レトロゲーム互換機は買う意味がある?本体ではない機種のメリット【セガサターン・PS1】
1980年代から1990年代にかけて発売されたファミリーコンピュータ、スーパーファミコン、メガドライブ、PCエンジン、そして初代PlayStation、セガサターンといった名機は2025年現在も愛され続けています。
一方で製造終了から数十年が経過したこれらのゲーム機は、中古市場でも良好な状態のものを見つけることが困難になりつつあるのも事実です。そこでレトロゲームを愛する人々の間で、新たな購入対象になりつつあるのが「互換機」です。
もっともPS1やセガサターンの実機は「入手困難になりつつあるものの、購入できないほどではない」のも事実です。ではわざわざ本体ではなく、互換機を買う意味はどこにあるのでしょうか。具体的に見ていきましょう。

レトロゲーム互換機とは?
レトロゲーム互換機とは、オリジナルのゲーム機で動作するソフトウェアを、異なるハードウェア上で実行可能にする機種のことです。そして互換機の動作原理は、大きく分けて二つのアプローチに分類されます。

一つ目は、ソフトウェアエミュレーションを用いる方式です。たとえば互換機そのもののOSにはAndroidやLinuxなどを採用し、コンピュータ上でエミュレータソフトウェアを動作させ、オリジナルのゲーム機のハードウェアをソフトウェア的に再現するものです。汎用性が高い反面で、エミュレータの性能にもよりますが、たとえばアクションゲームやレースゲームなどでは本体でのプレイ時よりも若干の遅延が気になりやすい場合も。
二つ目は、FPGA(Field Programmable Gate Array)を用いたハードウェアレベルでの再現です。オリジナルのゲーム機のハードウェア構成を、集積回路レベルで忠実に再現することで、オリジナルハードウェアに近しい動作が実現されます。
なお両者にはそれぞれメリットとデメリットがあり、もちろんどちらか一方が劣っているわけではありません。
たとえばソフトウェアエミュレーション型の代表的な互換機としては『ポリメガ』が挙げられます。ポリメガは出荷遅延トラブルなど製造上での問題が多数指摘されたものの、ハードウェアとしての完成度は極めて高く、互換機の代表的な存在です。そしてFPGA型の互換機も、少しずつ市場に増え始めています。
代表的なレトロゲーム互換機の例
互換機はHDMI出力による高解像度表示、セーブステート機能、スクリーンショット機能、画質調整機能など、オリジナルのゲーム機では実現できなかった便利な機能が数多く搭載されるケースも増えており、単なる中古本体とは異なる市場を作り始めています。

代表的なレトロゲーム互換機には先にも述べた『ポリメガ』や『SuperStation One』などが挙げられます。これらの互換機はHDMI出力に対応しており、現代のテレビやモニターに簡単に接続できます。また互換機には、オリジナルのゲーム機にはない便利な機能が多数搭載されているほか、オリジナルのゲームカートリッジやディスクの物理的な摩耗を減らし、保存状態を良好に保つことができます。
具体的に、各機種の主な特徴の例を見ていきましょう。
【エミュレーション】ポリメガ

ポリメガは、CD-ROMゲームに対応したレトロゲーム互換機として注目を集めている製品です。初代PlayStation、セガサターン、メガCDなどCD-ROMメディアを使用するゲーム機に高品質なエミュレーションによって対応していることが最大の特徴です。CD-ROMゲーム機は、カートリッジ式のゲーム機と比較して互換機の開発が困難とされており、ポリメガはこの分野における先駆的な製品と言えます。
ポリメガの最も革新的な機能の一つが、ゲームライブラリの一元管理システム。手持ちのソフトをインストールすると、「コレクション」の欄にジャケット画像付きで表示されます。オリジナルのCD-ROMドライブでは、経年劣化により読み込み速度が低下したり、読み込みエラーが発生したりすることがありますが、ポリメガにインストールしたゲームは安定した高速読み込みが可能です。
【FPGA】SuperStation One

