシングブルズに負けたレッドブルのマシン特性を熟知しているフェルスタッペン選手ですら、ハンガリーでは満足に走ることができませんでした。前を走るレーシングブルズのリアム・ローソン選手を追い抜くことができず、フェルスタッペン選手は9位に終わります。
どのチームもマシンのアップデートで速くなっていますが、レッドブルだけがうまくいかず、相対的にポジションを落としているように見えます。
今のレッドブルは、ほかのマシンを追い抜けるだけのスピードが足りない。特に角田選手は中団グループの中で戦っていると、そこで身動きがとれなくなってしまい、なかなか集団から抜け出すことができません。
もともとレッドブルのDRS(ドラッグ・リダクション・システム)は効率がよく、ほかのチームよりも直線で最高速が伸びるはずだったのですが、そのアドバンテージも消えてしまった。
もしレッドブルとレーシングブルがマシンを交換してみたらどうなるんですかね? フェルスタッペン選手と角田選手がレーシングブルズのマシンに乗ったほうがいい成績を出す可能性は十分ありますよね。
中団グループでコンスタントにパフォーマンスを発揮するレーシングブルズの技術やアイデアをレッドブルのマシンに使えないのか?
そう記者に聞かれたレッドブルのローラン・メキース代表は「レッドブルとレーシングブルズのマシンは異なるルーツを持っているので、どちらかのマシンのアイデアを他方へ持ち込むことができない」と語っていましたが、「ええ、そうなの!?」って思いました。
F1では各チームが独自でオリジナルのマシンを開発しなければなりませんが、レーシングブルズのマシンにはレッドブルが前年に使用したサスペンションやギヤボックスなどのパーツが搭載されています。
ルーツが異なるというよりも同じルーツを持ったマシンだと思いますが、レッドブルのパーツやノウハウが投入されたレーシングブルズよりも遅いということは、それだけレッドブルのアップデートがうまくいっていないということの現れではないでしょうか。
■角田選手の調子は確実に上がっている!そして角田選手が苦戦しているのは、フェルスタッペン選手のように最新仕様のマシンで走れていないことが大きく影響していると思います。スポーツは結果がすべてですが、F1は道具を使う競技です。
レッドブルがエースのフェルスタッペン選手を優先するのはわかりますが、せめて同じ仕様のマシンを準備してほしい。角田選手にも競争力のあるマシンでレースしてもらわないと、チームとしてもコンストラクターズ選手権でポイントを積み重ねていけないと思います。
「夏休み明けにはフェルスタッペン選手と同じ最新仕様のマシンで、着実にポイントを獲れるようになってほしい」と角田選手について語る光一
それでも角田選手は夏休み前のベルギーGPとハンガリーGPの2連戦で確実にパフォーマンスを上げています。新フロアを装備したマシンで、ぶっつけ本番で挑んだベルギーGPの予選では7戦ぶりのQ3進出を果たし、7番グリッドを獲得。ハンガリーGPの予選のQ1ではフェルスタッペン選手は11番手、角田選手は16番手でしたが、ふたりのタイム差は0.163秒でした。
ここまでフェルスタッペン選手のタイムに迫ったチームメイトはほとんどいません。それを自信に変えて、夏休み明けには着実にポイントを獲れるようになってほしいです。
☆取材こぼれ話☆8月6日~7日、ハースF1チームが静岡県の富士スピードウェイで旧車を使ったプライベートテストを実施した。
テスト初日はトヨタのワークスドライバーとして世界耐久選手権(WEC)に参戦しながらハースのリザーブドライバーを務める平川亮選手、2日目は昨年の国内最高峰スーパーフォーミュラとスーパーGTでダブルチャンピオンに輝いた坪井翔選手がそれぞれステアリングを握った。
「シーズン前半戦のハースは、巧みな戦略で印象に残るレースを何度もしていました。今回の富士のテストではトヨタとともに日本人ドライバーをサプライズ的にドライブさせたり、テストの模様を一般のお客さんに見られるようにしたり、日本のF1を盛り上げてくれますよね。レース戦略と同様に、ハースを率いる小松(礼雄)さんはさすがです」
スタイリング/渡邊奈央(Creative GUILD) 衣装協力/AKM ヘア&メイク/大平真輝
構成/川原田 剛 撮影/樋口 涼(堂本氏) 写真/桜井淳雄
記事提供元:週プレNEWS
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