【サッカー日本代表 板倉 滉の「やるよ、俺は!」】第38回 祖父母からのあふれる愛が、 大きな原動力に!
得点にかける板倉の思い
ボルシアMGや日本代表でほぼ休みなく先発出場を果たし、守備の要を担ってきた板倉も、W杯アジア最終予選の6月シリーズを終えれば、ようやくオフへ。帰国するたび欠かさないのが愛する祖父母に会うこと。今まで明かしたことのない家族愛について語る。
■オフシーズン、地元で必ずやることボルシアMGでのシーズンが終わった。上位には食い込めなかったが、ケガなく終えることができた。日本代表ではW杯に向けた試合が続いていくものの、ひとまずオフを迎えられてほっとしている。
長いオフが取れて日本に帰ってきたら、ほぼ毎回欠かさないことがある。母方の祖父母の墓参りと、父方の祖父母の家に行くことだ。どちらも僕の実家からは近く、走れば5分で着く距離だ。
母方の祖父母は僕が生まれた頃、全身黒い毛の柴犬を飼い始めた。僕はそのコに会うのが楽しみで、遊びに行っては犬の散歩に出かけた。じいちゃんが一緒についてきてくれることもけっこうあった。僕の動物好きはこの時代が始まりかもしれない。
じいちゃん、ばあちゃんは超がつくほど優しかった。僕が小学3年生のときに川崎フロンターレ アカデミーのジュニア(U-12)に合格してからは、学校帰りにアカデミーへ直接向かうようになったので、体の前にアカデミー用のリュックサック、背中にはランドセルを背負っていて、毎日荷物が多かった。
最寄りの駅まで行くと、そこにはじいちゃんが待っていて、ばあちゃんが作ってくれた弁当を渡してくれた。ついでにじいちゃんは買ってきたパンもくれて、僕はそれを食べながら、じいちゃんとしばらく会話した後、練習場に向かうのがおなじみだった。
改札で見送ってくれるじいちゃん、ばあちゃんが作ってくれた弁当の味、アカデミーでの試合をふたり並んで見ている光景は今も忘れられない。
■じいちゃんの広報活動!?父方の祖父母は共に80代半ば。とても元気だ。特にじいちゃんの動きはかなり積極的。地元の商店街を練り歩いて、スポーツショップを見つけると、特に用事もないのに中に入って、店内で流れているテレビに目を向けつつ「サッカーに変えてくれるか?」と店員さんにリクエスト。
しかも、畳みかけるようにして、「板倉 滉を知ってる? 俺の孫なんだよ」と、触れ回っているらしい(笑)。スポーツショップのみならず、近所の皆さんには僕のことを相当話しているらしく、僕がじいちゃんの家に行くと、すかさず「おい、滉、行くぞ」と、地元の挨拶回りをするのが恒例行事となっている。
ありがたいことに、じいちゃんと仲の良い近所のおじさんは、玄関先に僕のサイン入りユニフォームと写真を飾ってくれて、週プレの連載記事が出るたび、じいちゃんに最新号を渡してくれている。
とにかく、僕が顔を見せると、じいちゃんはめちゃめちゃ喜んでくれる。昔から焼酎が好きなので、前回、オフで日本に帰ったときには焼酎を差し入れして、初めて一緒に飲んだ。
それと、僕がプレゼントしたナイキの派手な色のスニーカーもずっと履いてくれている。「俺は足幅が広いんだよ、だからこれは助かる」と言いながら、足のサイズ自体はブカブカなのだが、うれしそうに履き続けている。
ばあちゃんもやたらと世話を焼いてくれる。僕が行くたびに「あれ食べろ、これ食べろ」と、テーブルの上にずらっと食事を並べてくれる。
最近、忘れっぽくなっていることもあって、アイスクリームをわずか10分の間に5、6個出してくるのだが、それはそれでうれしい(食べきれないけども)。
ただ、この前訪ねたとき、顔じゅう傷だらけで、目の周りにはアオタンができていたのにはびっくりしてしまった。「ばあちゃん、どうした?」と聞いたところ、前かがみの体勢で草むしりをしていたところ、そのまま前に転んでしまったそうだ。くれぐれも無理はしないでほしいと願うばかりだ。
ばあちゃんには「滉はもう外国人になっちゃったのかい?」と聞かれることもしばしば。「外国人にはなってないよ(笑)」と返すのだが、会うのは半年に1回だけで、遠い所に行ってしまったという認識なのだろう。
なので、ふたりにはドイツに試合を見に来ないかと誘ったこともある。でも、じいちゃんは「飛行機がダメなんだ。移動時間も長いだろ?」と。その代わり、僕が出た試合や出演した番組などはすべてチェックしてくれているという。
いつだって板倉 滉びいきだ。僕が欠場してチームが負けたりすると、「滉が出てないから、負けたんだ」と評することも(笑)。ある意味、じいちゃんは世界一のサポーターだ。
ふたりになかなか会いに行くことができないのは申し訳ないけれども、国内での試合があれば、いいところを見せたいという大きなモチベーションにつながっている。これからも国内で代表戦は行なわれていく。頑張っている姿を見せて、少しでも元気づけられたらいいなと思う。
板倉 滉
構成・文/高橋史門 写真/アフロ
記事提供元:週プレNEWS
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