SuperStation OneはFPGA技術を採用した次世代のレトロゲーム互換機。2025年1月に発売が開始され、第4四半期に発送予定となっています。
初代PlayStation専用としてFPGA技術を基に設計されているSuperStation Oneは、PSコントローラーやメモリーカードとの完全な互換性を持っています。HDMIやVGAといった複数のビデオ出力オプションに対応しており、現代のディスプレイ環境に最適化されているため、プレイしたい対象が「PS1」ならば最も快適にタイトルを遊べる選択肢として定着するでしょう。
なお、SuperStation OneはオープンソースのMiSTerプロジェクトとの互換性を確保した設計も注目されており、将来的に他のゲーム機のコアを導入することも可能であると見られます。つまりSuperStation Oneは単なる初代PlayStation互換機を超えて、多機種対応の高精度互換機としても定着する可能性があります。
中古本体との比較におけるレトロゲーム互換機のメリット
レトロゲームを遊ぶ方法として、中古の純正本体を購入するという選択肢もあります。しかし、互換機には純正本体にはない多くのメリットがあります。
現代のディスプレイ環境への完全対応

2025年現在、一般的なテレビやモニターはすでにHDMI端子が標準となっており、従来のアナログ映像入力端子は搭載されていないことが多いです。しかしレトロゲーム機の多くは、コンポジット端子(黄・白・赤の3色ケーブル)やS端子での出力が主流であり、これらを現代のディスプレイに直接接続することはできません。
この問題を解決するために、従来は変換機器やアップスケーラーを使用する必要がありましたが、これらの機器は品質にばらつきがあり、安価な製品では映像の遅延や画質の劣化が発生することもしばしばです。
互換機では、HDMI出力が標準装備されており、現代のディスプレイに直接接続できます。またアップコンバート機能や画質調整機能が搭載されている互換機も多く、より美しい映像でゲームを楽しめます。
多様な機種に一台で対応できる

従来のアプローチでレトロゲームを楽しもうとすると、ファミコン、スーパーファミコン、メガドライブ、PCエンジン、PlayStation、セガサターンなど、それぞれの実機を個別に購入し、設置する必要がありました。
これらの機種は一つひとつの本体が大きく、テレビやモニターとの接続ではケーブルの本数も多く要求されます。同様にコントローラーも多数必要です。
互換機を利用することで電源やHDMIケーブルも1本ずつで済むため、配線がシンプルになります。コントローラーについても、多くの互換機では汎用的なUSBコントローラーや現代的なワイヤレスコントローラーに対応しており、複数の専用コントローラーを用意する必要がなくなります。
ゲームソフトのディスクやカセットの保存
レトロゲームのカートリッジは、経年劣化によりさまざまな問題が発生します。最も一般的な問題は、セーブデータを保持するためのバックアップ電池の消耗です。多くのレトロゲームカートリッジには、セーブデータを保持するためのボタン電池が内蔵されていますが、これらの電池は製造から数十年が経過した現在、ほとんどが消耗しています。電池交換も可能ですが、専門的な技術と工具が必要であり、作業中にカートリッジを破損するリスクもあります。
そこで互換機のインストール機能を使用することで、これらの問題を根本的に解決できます。カートリッジからゲームデータを本体にインストールすることで、以降はカートリッジを使用せずにゲームをプレイできるようになります。
レトロゲーム互換機を購入する際の注意点
レトロゲーム互換機は便利な反面、購入時に注意すべきポイントも存在します。
価格
高性能な互換機は中古のオリジナル機よりも高価な場合があります。そのため遊びたい対象のレトロゲームがSteamなど他プラットフォーム向けに復刻され、すでに配信されている場合、そのソフトだけをWindows PCなどで遊んだほうが安上がりなこともあります。
「レトロゲームを継続的に、なおかつ大量に遊びたい」場合にレトロゲーム互換機はその価値が際立つ対象だと言えるでしょう。
互換性
先にも述べた通り、互換機にはエミュレーションを基にしたものと、ハードウェアの完全再現を目指すものがあります。そして前者の場合、レースゲームやアクションゲーム、シューティングゲームなどでは操作の遅延が気になる場合があります。一瞬の遅延や操作ミスが勝敗に直結するタイプのゲームを遊ぶ場合には、エミュレータは必ずしも向きません。
完全な互換性を求める場合は後者のタイプの互換機を購入するか、初めから中古本体を買うのが良いでしょう。
オリジナルのカートリッジやCD-ROMを利用できるか?
エミュレータ機を使用する場合、ROMデータの取得方法によっては法的な問題が生じる可能性があります。必ず「オリジナルのカートリッジやCD-ROMを使える互換機」を選ぶか、自己責任を前提としたうえで「まず手元のパソコンでROMデータを取得したうえで、そのデータを使って遊べる互換機」を入手しましょう。
※サムネイル画像は(Image:Matthieu Tuffet / Shutterstock.com)
記事提供元:スマホライフPLUS
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