『キン肉マン』大好き作家・燃え殻×爪切男の先月の肉トーク!! vol.45【コミックス派はネタバレ要注意!】
『キン肉マン』大好き作家・燃え殻さんと爪切男さんが4月の連載を激論!
『ボクたちはみんな大人になれなかった』の燃え殻、『死にたい夜にかぎって』の爪切男の意外な共通点、それは『キン肉マン』!!
希代のストーリーテラーのふたりが4月分の『キン肉マン』連載を甘く、そして辛く批評。
―今回の「先月の肉トーク」テーマ―第487話 ロボ超人たちのキボウ!?の巻(4月7日更新分)
第488話 超電磁力操者(マグネット・パワー・ルーラー)の真髄!!の巻(4月14日更新分)
第489話 マグネット・パワーVS1億パワー!!の巻(4月21日更新分)
第490話 大発令! 落雷警報!!の巻(4月28日更新分)
<あらすじ>
ソ連のパトムスキー・クレーターのウォーズマンvs時間超人五大刻(ごたいこく)・ぺシミマン。"ロボ超人"同士の闘いは、お互い"トモダチ"としてリスペクトを感じながら、ぺシミマンの勝利となった。次なる闘いは、レバノン・バールベックのネプチューンマンとパピヨンマン戦となった。
燃え殻(以下、燃) 前回も触れたけど、ペシミマンがウォーズマンを破った第487話。結局、一方的に押し切って、そのまま勝っちゃった感じだったね、完勝だった。
爪切男(以下、爪) エクストリームバトルモードになったウォーズマンの攻撃を受け止めて受け止めて、力をすべて出させた上で勝った。ただ、試合には負けたぺシミマンだけど、心に刺さるものがちょっとだけあった感じはしますね。
燃 試合後の一人語りは、そういうことだよね。「笑える未来...か。もしもこの先そんなものが理解できる日が来たなら、オレは今日を思い出し心でお前に詫びるだろう」と言ってるし。
爪 で、「だがそんな日は永遠に来ない。オレに祝福を与えられるものなどどこにもいないのさ」と。
燃 うん。ゆでたまご先生の視点で言うと、新しいキャラクターが定まるまで、先生の中でいろいろあるんだな、というのが、読んでいるとわかるじゃない?
爪 ああ、話が進んでいくうちに、どういうキャラクターなのかが、だんだん固まっていく。
前回のポーラマン戦でも試合後に理解を得られそうな空気が出るも、完璧無量大数軍の掟を譲らぬネメシスに介錯された(JC45巻)
燃 ペシミマンも、先生の中で、最初からこういうキャラクターだったわけではないんじゃないかな。
嶋田先生が原作を書いて、中井先生が絵を描いて、また続きを書いて......と進めていくうちに、だんだんペシミマンに対しての感情が入っていって、キャラクターとして重くなっていった。
爪 重いというか、重要になっていった。
燃 そう。一戦を終えて、勝っても負けてもそのまま退場していく、もう物語に出てこない、っていうの、RIZINとかでもあるじゃない?
