高橋彩華が“神様”の前で涙の3年ぶりV「最後まで自分の力を信じ抜けた」
<宮里藍 サントリーレディス 最終日◇15日◇六甲国際ゴルフ倶楽部(兵庫県)◇6558ヤード・パー72>
1メートルほど先のカップが、高橋彩華にとって途方もなく遠く、とんでもなく小さく見えた。最終18番。決めれば3年ぶりのツアー2勝目、外せばプレーオフのパーパットだった。覚悟を決めてアドレスに入り、真ん中から沈めた。1打差での逃げ切りV。あらゆる感情が交錯し、すぐに涙腺は決壊した。
「18番グリーンに上がったときに初めてボードを見て、1打リードしているのを知った。『2パットでいいんだ』と思った瞬間、めちゃくちゃ硬くなりました。パーパットがまったく入る気がしなかったです。“神様、お願いします”という感じ。ラインは真っすぐ。ホント、神頼みでした」
もし、“神様”がいるとしたら、今週の高橋にとっては、あの人しかいない。アマチュアとして最後に出場した2017年の「サントリーレディス」。予選ラウンドの2日間は、この年を最後に現役引退した宮里藍と同組だった。宮里にとっては、国内ラストゲーム。平日にもかかわらず初日は6735人、2日目は9405人のギャラリーが訪れ、その視線はほとんど宮里に注がれていた。
「あのときは『これから頑張ってね』と声をかけていただいた。きょう藍さんに(チャンピオン)ジャケットをかけてもらえて、本当にプロになって良かったと思います。藍さんみたいになりたいと思ってゴルフを始めた。藍さんは神様みたいな存在です」
1998年度生まれの黄金世代の多くは、幼少期にテレビなどで見た宮里のプレーに憧れ、ゴルフを始めた。高橋も藍チルドレンの一人。“神様”が見守るグリーンで決めた優勝は、ドラマチックで不思議な縁を感じてしまう。
プロ5年目の22年「フジサンケイレディス」で念願の初優勝を飾ったのは、デビューから125試合目。そして、そこから2勝目までに110試合を要した。
「2勝目も長かったです。1勝目よりも2勝目のほうが難しいというし、もう勝てないのかな、という気持ちもあった。今年も勝てなかった、また今年も勝てなかった…と、だんだん自信がなくなっていきました」
なかなか結果が出なかったのは、黄金世代全体にも通じる状況だった。前週までの今季12戦は、下の世代が9勝、30歳以上が3勝。下から突き上げられ、上の世代からは“逆襲”に遭っていた。高橋の優勝は黄金世代がツアーに本格参戦するようになった18年以降、もっとも遅い13試合目でのシーズン初V。“連敗”を止めた26歳は「みんなで頑張ろうという気持ちがある」と黄金世代通算51勝目を喜んだ。
優勝の資格で熱望していた「AIG女子オープン」(全英)の出場権も手に入れた。「きょう勝てたのは、自分の力を最後まで信じ抜けたからだと思います」。
もう勝てないんじゃないかー。そんな弱気の虫も封じ込めた。神様の前で勝ち、神様に祝福され、全英切符を手にした。さらに、コーチでもある父・剛さんに贈る父の日Vも達成。幸せな時間を独占した高橋が黄金世代をけん引し、ツアーを盛り上げていく。(臼杵孝志)
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