「@」という記号はどんなイメージ? 世界各国のおけるそのキャラクター性を市川紗椰が紹介!
変形した「@」に見えなくもないミャクミャク氏と
『週刊プレイボーイ』で連載中の「ライクの森」。人気モデルの市川紗椰(さや)が、自身の特殊なマニアライフを綴るコラムだ。今回は世界における「@」のキャラクターについて語る。
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@という記号には、どんなイメージがありますか? 「アットマーク」と聞くと、ほとんどの人はメールアドレスの中に突然現れる記号、くらいに思っているかもしれない。「クルンッ」と書くのは何げに楽しいんだろうけど、手書きで書く機会といえば、めんどくさい申込書を記入するときくらいだから、適当に書く人も多いはず。
便利だけど、なんだか無口で無愛想なイメージ。「どうしてそんなところにいるの?」と聞いても、「いや、そこにいろって言われたんで」とだけ答えてきそうな存在感だ。
けれど、世界に目を向けると、この@というマーク、ずいぶんとキャラが立っている。ドイツ在住の友人との会話をきっかけに、「@の君の名は?」を調べてみた。
例えばドイツでは、@は「Klammeraffe(クラマーアッフェ)」と呼ぶ。意味は、ぶら下がる猿。急に運動神経が良さそう。イタリアでは、カタツムリを意味する「Chiocciola(キオッチョラ)」。おしゃれだけど、メールが届くのが遅そう。台湾だと「小老鼠(シャオラシュー)」で、意味はちっちゃいネズミ。かわいいのか怖いのか、判断に迷う。
オランダ語では「Apenstaartje(アペンスターツイエ)」。猿のしっぽ。しっぽにフォーカスするあたり、渋い視点。同じくしっぽシリーズだと、フィンランドの「Kissanhanta(キッサンハンタ)」は、猫のしっぽという意味。@の中に猫の本体もいるような気がするけど......ドンマイ。ロシア語では「СоБаКа(サバーカ)」。意味は犬。なぜ犬なの。ボルゾイかな、めちゃくちゃ丸まってるのかな、と受け入れてみる。
さらに生き物だと、ハンガリーではイモムシを指す「Kukac(クーカッツ)」、ギリシャ語ではアヒルを指す「ΠαΠαΚΙ(パパキ)」。スウェーデン語の「Snabel-a(スーベナルオー)」に至っては、「象の鼻のa」という意味。よくわからないけど、絵本に出てきそう。
一方、ヘブライ語では、まさかの「Strudel(シュトゥルーデル)」。あのシナモンロールみたいな、渦巻きの焼き菓子の名前。甘くて香ばしいやつ。まさか記号が、こんなにおいしそうな名前で呼ばれているとは。決めた人と気が合いそう。
納得度はさておき、無機質なはずの記号だけど、呼び方には物語がある。そう思うと、日本語の「アットマーク」は、英語に準じたそのままの呼び名だけど、〝キャラ大国〟日本としてそれでいいのか? なんでも擬人化するのに、なぜ急になんの迷いもなく「at(~で)」と、記号の役割をそのまま名乗る、ストイックな自己紹介をしてるんだ。どこいった〝KAWAII〟。
あらためて@の名前をつけるとしたら、「くるりん」とか「渦丸(うずまる)」とか、どうかしら。誰かに「そのネーミング、昭和すぎ」と言われながらも、ひそかに気に入られることを願う。小動物感とアットを組み合わせて、「もふっと」とかも。なんならもっと強引に「アットいぬ」とかでもいいわ。世の中、犬を足したらだいたいなんでも良くなるので。
メールやSNSで毎日打つ「@」。次に使うときは、「ぶら下がる猿、発進!」とか、「カタツムリ、行け!」「インスタはもふっとマークで検索してね!」など、心で言ってみます。
●市川紗椰
1987年2月14日生まれ。米デトロイト育ち。父はアメリカ人、母は日本人。モデルとして活動するほか、テレビやラジオにも出演。著書『鉄道について話した。』が好評発売中。誰が「@」を作ったのかは、わからないらしい。公式Instagram【@sayaichikawa.official】
記事提供元:週プレNEWS
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