爪 ああ、ただただ強そうな外国人選手とかで。
燃 今回はその逆で、たとえ圧勝でも、観ているこっちの気持ちが乗っかるような闘いじゃないと、続きはない、という。ペシミマンは、描いていて両先生の気持ちが乗っかってきたんだろうなと。
爪 ああ、わかる。画自体も、常連の超人感が出てきましたよね。
燃 描いている途中で、このキャラクターを今後も出したい、っていう風に、先生がノッてきたんだろうなと思って。
最後の一人語りも、次にペシミマンが登場した時に回収したい、っていうことなんじゃないかな。
爪 プロレスでも、マッチメイカーは単発のつもりで組んだカードだったけど、闘いを観ているうちに「この続きを観せたい!」というので、二戦目以降も組まれていくこと、ありますもんね。
燃 そうそう。この間「RIZIN 男祭り」(5月4日開催)の、ヒロヤ選手と篠塚辰樹選手の試合を観たんだけど。
爪 ああ、観ました観ました。ふたりがいがみ合って、トラッシュトークを続けた上で、試合をやったら......。
燃 ヒロヤ選手が圧勝して、篠塚選手が泣きながら帰る。それがめちゃよくて! ふたりともこの先が観たくなるんだよね。
爪 うん。このふたりの再戦だけに限らずね。
燃 そう。物語の神である先生が、ペシミマンとウォーズマン両方のこの先をさらに描きたかったから、こういうエンディングにした。
爪 僕ら、『キン肉マン』は数年がかりで連載を終えるための方向に向かっている、っていつも言ってますけど。また描かなきゃいけないものが増えましたね(笑)。
バッファローマンの修行など読者の皆さんをお待たせしているイベントがいろいろ!(JC85巻)
燃 物語を畳まなきゃいけないのに、これから常連になる超人が、今、出てくるのか!という。それくらい、いい試合だったよね。
爪 僕らも小説を書いていて、プロットの段階では全然魅力的じゃなかったキャラが、実際に書き始めてみると「あ、コイツいいな、好きだな」ってなっていくこと、ありますもんね。
●マスク狩りはどちらのもの!?燃 そして第487話では、カメラが切り替わって、それぞれ闘いながらモニター越しに会話をするキン肉マン&キン肉マングレート(マッスル・ブラザーズⅢ)と、テリーマンのシーンになる。「お前の気持ちはミーが一番よーくわかる! キン肉マンのサポートをミーの代わりに頼んだぜーっ!」と、テリーマンがグレートにメッセージを送って。
爪 マスクマンが2、3代目と続いていくのって、タイガーマスク以来ですよね。
燃 ああ、そうだね。少なくとも『キン肉マン』の中では、なかった。
爪 タイガーマスク、初代は佐山サトルで二代目は三沢光晴、三代目は金本浩二だったから、テリーが三沢で今のグレートが金本。なるほど、確かに、気持ちがわかるだろうな(笑)。
燃 そのシーンを経て、ネプチューンマンとパピヨンマンの試合に移ったけど。ペシミマンとウォーズマンの試合とは攻守が逆で、ネプチューンマンがパピヨンマンを攻撃し続ける展開だね、488~490話までずっと。
爪 前回も話したけど、この試合はマスク狩りがあるんじゃないかと思っていて。
燃 そうだったね。パピヨンマンがマスクマンだと判明しているから。前に爪さんも言ってたけど、パピヨンマンは鱗粉で分身を作れるから、この先クロス・ボンバーができるじゃない? そこに対してネプチューンマンがどうアンサーするのかが、この先の展開の楽しみなところだよね。
爪 487~490話、4月分の連載って4回とも全部、最後の1ページが、ネプチューンマンが技を決めて終わっているんですよね。しかも、それぞれ喧嘩(クォーラル)ボンバー、喧嘩スペシャル、サンダー・サーベル、ダブルレッグ・スープレックス......。
燃 ネプチューンマンで僕が知ってるのは出切った?
爪 そうなんですよ。シングルマッチの技はもう全部出た。最後の1ページ以外で出した技も含めて。
燃 残っているのはもう、タッグじゃなきゃ不可能なクロス・ボンバーだけ。前回僕らが予言した、逆にネプチューンマンが初めてマスクを狩られる、っていう結末に近づいているのかも。
爪 確かに、ネプチューンマンのマスク、だんだん傷がついたり割れ目ができたりしているから、狩られる前フリはできてるんですよね。
燃 パピヨンマンのほうは、マスクが剥(は)がれて、その正体は......っていう物語性、ないじゃない? でも、ネプチューンマンは『ジャンプ』時代から語られてきたものがあるから、そのほうが物語性もあるよね。
マスクマンという衝撃。左側頭部を流れる汗は何を語っていたのか......(1月20日更新478話)
爪 そうですよね。パピヨンマンが連勝する、という流れになるのはおもしろい。それこそ、"超回復"を使えばいいのに。
燃 時間超人だけが使える"超回復"、ここしばらく誰も使ってないね。
爪 使いどころじゃないかな、パピヨンマン。もうそれくらいネプチューンマンがすべての技を使ってダメージを与えているわけだし。
燃 うん。そう考えていくと、もう、それしかないような気になってきた(笑)。
●週プレ単体で連載500話近づく爪 そういえば、4月27日更新の回で第490話だから、あと10回で『週刊プレイボーイ』に移籍してから連載500回なんですね。
燃 じゃあ、『ジャンプ』を合わせると、とんでもない回数になるんだね。すごいなあ。単行本ももうすぐ90巻だしね。
爪 燃え殻さんの『週刊新潮』の連載(「それでも日々はつづくから」)、今、何話ぐらいですか?
燃 え? 今、210話ぐらいかな。
爪 200超えてるんだ? すごいなあ。よく書くことあるなあ、そんなに。
燃 ないです!(笑)。2年ぐらい前からない。
爪 でもゆでたまご先生は、描くことがないどころか、むしろ増えている。
燃 ほんとに! ペシミマンのフィギュア出るよ、これは(笑)。
爪 描いているうちに新しい超人のキャラが立っていく、だから続きを描かなきゃいけなくなる。
次にキャラ立ちする五大刻は誰だろうか(JC85)
燃 素晴らしいことだけどね、そんなことが起きるのは。キャラが物語を作ってしまうという。
爪 だから、言い方が悪いですけど、行き当たりばったりで描いているのがすごいし、正解なんでしょうね。
燃 そうだね。全部決め込んだ上で描いていたら、こんなことは起きないよね。
爪 『ベルセルク』の三浦建太郎先生は、30年前に物語の最終回までを決めていましたよね。
燃 あ、それを親友の森恒二先生に伝えていたから、三浦先生が急逝した後、森先生とアシスタントたちが引き継いで続きを描いたという。
爪 そう。どう考えても、『キン肉マン』はそれ、できないだろうから。
燃 そうだよね。仮に先生が最後まで決めていたとしても、描いていくうちに思いついちゃう、読者の予想を超えていくぶっとんだアイデアがなければ、『キン肉マン』ではなくなってしまうと思うし。
爪 ほんとに。つくづく、健康に気をつけていただきたいです!
●燃え殻(MOEGARA)
1973年生まれ、神奈川県出身。働きながら始めたツイッターでの発言に注目が集まり、作家デビュー。『ボクたちはみんな大人になれなかった』(新潮社)、『すべて忘れてしまうから』(扶桑社)、エッセイ集『それでも日々は続くから』(新潮社、1月29日文庫版発売)『これはただの夏』(新潮社、文庫版発売中)、『ブルー ハワイ』(新潮社)『明けないで夜』(マガジンハウス)など多数の著作がある。最新著は『この味もまたいつか恋しくなる』(主婦と生活社)。『GetNavi web』にてコラム「もの語りをはじめよう」を連載中。出演中のラジオ番組 『BEFORE DAWN』(J-WAVE、毎週火曜26:00~27:00)もチェック
●爪切男(TSUMEKIRIO)
1979年生まれ、香川県出身。2018年『死にたい夜にかぎって』(扶桑社)で小説家デビュー。2020年、同作が賀来賢人主演でドラマ化。『きょうも延長ナリ』(扶桑社)が発売中。最新著は、集英社発のWebサイト『よみタイ』で好評を博した、美容と健康にまつわるエッセイ『午前三時の化粧水』が好評発売中。ドライバーWebで『横顔を眺めながら ~爪 切男の助手席ドライブ漂流~』を連載中。主演:木村昴でのドラマ放送でも話題となった『クラスメイトの女子、全員好きでした』が文庫化
取材・文/兵庫慎司 撮影/鈴木大喜 ©ゆでたまご/集英社
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